第030話: 砂漠に降る雨
僕たちが地下水路から地上に戻ると、街は騒然としていた。
枯れていたはずの噴水から、勢いよく水が吹き上がっていたからだ。
「水だ! 水が出たぞ!」
「奇跡だ……! 神様が我らをお救いくださったんだ!」
人々は歓喜し、噴水の周りで踊り狂っている。
その様子を物陰から見守りながら、僕たちは小さくガッツポーズをした。
「へへっ、やったな!」
「はい。これでこの街も救われますね」
ララとセリスが顔を見合わせて笑う。
一方、悪徳商人ガゼルの屋敷の方からは、怒号と悲鳴が聞こえてきた。
どうやら、水を独占する根拠を失ったことで、今まで抑圧されていた市民や他の商人たちが押し寄せているらしい。
まあ、自業自得だ。
「さて、騒ぎになる前にずらかるか」
「そうですね。また『神様』扱いされるのは御免です」
僕たちは人混みに紛れてキャンピングカーに戻り、エンジンを始動させた。
街を出ようとしたその時。
「待ってくれ!」
ララが大きな声で叫んだ。
彼女は車を降りると、街の方を振り返り、そして深々と頭を下げた。
「……あばよ、ササンドラ。元気でな」
それは、故郷への別れの言葉だったのかもしれない。
彼女はすぐに顔を上げ、満面の笑みで戻ってきた。
「よし! 行こうぜ、神様! 次はどんな面白いことが待ってるんだ?」
「だから神様じゃないってば。……まあいいか」
僕は苦笑しながらアクセルを踏み込んだ。
キャンピングカーが走り出す。
背後のササンドラの街には、まるで祝福するかのように、噴水の水しぶきが虹を描いていた。
「次は魔法都市だっけ? 楽しみだな」
「ええ。そこなら、私の呪いのことも分かるかもしれません」
セリスが期待に胸を膨らませる。
僕たちの旅はまだまだ続く。
砂漠を越え、次なる冒険の地へ。




