第029話: 熱砂の守護者
水路の最奥部。
そこは巨大なドーム状の空間になっていた。
天井には発光する苔が張り付き、薄暗い空間を照らしている。
そして、その中央に鎮座していたのは――。
「……デカいな」
岩と砂で構成された巨体。
全長 10 メートルはあろうかという、巨大な『サンド・ゴーレム』だった。
こいつが水源の制御弁の上に座り込んでいるせいで、水が堰き止められているようだ。
「グルルルゥ……」
ゴーレムがゆっくりと立ち上がり、低い唸り声を上げる。
ただの土塊ではない。その胸部には赤く輝く魔石が埋め込まれており、そこから強烈な魔力を放っている。
ララが感じ取った『土の臭い』と『魔力』の正体は、こいつだったのか。
「来るぞ! 構えろ!」
ルナが短剣を抜く。
次の瞬間、ゴーレムが巨大な腕を振り下ろした。
ドォォォン!!
地面が激しく揺れ、砂煙が舞う。
直撃すれば即死級の威力だ。
「ポチ、迎撃だ!」
「わふっ!」
ポチが前に飛び出し、空中で変形する。
背中のミサイルポッドが展開され、小型ミサイルが次々と発射された。
ドカカカカッ!
爆炎がゴーレムの表面を削るが、すぐに周囲の砂が集まって再生してしまう。
物理攻撃は相性が悪いか。
「ユウ様! あの魔石を狙ってください! あれが核です!」
「分かった! ……でも、動きが速くて狙いが定まらない!」
巨体に似合わず、ゴーレムの動きは俊敏だった。
腕を振り回し、僕たちを近づけさせない。
「神様! あいつ、右足が脆いぞ!」
その時、ララが叫んだ。
「右足の関節から、変な音がする! そこを攻めれば崩れるはずだ!」
「ナイスだ、ララ! ……ポチ、右足を狙え!」
ポチが指示に従い、ソニックキャノン(衝撃波)を右膝に集中させる。
見えない弾丸が炸裂し、ゴーレムの巨体がガクンと傾いた。
「今だ!」
僕はスマート・キーを構え、照準を胸の魔石に合わせた。
魔力を充填する。
最大出力、レーザー・カノン。
「貫けぇぇぇッ!!」
指輪から放たれた極太の光線が、砂塵を切り裂いて魔石を直撃した。
パリーン! という甲高い音が響き渡る。
「グオォォォ……」
断末魔と共に、ゴーレムの体が砂となって崩れ落ちていく。
後には、砕け散った魔石の欠片だけが残された。
「や、やったか……?」
「ああ、なんとかな」
僕が息をつくと同時に、ゴゴゴゴ……という地響きが聞こえてきた。
ゴーレムが退いたことで、塞がれていた制御弁が動き出したのだ。
ドバァァァッ!!
猛烈な勢いで水が噴き出し、干上がっていた水路を満たしていく。
清らかな水流が、ササンドラの街へと向かって流れ始めた。
「すげぇ……! 水だ! 本当の水だ!」
ララが尻尾を振って喜ぶ。
これで、街の水不足も解消されるはずだ。
「よし、戻ろう。みんなが待ってる」
僕たちは勝利の余韻に浸りながら、水路を後にした。




