第027話: 水を牛耳る者
「……なるほどな。状況は分かった」
宿屋の一室。
情報収集から戻ってきたルナが、不機嫌そうに報告を始めた。
「やっぱり、あのガゼルって商人が黒幕だ。あいつ、自分の屋敷の地下にある井戸以外の水源を、全て埋めちまったらしい」
「埋めた!? なんでそんなことを……」
セリスが絶句する。
ルナはため息をつきながら続けた。
「独占するためさ。街中の井戸を使えなくして、自分のところからしか水を買えないようにしたんだ。おかげで水の値段は跳ね上がってる」
「最低な奴だな」
僕は拳を握りしめた。
商売のやり方としては賢いのかもしれないが、人の命を何だと思っているんだ。
「しかも、あいつは私兵を雇って、勝手に井戸を掘ろうとする奴らを妨害してる。逆らう奴は見せしめに……」
「許せない……!」
ララが尻尾を逆立てて怒る。
彼女の部族も、この街との交易で生計を立てていたはずだ。
これでは商売どころではないだろう。
「で、どうする? ユウ。お前の力なら、ガゼルの屋敷に忍び込んで水を奪うこともできるが」
「いや、それは根本的な解決にならないよ」
僕は首を振った。
一時的に水を配ったところで、ガゼルがいる限りまた同じことが繰り返される。
必要なのは、ガゼルの支配を崩すことだ。
「……水源を復活させよう」
「水源?」
「ああ。ガゼルが埋めた井戸じゃなくて、もっと根本的な……この街の水脈そのものを復活させるんだ」
僕はララの方を向いた。
「ララ、君の『耳』なら、地下の水脈を探せるんじゃないか?」
「えっ? あ、ああ! 任せとけ! ララの耳は地獄の底の音だって聞き分けるぞ!」
ララが自信満々に胸を張る。
頼もしい限りだ。
「よし、作戦開始だ。……でも、どこを探せばいい? 闇雲に掘るわけにもいかないし」
「それなら、アテがあるぜ」
ルナがニヤリと笑った。
「酒場で古老に酒を奢って聞き出したんだがな。この街の地下には、昔使われていた『古代水路』が眠ってるらしい」
「古代水路?」
「ああ。今は入り口が埋もれちまってるが、そこならまだ水が流れてるかもしれねぇって話だ」
「それだ!」
僕は手を叩いた。
ガゼルも、まさか埋もれた古代遺跡までは監視していないだろう。
「ララ、その水路の入り口を探せるか?」
「任せとけ! 水の音さえすれば、どんなに深くても見つけ出してやる!」
僕たちは夜を待って行動を開始することにした。
この街に、再び水を取り戻すために。




