第026話: 交易都市ササンドラ
「見えてきたぞ! あれがササンドラだ!」
ララが指差す先、蜃気楼の向こうに巨大な城壁が現れた。
交易都市ササンドラ。
砂漠の交通の要衝であり、東西の物資が集まる商業の中心地……のはずだった。
「……なんか、静かすぎないか?」
街に近づくにつれて、違和感が大きくなる。
城門の前には長い行列ができているが、誰もが疲れ切った顔をして座り込んでいる。
活気ある呼び込みの声も聞こえない。
「とりあえず、中に入ってみよう」
僕は検問で通行料(と賄賂代わりの冷たい水)を払い、街の中へと入った。
そこで見た光景は、予想以上に酷いものだった。
「水……水をくれ……」
「金ならある! 頼む、一口だけでいいんだ!」
道端には渇きに苦しむ人々が溢れ、数少ない井戸の前には殺気立った行列ができている。
かつての美しい噴水広場も、今は干上がって砂埃が舞うだけだ。
「これは……酷いですね」
「ああ。ここまで水不足が深刻だとは」
セリスが痛ましそうに眉を寄せる。
ララも耳を垂れて、悲しそうな顔をしている。
「昔はもっと賑やかだったんだぞ。水もたくさんあって、果物も美味くて……」
「何があったんだろうな。ただの日照りにしては、空気が淀んでやがる」
ルナが鋭い視線を向ける先には、街の中央にそびえ立つ豪華な屋敷があった。
そこだけは緑が茂り、噴水から水が溢れているのが見える。
「あそこは?」
「この街の領主……じゃなくて、大商人の『ガゼル』の屋敷だ。今はあいつが街の実権を握ってるらしい」
ララが忌々しげに言う。
どうやら、ただの自然災害ではなさそうだ。
人為的な匂いがプンプンする。
「……少し、調べてみる必要がありそうだな」
僕はハンドルを握り直した。
この街で補給をするつもりだったが、どうやら一筋縄ではいかないらしい。
まずは情報収集だ。
僕たちは街の片隅にある、寂れた宿屋へと車を向けた。




