第022話: 砂嵐と映画館
「うわっ、なんだあれ!?」
ルナが指差した先、地平線の向こうから茶色い壁のようなものが迫ってきていた。
砂嵐だ。それも、とてつもなく巨大な。
『警告。大規模な砂嵐が接近中。到達まであと 5 分です』
「5 分か。……よし、停車しよう」
僕は慌てることなく、キャンピングカーを止めた。
普通の馬車なら、こんな場所で砂嵐に遭えば遭難は免れない。
だが、この車なら話は別だ。
「アンカー射出。防御フィールド、最大出力」
ズドン! という音と共に、車体から杭が打ち込まれ、地面に固定される。
同時に、車全体が淡い光の膜に包まれた。
「これで大丈夫。あとは通り過ぎるのを待つだけだよ」
「待つって……こんな何もない場所でか?」
「何もない? とんでもない。ここには『娯楽』があるじゃないか」
僕はリビングの照明を落とし、天井からプロジェクターのスクリーンを下ろした。
そして、キッチンから香ばしい匂いが漂ってくる。
「はい、お待たせしました! ポップコーンです!」
セリスが山盛りのポップコーンが入ったボウルを持ってきた。
塩味とキャラメル味のハーフ&ハーフだ。
「えっ、なにこれ? 映画館?」
「そうだよ。外に出られないなら、中で楽しめばいい」
ゴォォォォォッ……!!
外では猛烈な風と砂が吹き荒れ、車体を叩いている。
しかし、防音・防振機能のおかげで、車内は驚くほど静かだ。
揺れもほとんど感じない。
「すごい……。外は地獄なのに、ここは天国みたいです」
「だろ? さあ、今日はどのアクション映画を観ようか」
僕たちはソファに並んで座り、映画鑑賞会を始めた。
スクリーンの中で主人公が爆発を背にジャンプするたびに、ルナが「うおっ!」と声を上げ、セリスが「きゃっ!」と目を覆う。
ポップコーンを頬張りながら、冷たいジュースを飲む。
「……お前、本当にふざけた能力だよな」
「最高の褒め言葉だね」
数時間後。
映画のエンドロールが流れる頃には、外の嵐も過ぎ去っていた。
窓を開けると、そこには一面の星空が広がっている。
「綺麗……」
「嵐の後は空気が澄んでるからね」
僕たちは星空を見上げながら、改めてこの旅の快適さを噛み締めたのだった。




