第021話: 灼熱の砂漠へ
「うげぇ……なんだよ、この暑さは……」
ベルンの街を出て三日目。
僕たちの目の前には、見渡す限りの砂漠が広がっていた。
太陽は容赦なく照りつけ、地面からは陽炎が立ち昇っている。
外気温計の表示は『52℃』。
生身の人間なら、数時間で干からびてしまうような過酷な環境だ。
「……暑いです。息をするだけで喉が焼けるようです」
セリスもぐったりとしている。
彼女は北国育ちだから、暑さには特に弱いのだろう。
ルナに至っては、すでに白目を剥いて伸びている。
「おいユウ……。水……水をくれ……」
「はいはい、ちょっと待ってて」
僕は運転席から振り返り、ニヤリと笑った。
「ナビ、空調モードを『砂漠仕様』に切り替えてくれ」
『了解しました。外気遮断、断熱フィールド最大展開。車内温度を 24℃、湿度を 45%に設定します』
ブゥゥン……。
静かな駆動音と共に、エアコンの送風口から冷たい風が吹き出した。
「「「あぁ〜〜〜……生き返るぅ〜〜〜……」」」
僕たちは同時に情けない声を上げた。
さっきまでの灼熱地獄が嘘のように、車内は快適な空間へと変わっていく。
汗ばんだ肌に冷気が心地よい。
「すげぇ……! なんだこれ!? 魔法か!?」
「魔法よりすごいよ。これが『科学』の力だ」
僕は冷蔵庫から、キンキンに冷えたコーラを取り出した。
プシュッ! という小気味良い音と共に、炭酸の泡が弾ける。
「ほら、二人もどうぞ」
「ありがとうございます、ユウ様! ……んっ、冷たくて美味しいです!」
「くぅ〜っ! このシュワシュワする黒い水、最高だな!」
セリスとルナが目を輝かせてコーラを飲む。
外ではトカゲが暑さでひっくり返っているというのに、僕たちは優雅にティータイム(コーラだけど)だ。
「この車があれば、砂漠なんて庭みたいなもんだね」
「全くだ。……お前、本当にいい性格してるよな」
ルナが呆れたように言うが、その顔は満足そうだ。
窓の外を流れる過酷な景色と、手の中にある冷たい飲み物。
このギャップこそが、キャンピングカー旅の醍醐味なのだ。
「さて、このまま一気にササンドラまで行くよ。……おっと、その前に」
僕はアクセルを踏み込む前に、サングラスをかけた。
日差しが強いからね。
「出発進行!」
銀色の車体が、熱砂の海を滑るように走り出した。




