SS: 屋台の裏側(ユウ視点)
「いらっしゃいませー! ホットドッグはいかがですかー!」
「ほらよ、釣りだ。落とすんじゃねぇぞ」
屋台の前では、セリスの天使のような声と、ルナのぶっきらぼうだが手際の良い声が響いている。
対して、僕はひたすら鉄板と向き合っていた。
「……暑い」
目の前ではソーセージとパティがジュージューと音を立てている。
換気扇を回しているとはいえ、熱気がすごい。
しかも、客足が途絶えないので休む暇もない。
「ユウ様、ハンバーガー3つ追加です!」
「あいよ!」
「こっちはドッグ5つだ! 急げ!」
「はいはい!」
僕はもはや、肉を焼くマシーンと化していた。
【マイホーム】のスキルで体温調整をしているから倒れはしないが、精神的な疲労が半端ない。
(なんで僕は異世界に来てまで、バイトみたいなことをしているんだろう……)
ふと、そんな疑問が頭をよぎる。
だが、チラリと横を見ると、セリスが額に汗を浮かべながらも、満面の笑みで客に商品を渡していた。
その笑顔を見て、強面の冒険者たちがデレデレになっている。
「……まあ、いいか」
彼女が楽しそうなら、それだけでやる価値はある。
それに、ルナも文句を言いながら、しっかりと金を勘定している。
その手つきは完全に商人のそれだ。
「よし、もうひと踏ん張りするか!」
僕は気合を入れ直し、新たな肉を鉄板に放り込んだ。
今日の売上で、今夜は少し豪華な夕食にしよう。
そう心に決めて。




