第171話: 世界一の厨房、美食都市グルメンティア
温泉郷ユクムラを出発してから、さらに数週間。
僕たちのキャンピングカーは、西の大陸の中央部に位置する巨大な盆地へと足を踏み入れていた。
視界が開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、盆地全体を埋め尽くすような巨大な白い城壁と、その内側に広がる色鮮やかな屋根の数々だった。
「おおおーっ! 見えたんよ! あれがずっと憧れていた……世界一の厨房! 美食都市グルメンティアなんよ!」
助手席から身を乗り出したツムギが、歓喜の声を上げる。
その街は、近づくにつれて凄まじい活気と「暴力的なまでの美味しそうな匂い」を放っていた。
香辛料のスパイシーな香り、肉が焼ける香ばしい匂い、甘く煮詰められた果実の香り……それらが複雑に絡み合い、街全体が巨大なレストランであるかのような錯覚に陥る。
「くんくん……! ユウ、なんだかすごい匂いがするよ! おなかすいたー!」
「信じられない。門の外までこの香りが届くなんて……いったいどれほどの料理人たちが集まっているんだい?」
ララとルナも、窓に張り付いて目を輝かせている。
門番の審査(キャンピングカーの巨体に驚かれたが、大賢者ソフィアの威光であっさりと通過)を終え、街の中へと入ると、そこはまさに『食のるつぼ』だった。
大通りの両側には、高級レストランから庶民的な屋台、そして見たこともない異世界の食材(巨大なタコ型の魔物の足や、虹色に光るキノコなど)を並べた市場がどこまでも続いている。
「すごい活気ですね。皆、食べることに夢中になっています」
「うむ。良い街じゃ。さてユウよ、まずは何から食べる? わらわは甘いものが良いぞ」
セリスとソフィアも、すっかり観光客モードだ。
「ええと、とりあえず宿……じゃなくて駐車場を探さないと。でも、なんだか街中がいつも以上にお祭り騒ぎみたいだね」
僕が言いながら周囲を見渡すと、街の至る所に華やかな横断幕が掲げられているのに気がついた。
そこには、共通してこう書かれている。
『三年に一度の頂上決戦! 超・食の祭典、いよいよ開幕!』
「しょ、食の祭典……!」
その横断幕を見たツムギの目が、かつてないほどにメラメラと燃え上がった。
ヤマトの天才シェフと、僕のチート能力(ネットスーパー&キャンピングカー機能)の集大成。
クライマックスとなる『料理大決戦』の舞台へ、僕たちはついに足を踏み入れたのだった。




