第017話: 陰湿神官の影
「……分かった。ありがとうよ」
ルナは路地裏で、怪しげな男と何やら話した後、僕たちの元へ戻ってきた。
その表情は険しい。
「どうだった?」
「ビンゴだ。……最近、教会の地下水道付近で、怪しいローブの男たちが出入りしてるって噂がある」
ルナの情報網によれば、その男たちは王都から流れてきた「闇ギルド」の連中で、最近になって急に羽振りが良くなったらしい。
そして、彼らが持ち込んだ「積み荷」から、禍々しい気配がしたという証言もあった。
「場所は、スラムの真下だ。そこから呪いを垂れ流してやがるんだ」
「……やはり、そうですか」
セリスが悔しげに唇を噛む。
彼女は先ほどの治療で、あることに気づいていたのだ。
「子供たちの呪いには、不自然な『調整』の跡がありました。まるで、効力を少しずつ強めて、どこまで耐えられるかを試しているような……」
「なんだと……? じゃあ、あいつらは……」
「はい。子供たちを実験台にしているのです。新しい呪術を完成させるための」
「許せません……。罪のない子供たちに、そんな非道な真似を……!」
「落ち着いて、セリス。……ルナ、そのローブの男たちって、どんな奴らだ?」
「ああ。目撃情報によると、胸に『蛇の紋章』をつけてたらしい」
蛇の紋章。
それを聞いた瞬間、セリスの顔から血の気が引いた。
「そんな……。それは、私を追放した大神官の手先です」
「なんだって?」
「あの方は、裏で禁忌の呪術に手を出しているという噂がありました。まさか、それが本当だったなんて……」
セリスは唇を噛み締める。
もしかすると彼女が「魔物を呼ぶ呪い」を受けたのも、その実験の一環だったのかもしれない。
そして今、彼らはこの街で新たな実験を始めたのだ。
「ユウ様。……私、行きます」
セリスが顔を上げる。
その瞳には、もう迷いはなかった。
「彼らを止めるのは、聖女としての私の義務です。それに……これ以上、あの方の罪を重ねさせるわけにはいきません」
「……分かった。僕も行くよ」
「私もだ。私のシマを荒らした落とし前、きっちりつけさせてやる」
僕たちは頷き合った。
敵のアジトは地下水道。
狭くて暗い、ジメジメした場所だ。
普通の冒険者なら敬遠する場所だが、僕たちには頼もしい味方がいる。
「よし、作戦会議だ。……ナビ、地下水道のマップはあるか?」
『はい、マスター。地中探査ソナーにより、地下水道の構造を解析済みです』
「よし。ホタル、先行偵察を頼む。ポチは前衛だ」
「わふっ!」
僕たちは準備を整え、夜の帳が下りるのを待った。
スラムの片隅にあるマンホール。
そこが、地獄への入り口だ。
「行くぞ。……絶対に、子供たちを救うんだ」
僕たちは重い鉄蓋を開け、暗闇の中へと降りていった。




