第015話: 繁盛と嫉妬
屋台を始めて三日目。
僕たちの店『マイホーム・キッチン』は、連日大盛況だった。
特に冒険者たちの間では、「あそこの飯を食うと力が湧く」と評判になっているらしい。
まあ、ネットスーパーの食材は栄養価が高いし、何より美味いからな。
「はい、ホットドッグお待ちどうさまです!」
セリスの笑顔も、客寄せに一役買っている。
彼女目当ての常連客も増えてきた。
しかし、光があれば影もある。
「おいおい、景気がいいじゃねぇか」
昼のピークが過ぎた頃、数人の男たちが屋台を取り囲んだ。
柄の悪い服装に、腰には武器。
見るからにカタギじゃない。
「この場所で商売するには、場所代が必要だって知らねぇのか?」
「場所代? ギルドにはちゃんと許可を取ってますけど」
「ギルドは関係ねぇよ。この辺りは俺たち『黒蛇団』のシマなんだよ」
リーダー格の男が、ドスをちらつかせながら凄む。
典型的なみかじめ料の請求だ。
ルナが舌打ちをして前に出ようとしたが、僕はそれを手で制した。
「お断りします。不当な要求には応じられません」
「あぁん? ナメてんのかガキが!」
男が激昂し、屋台を蹴り飛ばそうとする。
さらに、別の男がセリスに手を伸ばした。
「へへっ、なら代わりにこの姉ちゃんを借りていくぜ。体で払ってもらおうか!」
「きゃっ……!」
「セリス!」
僕が叫ぶよりも早く、セリスの左手――薬指の指輪が輝いた。
『警告。敵対的行動を検知。防衛システム、起動』
無機質なナビの声が、指輪から響く。
次の瞬間。
バチチチチッ!!
「ぎゃあああああっ!?」
セリスに触れようとした男の手から、青白い電撃が走った。
男は白目を剥いて痙攣し、その場に崩れ落ちる。
「な、なんだ!?」
「魔法か!?」
残りの男たちが狼狽える。
指輪からは、さらに赤いレーザーポインターが照射され、リーダー格の男の眉間に照準を合わせた。
『対象をロック。高出力レーザーによる迎撃準備完了。発射まで、3、2……』
「ひ、ひぃぃっ!?」
赤い光点に狙われた男は、本能的な恐怖を感じたのか、腰を抜かして後ずさった。
「ば、化け物だ! 逃げろぉぉっ!」
男たちは気絶した仲間を引きずり、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
広場には静寂が戻る。
「……すごいです、ユウ様。指輪が勝手に守ってくれました」
「ああ、言っただろ? 僕の家と同じセキュリティだって」
僕は指輪の機能を解除し、ホッと息をついた。
周りの客たちも、今の騒ぎを見て遠巻きにこちらを見ている。
「へっ、ざまぁみろだ。これでもう手出しはできねぇだろ」
ルナが鼻を鳴らす。
確かに、これで僕たちの店に手を出すとどうなるか、街中に知れ渡ったはずだ。
科学の力(と魔法の融合)による自衛は、この世界でも十分に通用するらしい。
「さて、邪魔者もいなくなったし、商売再開といこうか」
「はい! いらっしゃいませー!」
セリスの元気な声が響き、再び屋台には行列ができ始めた。
ただ、客層が少しだけ「礼儀正しく」なったのは、怪我の功名かもしれない。




