第014話: 飯テロ屋台
「……足りない」
クエストから戻り、ギルドで報酬を受け取った僕は、キャンピングカーのリビングで頭を抱えていた。
テーブルの上には、今日の稼ぎである銅貨と銀貨が数枚。
宿代や食費には十分だが、僕の目的には程遠い。
「どうしたんだよ、ユウ。結構稼げたじゃねぇか」
「生活費だけならね。でも、この車の魔力補充用アイテム(魔石)を買うには全然足りないんだ」
このキャンピングカーは僕の魔力で動くが、長距離移動や防衛システムの維持には補助動力としての魔石が必要になる。
それが結構高いのだ。
「もっと効率よく稼ぐ方法はないかな……」
「うーん……。この街なら、商売をするのが一番手っ取り早いけどな」
ルナのアドバイスに、僕はハッとした。
商売。そうだ、僕には最強の武器があるじゃないか。
「……屋台をやろう」
「は? 屋台?」
「そう。この車のキッチンと、ネットスーパーの食材を使って、この世界にはない料理を売るんだ」
僕は立ち上がり、キッチンのタッチパネルを操作した。
購入するのは、大量のパン(バンズとコッペパン)、ソーセージ、ハンバーグ、そして調味料だ。
「メニューは『ホットドッグ』と『ハンバーガー』。手軽に食べられて、中毒性が高いやつだ」
「ほっと……どっぐ? 犬を食べるのか?」
「違うよ! パンにソーセージを挟んだ料理だ」
翌日。
僕たちはギルド前の広場に、簡易的な屋台(これも【マイホーム】の DIY 機能で作った)を出店した。
看板娘は、もちろんセリスだ。
彼女は可愛らしいエプロン姿で、道行く人々に手を振っている。
「いらっしゃいませー! 美味しいお料理はいかがですかー!」
しかし、最初は誰も見向きもしない。
得体の知れない料理に警戒しているようだ。
「ふふん、想定内だ。……ルナ、換気扇全開!」
「おう!」
僕は鉄板の上で、ソーセージとパティを一気に焼き始めた。
ジュワァァァッ……!
脂の弾ける音と共に、香ばしい肉の匂いが立ち昇る。
さらに、特製のソース(ケチャップとマスタード)を焦がすと、暴力的なまでの食欲をそそる香りが広場中に充満した。
「な、なんだこの匂いは!?」
「肉か? いや、もっと甘酸っぱいような……!」
道行く冒険者たちが、次々と足を止める。
鼻をヒクヒクさせながら、ゾンビのように屋台へと集まってきた。
「おい兄ちゃん、これは何だ?」
「へい、いらっしゃい! こっちは『ホットドッグ』、こっちは『ハンバーガー』だよ! 一つ銅貨 5 枚!」
「くっ、高ぇな……だが、この匂いには勝てねぇ! 一つくれ!」
最初の一人がホットドッグにかぶりつく。
パリッという音と共に、肉汁が溢れ出した。
「う、うめぇぇぇぇっ!! なんだこれ!? パンはふわふわで、肉はジューシーで……この赤いソースが最高だ!」
その叫び声が合図だった。
「俺にもくれ!」
「こっちはハンバーガーだ!」
「並べ並べ! 俺が先だ!」
あっという間に長蛇の列が出来上がった。
セリスは目を回しながら注文を捌き、ルナはお金の計算に追われている。
僕はひたすら肉を焼き続けた。
「すごい……! ユウ様、完売です!」
「やったな! これなら魔石どころか、新しい装備も買えるぞ!」
夕方には用意した食材が全てなくなった。
僕たちの「飯テロ作戦」は大成功を収めたのだった。




