SS: 義賊ルナ、一生の不覚(ルナ視点)
「へっへっへ、上玉見っけ!」
私は森の木陰から、街道に停まっている奇妙な馬車(?)を覗き見ていた。
白くて四角くて、馬もいないのに動く鉄の箱。
噂に聞く「古代文明の遺産」ってやつかもしれない。
「あんなのを持ってるなんて、どうせ悪徳商人か成金貴族だろ」
私は義賊だ。
悪い奴から奪って、貧しい仲間に分け与える。それが私の流儀。
だから、あそこから金目の物を頂戴しても、バチは当たらないはずだ。
「よし、夜になったら仕掛けるか」
私は腹の虫を抑えながら、夜を待った。
正直、ここ数日は木の実しか食べていない。
あの中には、きっと美味い飯があるに違いない。肉とか、パンとか、酒とか!
……そして、深夜。
私は音もなく鉄の箱に忍び寄った。
まずはドアだ。鍵がかかっているが、私にかかればこんなもの……。
「……あれ? 開かない?」
愛用の鍵開け道具が、鍵穴に入らない。
というか、鍵穴すらない。どうなってるんだ?
「くそっ、ならこじ開けるさ!」
こじ開け道具でも傷一つつかない。
まるで、鉄の箱そのものが何かに守られているみたいだ。
「な、なんなんだよコイツは……!」
焦りと空腹で、私は冷静さを失っていた。
こうなったら力尽くでも……!
そう思ってドアを蹴り飛ばした、その瞬間だった。
『防犯モード起動』
無機質な声が聞こえたかと思うと、全身に雷が落ちたような衝撃が走った。
「ぎゃあああああっ!?」
視界が真っ白になる。
手足が痺れて動かない。
地面に倒れ伏した私は、薄れゆく意識の中で思った。
(……お腹、すいたなぁ……)
次に目が覚めた時、目の前に湯気を立てるカップ麺があるとは知らずに。
これが私、義賊ルナの、一生の不覚にして最大の幸運の始まりだった。




