第109話: 巨大炊き出しと白米の力
拠点に迎え入れた流民の数は、ざっと五十名ほど。
長らくまともな食事をとっていなかった彼らは、疲労困憊で座り込んでしまっている。
「まずは何より、温かくて腹にたまるメシが必要だな」
僕はキャンピングカーのキッチン機能と、新設したばかりの野外厨房をフル稼働させることにした。
用意するのは、ゲンサイ様から頂いた大量の「米」。
そして、ネットスーパーで購入した豚肉や根菜、たっぷりの「味噌」を使った、特製・豚汁定食だ。
「セリス、ルナ! 野菜のカットを頼めるか? ララはポチ丸と一緒に、薪の調達をお願い!」
「はいっ! お任せください!」
「任せな! アタシのナイフ捌きを見せてやるよ!」
「わーい! ポチ、いっくよー!」
仲間たちが手分けして作業に取りかかる。
僕は巨大な寸胴鍋に湧かしたお湯へ、出汁をしっかりと取りながら、切られた具材を次々と放り込んでいく。
「ユ、ユウ殿。なんと馥郁たる香りでしょう。この味噌という調味料、ヤマトの物とは少し風味が異なるような……?」
カエデが、鍋から立ち上る匂いに魅了されるように近づいてきた。
それもそのはず。僕が使っているのは、ネットスーパーで取り寄せた現代日本の極上合わせ味噌だ。キャンピングカーの『時短発酵機能』を通して旨味を限界まで引き出してある。
「さあ、炊きあがったぞ!」
同時に、特大の羽釜(キャンピングカーの調理設備で生成)の蓋を開ける。
ブワァァァッ! と白い蒸気が舞い上がり、炊き立ての白米がキラキラと真珠のように輝いていた。
ヤマトで手に入れた米の品質も最高だが、キャンピングカーの『究極の炊飯アルゴリズム』によって、一粒一粒が完璧な状態に仕上がっている。
「お待たせしました! 豚汁と塩むすびのセットです! おかわりはいくらでもあるから、ゆっくり食べてね」
木のお椀にたっぷりの豚汁と、僕とセリスたちで握った特大の塩むすびを、流民の皆さんに配っていく。
「こ、こんな美味そうなものを……我々などに……」
老人が震える手でおにぎりを一口かじる。
その直後、老人の目が見開かれ、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「う……うまい……!! なんだこの米は! 一粒一粒が立って、噛むほどに甘みが増して……! そしてこの汁物! 野菜と肉の旨味が、全身に染み渡るようだ……!!」
「本当だ……! お母さん、これ、すっごく美味しいよぉ!」
「あああ……生き返る……! 俺、生きてて良かった……!!」
静かだった広場が、突如として歓声と号泣の渦に包まれた。
ただの塩むすびと豚汁。だが、極限までお腹を空かせた彼らにとって、それは文字通り命を繋ぐ神の食事に思えたのだろう。
「ゆっくり食べて。まだたくさんあるからね」
次々とおかわりを求める人々の笑顔を見ながら、僕も少し温かい気持ちになった。
現代日本の料理チート、大成功だ。
その時だった。
村の入り口付近に、見慣れない影が一つ、フラフラと近づいてくるのに気付いたのは。
「ん……? 豚汁の匂いに誘われて、さらに集まってきたのかな?」
しかし、その影は流民とは少し様子が違った。
ボロボロの着物を着ているが、手には立派な風呂敷包みを抱え、何よりその目が、尋常ではない光を宿して鍋を見つめていた。
「この……圧倒的な出汁の香りは、なんですか……!」
バタリ、とその少女は力尽きたように倒れ込んだ。




