第108話: 噂を聞きつけた者たち
温泉掘削から数日が経過した。
僕たちの新しい拠点(仮称:ユウの村)の設備は、日を追うごとに充実していった。
キャンピングカーの和風モードと建材生成機能をフル稼働させ、ヒノキ張りの立派な大広間や、屋根付きの野外厨房、さらには見張り用の櫓まで建築したのだ。
「うーむ、見事なものじゃ。昨日は荒れ地だった場所に、一晩でこれほどの御殿が建つとは」
「本当に……ユウ殿の力には驚かされるばかりです」
完成したばかりの縁側でお茶をすするソフィアとカエデが、出来上がった村の景色を眺めて感嘆の声を上げる。
「まあ、大半はナビとキャンピングカーの機能のおかげだけどね」
『肯定します。我が輩の演算能力と建築モジュールの賜物です』
ダッシュボードのモニターからドヤ顔(?)の顔文字  ̄ドヤ ̄ を表示させるナビ。
最近、感情表現が豊かになっている気がして少し怖い。
「ねえねえ、ユウ。外に何か来てるよ?」
ララが狐耳をピクピクさせながら、広場へ続く道のほうを指差した。
ドローン兵『ポチ丸』と『ホタル』が哨戒しているエリアの境界線に、ボロボロの衣服を着た数十人の集団が立ちすくんでいたのだ。
「なんだ、あいつら……? 盗賊には見えないけど」
ルナが目を細めて警戒するが、彼らは武器らしい武器を持っていない。
カエデがその姿を見て、ハッとして立ち上がった。
「あれは……流民の方々です。おそらく、先の戦や凶作で家を失い、行く当てを無くして彷徨っていたのでしょう」
「流民……」
集団の先頭にいた、白髪の老人が僕たちの姿に気づき、恐る恐る近寄ってきた。
「お、お侍様方……。どうか、どうかお恵みを……」
「待ってください。少し事情を聞かせてもらえますか?」
セリスがいち早く駆け寄り、老人の前にしゃがみ込む。
話を聞くと、彼らはサカイの近郊にあった村の住人だったが、先日の「土蜘蛛」の目覚めに驚いて逃げ出した魔物の群れに村を破壊され、この森まで逃げてきたらしい。
「行く当てもなく森を彷徨っておりましたら……夜の闇の中に、煌々と光り輝く巨大な城(キャンピングカーと拠点)が見えまして……」
老人は、僕たちが一晩で建てた大広間や露天風呂の設備を、ポカンと見上げている。
まさか、巨大な魔物が巣食っていたはずの死の森に、こんな立派な建造物が突如として現れようとは夢にも思わなかっただろう。
「この土地の新たな主とお見受けいたします。どうか、我らを……我らをこの村の端にでも置かせていただけないでしょうか! 何でもします! 開墾でも雑用でも!」
老人は地面に額をこすりつけて懇願した。
その後ろでは、お腹をすかせた子供たちが不安そうにこちらを見ている。
「……どうする? ユウ」
ルナが僕の顔を見る。セリスやカエデも、祈るような目をして僕を待っていた。
答えなんて、最初から決まっている。
「顔を上げてください」
僕は老人に手を差し伸べた。
「ここはまだ作っている途中の、名もなき村です。手を出してくれる人がいるなら、大歓迎ですよ」
「おお……! ありがとうございます、ありがとうございます……!」
泣いて喜ぶ老人や流民たち。
こうして、僕たちの趣味で作ったリゾート地は、思わぬ形で「本物の村」としての第一歩を踏み出すことになった。
……まあ、人数が増えた分、まずは彼らの「食事」を手配しなければならないのだけど。




