第106話: 最高の露天風呂
竹垣で男女に仕切られた、広々とした大露天風呂。
青空の下、硫黄の香りとヒノキの香りが混ざり合い、これぞ温泉という至福の空間が広がっていた。
「はぁ〜……極楽、極楽……」
僕は湯船の縁に頭を乗せ、手ぬぐいを頭に乗せて大きく息を吐いた。
適度な熱さのお湯が、日々の長旅の疲れをじんわりと溶かしていく。
男湯には僕一人だけだが、竹垣の向こうの女湯からは、賑やかな声が聞こえてくる。
『きゃーっ! ララ、お湯をかけないでください!』
『あははっ! セリスおねえちゃん、シャンプーあわあわー!』
『こらララ。風呂の中で走るんじゃないよ。滑って転ぶぞ』
『うむ……この肌触り、まさに神の恵みじゃ。わらわの美貌にさらに磨きがかかってしまうのう』
『ソフィア殿、背中をお流しいたします』
セリス、ララ、ルナ、ソフィア、カエデ。
どうやら女性陣も、ヤマトの大自然の中で入浴を大いに満喫しているようだ。
(セリスは初めてのシャンプーの時も大騒ぎしてたけど、大浴場はもっとテンション上がるだろうな)
キャンピングカーのユニットバスも快適だが、こうして大勢で広い湯船に浸かるのは、やはり別格の楽しさがある。
ちなみに、この露天風呂のお湯は、重機モードのクレーンを使ってキャンピングカーの貯水タンク(魔導浄化機能付き)と一部連結させているため、衛生面も完璧だ。
「おいユウ。そっちのお湯加減はどうだい?」
「最高だよ! そっちも楽しそうで何よりだ」
竹垣越しにルナの声が聞こえてくる。
「アタシ、こんな贅沢していいのかなって思っちゃうよ。盗賊やってた頃は、川で水浴びするのが精一杯だったのにさ。……あんたについてきて、本当に良かったよ」
「ルナ……」
「もちろん、美味しいご飯と安全な寝床のためだけどねっ!」
ツンデレな女盗賊の素直な(?)感謝の言葉に、思わず頬が緩む。
「あ、私もです! ユウ様に出会わなければ、私は雪の中で凍死していたかもしれません。毎日、温かいお湯に入れて、温かいごはんが食べられる……今の生活が、本当に幸せです」
セリスも、少し照れくさそうに言葉を繋ぐ。
聖女として王都を追放された彼女が、今こうして心からリラックスして笑える場所を作れたことは、僕にとっても誇りだ。
『マスター。長湯はのぼせる危険があります。水分補給を推奨します』
不意に、湯船の脇に設置された竹筒のスピーカーから、ナビの音声が流れ込んだ。
気が利くAIだ。確かに、そろそろ上がって冷たいものを飲みたい気分だった。
「わかった、もう上がるよ。みんなも、あんまり長湯してのぼせないようになー」
『はーい!』
さて、風呂上がりの大定番といえば、アレしかない。
僕はネットスーパーの画面を開き、冷水機と「ある飲み物」をポチる準備を始めた。




