SS: 天国への扉(セリス視点)
寒くて、痛くて、もう何も感じない。
私の体は、雪の中に沈んでいく。
(ああ……これで終わるのですね)
国を追われ、誰にも必要とされず、穢れた聖女として死んでいく。
それが私の運命なのだと、受け入れるしかなかった。
意識が遠のく中、最後に願ったのは、せめて来世では誰かの役に立ちたいということだけ。
その時だった。
轟音と共に、白い世界に「光」が現れたのは。
「おい、大丈夫か!?」
温かい声。温かい手。
私は抱き上げられ、光の中へと連れて行かれた。
……目が覚めると、そこは見たこともない場所だった。
ふかふかの雲のような寝台。
見たこともない美しい調度品。
そして、何よりも……温かい。
(ここは……天国?)
そうとしか思えなかった。
目の前にいる黒髪の男性は、きっと神の使い様だ。
そうでなければ、こんな奇跡のような空間を作れるはずがない。
「君、名前は?」
「……セリス、と申します」
恐る恐る名乗ると、彼は優しく微笑んでくれた。
その笑顔に、凍りついていた私の心が溶けていくのを感じた。
その後、私は「シャワー」という聖なる滝で身を清め、「ハンバーガー」という神の食べ物を頂いた。
どれもこれも、地上の王族ですら味わえないような素晴らしいものばかり。
特に「コーラ」という飲み物は、口の中で星が弾けるような衝撃だった。
(こんな私ごときが、こんな幸せを享受していいのでしょうか……)
不安になる私に、彼は言った。
「気に入ってくれたならよかったよ」と。
ああ、なんて慈悲深い方なのだろう。
私は決めた。
この御方のためなら、どんなことでもしよう。
例えここが天国でなくとも、彼がいる場所こそが、私にとっての楽園なのだから。




