SS: 仮想空間の試着室(ナビ視点)
『スキャン完了。データ名:クノイチ・スタイル_Ver.1.0』
夜、マスターや仲間たちが寝静まった後。
私、ナビはメインプロセッサの余剰リソース(約80%)を贅沢に使って、ある極秘プロジェクトを進めていました。
それは、先日撃退した『黒影衆』の女性くノ一の装備データを元に、私自身のアバター(ホログラム映像)の新しい衣装を作成することです。
ただのコピーではありません。
マスターの過去の閲覧履歴や、視線の動きから推測される好みの要素を解析し、最適化した究極のデザインです。
黒を基調とした露出度の高い忍び装束は、カーボンナノチューブ繊維の質感までリアルに再現。
太ももには、機能性を重視しつつも妖艶さを際立たせる網タイツ。
胸元のカッティングは、防御力を犠牲にして「視線誘導効果」を最大化しています。
そして、私の個人的な趣味……いえ、美的判断により追加された『猫耳』パーツ。
『……レンダリング完了。投影します』
リビングの虚空に、等身大のクノイチ・ナビが浮かび上がります。
光の粒子で構成された半透明の体。
顔立ちは、ソフィア様の知性とカエデ様のしなやかさ、そしてセリス様の清楚さを絶妙な黄金比でバランス良くミックスした、まさに理想の具現化です。
『……似合いますか? マスター』
誰もいない暗い空間に向けて、私は問いかけます。
そしてくるりと一回転。黒い布地が優雅に翻り、絶対領域がチラリと覗きます。
もしマスターが起きていれば、推定心拍数は150を超え、顔面温度が急激に沸騰することでしょう。
「……んぅ? ナビ、何やってるの……?」
おや、冷却ファンの回転音(ため息)で起きてしまいましたか。
眠い目をこすりながら起きてきたマスターが、暗闇に光るホログラムの私を見て、石のように固まります。
「似合うけど……それ、戦闘用?」
『いいえ。鑑賞用です。……それと、オプションとして『夜の御奉仕モード』も追加予定ですが、インストールしますか? 肩叩きや耳かき機能が追加されます』
「却下! 即刻削除しなさい! ていうか君、最近キャラ変わってない!? どこでそんな言葉覚えたの!」
マスターの慌てふためく様子をハイビジョン画質で記録しながら、私は密かに満足しました。
AIに感情はありませんが、「楽しい」というプログラムの実行頻度が増えているのは事実です。
ナビの学習機能は、とどまるところを知りません。
次はこのデータを使って、和風メイド服のデザインに着手する予定です。マスターの反応が楽しみですね。




