第099話: 桜吹雪の決着
パキィィィン!!
澄んだ音が広間に響き渡り、妖刀『村雨』の刀身が砕け散った。
同時に、ゲンサイの体からどす黒い紫色の霧が悲鳴を上げながら抜け出て、セリスの聖なる光の中に溶けて消滅していく。
呪縛が解かれたのだ。
ゲンサイが糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。
「……う、ううん? ……カエデ、なのか?」
「父上! よかった……!」
正気に戻った父を、カエデが涙ながらに抱き止める。
その瞳は澄んでおり、以前の慈愛に満ちた父親に戻っていた。
「ば、馬鹿な! 私の最強の駒が! 計画が台無しではないか!」
クロウが扇子を放り投げ、狼狽して後ずさる。
追い詰められた悪党の顔だ。
「おのれぇぇ! こうなれば奥の手だ! 私の魔力全てを使って、魔界の扉を開き……」
彼が何か危険な呪文を詠唱しかけた、その瞬間。
バシュッ!
窓の外から飛んできた白いネットが、クロウを頭からすっぽりと包み込み、絡め取った。
庭で待機していたキャンピングカー(ナビ)からの正確無比な射撃だ。
「捕まえたー! 逃さないぞー!」
ララが元気よく飛びつき、ネットごとクロウを持ち上げる。
小柄なララの怪力に、クロウは宙ぶらりんだ。
「離せ! 私は家老だぞ! 不敬であるぞ!」
「うるさい! 悪いやつはお手玉の刑だ!」
ララはクロウを軽々と放り投げ、空中で蹴り上げた。
ドスッ!
哀れな悪徳家老は、天井の梁に見事に突き刺さり、気絶した。
まるで喜劇だ。
「……ふぅ。これで一件落着ですね」
「見事な手際じゃったな。最後が少し締まらんかったが」
僕たちは顔を見合わせて笑った。
戦いが終わり、静寂が戻った広間。
開け放たれた窓からは、庭の桜吹雪が舞い込んでくる。
薄紅色の花びらが、カエデとゲンサイの上に優しく降り注ぐ。
「……ありがとう、旅のお方。おかげで目が覚めた。……カエデ、苦労をかけたな」
「いいえ、父上。……ご無事でなりよりです」
ゲンサイがカエデの頭を撫でる。
親子の絆も、無事に戻ったようだ。
桜吹雪の中、二人の笑顔が輝いていた。僕たちはそれを温かい気持ちで見守っていた。




