第090話: 勝利の美酒
黒鮫団を撃退し、海賊都市バルバロスに戻った僕たちは、英雄として熱狂的な歓迎を受けた。
その熱気の中、ロゼの父親が待つ屋敷へ向かう。
父親は瀕死の状態だったが、ロゼが持ち帰った『ドラゴンスレイヤー』を口にした瞬間、奇跡が起きた。まばゆい黄金の光が父親を包み込み、光が収まると、そこには若返り、筋骨隆々になった父親の姿があった。
「すげぇ! 全盛期より若返ってねえか!?」
「親父!」
ロゼが涙を流して抱きつき、父親も豪快に笑う。
父親は感謝の印として、酒の半分と財宝を僕たちに贈ってくれた。
その夜、街を挙げての盛大な宴が開かれた。
広場にはご馳走と酒が溢れ、陽気な音楽が響く。僕たちも特等席でドラゴンスレイヤーを堪能した。一口飲めば、無限の勇気と魔力が湧いてくる至高の味だ。
「うぃ〜、美味い酒じゃのう〜」
「セリスちゃーん、もう一杯〜」
ソフィアとルナは完全に出来上がっている。
宴の喧騒を抜け出し、僕はバルコニーで夜風に当たっていた。そこにロゼが二つのグラスを持って現れた。
「……ありがとよ。あんたたちがいなきゃ、無理だった」
「気にするなよ。最高の酒も手に入ったしね」
乾杯を交わす。
ロゼは少し潤んだ瞳で僕を見つめ、言った。
「……ねえ、ウチの船員にならないかい? 副船長にしてやるよ」
魅力的な誘いだ。
だが、僕にはまだやるべきことがある。
「魅力的な誘いだけど、遠慮しておくよ。僕には帰る場所があるからね」
「……そっか。残念だよ。本当に」
彼女は寂しそうに笑うと、爪先立ちになり、僕の頬にそっとキスをした。
「元気でな。あんたたちの旅に幸あれ」
翌日。
雲ひとつない快晴の下、僕たちは出港した。
紙テープが舞い、別れを惜しむ声が響く。
「また来いよー! いつでも歓迎するぜー!」
僕たちは甲板に立ち、彼らの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
さあ、次なる目的地は東の大陸だ。
僕たちの旅はまだまだ続く。




