第089話: 黒鮫団の襲撃
洞窟を出ると、海は黒く染まっていた。
水平線を埋め尽くすほどの無数の海賊船――『黒鮫団』の大艦隊が、島を完全に包囲していたのだ。その数は五十隻を下らないだろう。
先頭に立つ巨大な戦艦の甲板には、眼帯をした巨漢、黒鮫団のボス・シャークが仁王立ちしていた。
「出てきたなロゼェ! 待ちくたびれたぜェ! 幻の酒を手に入れたんだろう? その樽をこっちによこしな! そうすりゃあ、命だけは助けてやらんでもないぜぇ!」
「くそっ、完全に囲まれたか! これじゃあ逃げ場がない!」
ロゼが歯噛みする。部下たちも絶望的な表情だ。
だが、僕はロゼの前に立ち、静かに言った。
「諦めるなロゼ。酒は誰にも渡さない。……僕たちは『最強』だからね」
僕たちはキャンピングカー(水陸両用モード)に乗り込み、臨戦態勢をとった。
助手席のソフィアが、苛立ったように窓を開けて杖を振る。
「ふん、鬱陶しい虫けらどもじゃ。数が多ければ勝てるとでも思っておるのか。……天空より降り注げ、星々の裁きよ……『隕石召喚』」
ズゴゴゴゴ……!
空が急に暗くなり、赤く燃え盛る巨大な岩塊が雲間から顔を覗かせる。
「ストップストップーストォォップ!!」
僕は全力でソフィアを止めた。
「あんなのを落としたら、島も酒も全部蒸発するぞ! ここら一帯がクレーターになっちゃう!」
「ちっ、つまらんな。……加減というのは難しいのう」
ソフィアは不満げに魔法をキャンセルし、代わりに杖を軽く一振りした。
ゴオオオオッ!
局地的な暴風が発生し、海面が荒れ狂う。
密集していた黒鮫団の船同士が激突し、マストが絡まり合って大混乱に陥る。
「今だ! ナビ、全火器使用許可! 無力化を最優先だ!」
『了解。ゴム弾ガトリング、高圧放水砲、捕獲用ネットランチャー、一斉発射』
ダダダダダッ! バシューッ!
キャンピングカーが移動要塞と化し、海賊たちを次々と無力化していく。
「すげぇ……! 俺たちもやるぞ! 姐御を守れェ!」
ロゼの部下たちも勇気を取り戻し、果敢に応戦する。
旗艦のマストを折られ、放水砲の直撃を受けたシャークは、捨て台詞を残して海へと落ちた。指揮官を失った黒鮫団は総崩れとなり敗走していった。
「……勝った、のか?」
「ああ、完全勝利だ」
東の空から朝日が昇り、勝利を祝福するように海面を黄金色に照らし出していた。
僕たちはハイタッチを交わし、互いの健闘を称え合った。




