第085話: 悪党連合
翌朝。不穏な空気の中、ロゼの海賊船『ブラッディ・ローズ号』と、僕たちのキャンピングカー(水上走行モード)は港を出発し、目的の孤島を目指した。
しかし、出港してすぐに「船長! 後方から船影多数! 黒鮫団です!」との報告が入る。
水平線の彼方から、黒い帆を張った無数の船が迫ってきていた。その数、およそ二十隻。
先頭を行く巨大な旗艦には、凶悪な黒い鮫の紋章。この海域で最大勢力を誇る悪徳海賊団だ。
「ロゼェェェ! こそこそと抜け駆けとは感心しねえなぁ! 『幻の酒』の場所を吐きなァ!」
拡声魔法によるダミ声と共に、黒鮫団の艦隊が一斉に砲門を開いた。
轟音と共に無数の鉄球が発射され、水柱が上がる。
「クソッ、数が多すぎる! このままじゃ囲まれて袋叩きだよ!」
「落ち着いて! 通信魔法『ウィスパー』で指示を送るから!」
僕は窓を開け、魔法でロゼに伝えた。
『ロゼ、帆を一杯に張って! 風を送るから!』
『はぁ!? こんな時に何を! 逆風なんだよ!』
僕は後部座席の大賢者に声をかける。
「ソフィア、出番だよ! あの艦隊を足止めして、こっちには追い風を!」
「注文が多いのう。……まあよい。雑魚どもに『風の洗礼』を与えてやろう」
ソフィアが窓から身を乗り出し、可愛らしい杖を振るう。
『風神の吐息』!
その瞬間、猛烈な突風が巻き起こった。意思を持ったかのような局所的な暴風だ。
それは向かい風となって黒鮫団の船を押し戻し、逆に僕たちには強力な追い風となって加速させた。
「な、なんだぁ!? 船が進まねえ!?」
「ぎゃあああ! マストが折れるぞぉ!」
黒鮫団は大混乱に陥り、船体が傾いてパニックになる海賊たちの叫び声が響く。
その隙に、僕たちは驚異的なスピードで海を突き進んだ。
「す、すげぇ……なんだあの魔法は……! ありえねぇ!」
並走するロゼたちも呆気にとられている。
彼らの船もまた、魔法の風を受けて矢のように加速していた。
「ははは! 見ろ、ゴミのようじゃ!」
「ソフィアちゃん、完全に悪役のセリフだよ……」
高笑いする幼女賢者。頼もしいが、教育には非常に悪そうだ。
こうして僕たちは、圧倒的な機動力と魔法の力で追っ手を振り切り、目的の島へとたどり着いた。
しかし、黒鮫団もこの程度で諦める相手ではないだろう。
僕たちは船を入り江の陰に隠し、急いで「龍の洞窟」へと向かった。時間が勝負だ。




