第083話: 女海賊ロゼ
「痛い目にあわせてやるよ、余所者が!」
血の気の多い海賊たちが襲いかかってきた。
僕はため息をつきつつ剣に手をかけたが、僕たちが動くよりも早かった。
赤い影が、僕たちと海賊の間に割り込んだのだ。
「やめな! 酒が不味くなるだろうが!」
ドカッ! バキッ!
ごっつい音が響き、一瞬で数人の男たちが床に沈められた。
「……ちっ、騒々しいね」
現れたのは、赤いロングコートを羽織った長身の美女だった。
燃えるような赤髪をポニーテールにまとめ、腰には使い込まれた片手剣と二丁の銃。
彼女こそが、この海域で名を轟かせる女海賊団『ブラッディ・ローズ』の船長、ロゼだった。
「あ、姐御……!」
「ロゼ船長だ……!」
男たちが恐怖に顔を引きつらせて後ずさる。
「おいボウヤたち。ここはガキの遊び場じゃないんだ。火傷する前にママのミルクでも飲みな」
ロゼは僕たちの前に立ち、フッと笑った。その瞳には気高い光が宿っている。
「助けてくれてありがとう。でも、僕たちは『幻の酒』を探しているんだ。手ぶらで帰るわけにはいかない」
僕が言い返すと、彼女は少し驚き、それから面白そうに口角を上げた。
「……ほう? 肝が据わってるねぇ」
「伊達に修羅場は潜ってないからね」
「嘘をつけ、お主が一番好戦的な顔をしておったぞ」
セリスの怯える演技にソフィアがツッコミを入れる。
ロゼは喉を鳴らして笑った。
「気に入ったよ。……あんたたちも、あの酒を狙ってるのかい」
彼女は指を鳴らして追加の酒を注文した。
「マスター、いつものやつ。それと、こいつらにも一杯奢ってやりな。……上等なエールをね」
差し出された琥珀色の液体を一気に煽るロゼ。
「ぷはぁっ! ……で、幻の酒だったか。座んな。話くらいは聞いてやるよ。……私も、その酒を探している一人だからね」
彼女は隣の椅子を蹴って勧めた。
どうやら、ただの助っ人ではないらしい。強力なライバルであると同時に、有力な情報源だ。
「さて、情報料代わりに一杯ご馳走になったわけだが……あんた、何を知ってるんだ?」
僕が切り出すと、ロゼはニヤリと笑った。
「せっかちな男は嫌われるよ? まあいい。……あの酒はこの島のどこかにあるわけじゃない。特定の条件を満たした時にだけ現れる『龍の洞窟』にあるのさ」
ここからが本題だ。僕たちは身を乗り出し、彼女の話に耳を傾けることにした。




