第081話: 無法者の海域
どこまでも広がる青い海。波の音とカモメの鳴き声が心地よいBGMとなり、潮の香りが鼻腔をくすぐる。
そんな絶好のロケーションの中、僕たちのキャンピングカーは快適に海上を疾走していた。フロートと魔法推進により、揺れはほとんどない。
次なる目的地は『海賊諸島』。
大小無数の島々からなり、どの国にも属さない無法地帯として知られている危険エリアだ。
「海賊かー。どんな奴らなんじゃろうな。やはり眼帯をして、フックの手をしておるのか?」
助手席でトロピカルジュースを飲みながら、ソフィアが呟いた。その瞳には好奇心しかない。
「そんなステレオタイプな海賊、今どきいますかね……? でも、無法者であることは間違いないでしょう」
「そうさねぇ。アタシも昔関わったことがあるけど、ロクな連中じゃなかったよ」
セリスとルナは警戒しているが、ララは「海賊のご飯っておいしそう!」と能天気だ。
『警告。前方より所属不明船、三隻接近。……海賊船と推測されます』
ナビのアナウンスと共に、モニターに映像が映し出された。
水平線の向こうから、ボロボロの帆船が三隻、進路を塞ぐように現れた。黒い帆には不気味なドクロマーク。まさに絵に書いたような海賊船だ。
「ヒャッハー! 珍しい船がいるぜぇ!」
「止まれ止まれぇ! 身ぐるみ剥いで海に放り込んでやるからなぁ!」
拡声魔法を使った品のない野次が聞こえてくる。甲板では男たちが錆びついた武器を振り回していた。
「……うわぁ、テンプレ通りの海賊だ」
「ふむ。目障りじゃな。一撃で沈めて良いか?」
ソフィアが冷めた目で指先に極大魔法の輝きを灯す。
待って、それ島ごと消し飛ぶやつ!
「ダメダメ! やりすぎだから! ナビ、あれ使って! 『放水砲』!」
『了解。非致死性兵器、高圧放水砲。出力30%で発射します』
キャンピングカーの屋根からノズルが展開し、超高圧の水流が放たれた。
ドバババババッ!
「ぐわぁぁぁ!」
「なんだこれ!? 水圧が痛ぇぇ! 骨が折れるぅぅ!」
まるで木の葉のように、海賊たちが甲板から次々と海に叩き落とされていく。
武器は吹き飛び、船自体には穴一つ開けず、人員だけを適確に無力化する。実にエコな兵器だ。
「すごーい! おっきい水鉄砲だー!」
「キャハハ! ざまぁないねぇ!」
ララとルナが大はしゃぎし、セリスもほっとした表情を見せる。
一方、ソフィアだけは「ふん、花火くらい見たかったのじゃが」と不満げだ。
海賊船は操船手を失い、コントロールを失って漂っている。
海に落ちた海賊たちは、必死に浮輪にしがみつきながら、遠ざかる僕たちを呆然と見送っていた。
もはや追ってくる気力もないだろう。
僕たちは無力化された海賊船を放置し、そのまま海賊諸島の奥深くへと進んでいった。
この先に待つ『海賊都市バルバロス』で何が待ち受けているのか。不安もあるが、このメンバーならなんとかなるだろう。
青い海に白い航跡を描きながら、キャンピングカーは風を切って進み続ける。




