SS: バカンスの延長(ソフィア視点)
スーパー・キャンピングカー・マリンの最後尾にある個室。
かつては予備の物置だったその部屋は、今や私、大賢者ソフィア専用の豪華な私室へと変貌を遂げていた。
もちろん、私の空間魔法による拡張と、ナビの協力による内装リフォームのおかげじゃ。
「ふあぁ……極楽じゃ」
天蓋付きのふかふかベッドでゴロゴロしながら、わらわはだらしない声を漏らす。
手にはユウの記憶から読み取って再現した『漫画』なる娯楽書。
サイドテーブルには、魔法でキンキンに冷やしたコーラと、パリパリのポテトチップス(うすしお味)。
空調は快適、食事は自動で出てくる、移動の手間もない。ここはまさに地上の楽園じゃ。
「王都の連中は今頃、わらわを探して大騒ぎしておるじゃろうな」
ククク、と意地悪く笑いが込み上げてくる。
『大賢者様』『国の守護者』『生ける伝説』……。
勝手に崇め奉り、面倒な儀式や会議に引っ張り出す連中の顔を思い浮かべると、炭酸の刺激も相まって胸がすく思いじゃ。
数百年の時を生きてきたが、こんなに心が軽いのはいつ以来じゃろうか。
国を支える重圧から解放され、わらわはただの子供のように(見た目は幼女じゃが中身は大人じゃぞ?)、思う存分に堕落しておる。
「まあ、たまには良いじゃろう。世界を救う旅の付き添いも、悪くない余興じゃ」
ページをめくる指が止まらない。
この漫画、次の展開が気になって仕方がないのじゃ。
この堕落しきったバカンス生活がいつまで続くのか、それは誰にも分からない。
いや、ユウが呆れて追い出そうとするまでは、絶対にテコでも動かんぞ。
「おいナビ! コーラのおかわりじゃ! 今度はポテトフライも追加で頼む!」
返事は「了解しました、カロリーの過剰摂取にご注意を」という無機質な音声。
ふん、魔力で代謝を上げれば太ることなどないわ。
わらわは枕に顔を埋め、至福の二度寝へと落ちていくのだった。




