【四天王玄武】胃の中にブラックホールを持つ男!!
上京する前、百貨店で働いてた時にいた警備員さんなんだけどさ、食い意地にかけては未だにこの男の右に出る者を見たことがありません。
百貨店に総務課があって、その下に施設係があったんだよね。俺はそこに所属してたの。で、さらにその下に警備員などいわゆるビルメンの協力会社がいたわけ。
玄武さんで一番凄かったのは大晦日の出来事ね。
総務課の課長がすごくいい人でさ、年末年始も常駐する警備員さんの為に自腹で三段のおせち買ってあげたのね。それで大晦日24勤する玄武さんに「これ、皆さんで」って渡したらしいの。
玄武さん、そのおせち元日の朝までに1人で全部食いやがった(笑)。ご飯もなく、よく食えたよ。
それよりも一番の罪は、他の警備員におせちの事一切言わなかったの。すると正月休み終えた総務課長が他の警備員に「おせち、美味しかったですか?」って聞いてね、おせちの存在知らない警備員が「えっ?おせちって何の事ですか?」って逆に聞き返したよ。
普段温厚な総務課長が「お前らふざけんな!!」って激怒したからね。当然後々、玄武さんが犯人だと分かったけどね。
鮮魚売場の店員さんもいい人でさ、警備員さん達に4人前くらいの江戸前寿司を作ってあげて玄武さんに渡したわけよ。
次に他の警備員がその江戸前パック見た時にはもうエビ2貫しか残ってなかったらしいよ(笑)。しかも玄武さんが気を利かせたように「寿司、残しておいたよ」って言ったらしいからね。
パン屋の件も凄かったな。当時俺、クレーンゲームに嵌まってて、付き合ってた彼女がくまのプーさんのぬいぐるみ欲しがってたから何体も取ってあげてたのね。
そしたら50体くらい余っちゃってさ、百貨店で欲しがってた人達に全部それ配ったのよ。
すると配った内の1人、パン屋のおばちゃんが、お礼に毎日売れ残ったパンを俺にくれるって言ってきたからさ「じゃあ余って処分に困ったパンだけでいいので、警備員にあげて下さい」って返したのね。
それでパン屋のおばちゃんが、たまに警備員達に処分に困ったパンをあげてたんだけど、玄武さんが毎日のように「今日はパン余ってる?」って聞いてたらしいからね。さすがにおばちゃんも怒ってたよ。
飲み物の件もやばかったね。仕事上、警備員室に何度も足を運んでたんだけど、そこに冷蔵庫があったのね。警備会社じゃなく百貨店の備品だったからたまに俺もありがたく使わせてもらってたの。誰のか分かるようにペットボトルの蓋に俺の苗字書いてね。
ある時、そのペットボトルの飲料が半分くらい無くなってたからその場にいた玄武さんに「俺のジュース飲みました?」って聞いたら「飲んだよ~」って答えやがった(笑)
食べ物ではないけど車の件でコイツやべぇなって思った事があってさ、玄武さんが車検に出したらしくて俺に「ホームセンターに行きたいから車貸して下さい」って言ってきたのね。「事故らないでね」って車の鍵渡したらさ、事故らなかったんだけど玄武さん、俺の車で百貨店から180キロ離れた隣県のホームセンターに行きやがった(笑)
まぁでも面白い人でしたよ。他の警備員達からは嫌われてたけど、俺は彼の事憎めなかったな。