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帰り道
大学生、依親と千梅の日常。
バスに乗り損ね、大学までの道を歩いていた。
大学は街から少し外れた場所にある。
一本道が続くので、他にも同じ目的地へ向かう学生がちらほらいる。
この道は、嫌いじゃない。
周りは緑に囲まれ、涼しげな風が吹き抜ける。
嫌いじゃない。なのに私は、イヤホンで音楽を聴きながら、外の世界を遮断する。
そうせずにはいられないのだ。
世界にいるようで、世界にいない。
そのまま、行くはずだったのに、
すっと視界に入ってきたあいつが、悪びれもせずイヤホンを引っこ抜いた。
―依親だ。
「危ないだろ」
「うるさい」
「それよかましだろ」
依親は、私のポケットの中のipodをちらりと見る。
「ちょっと待ってよ。聞こうとして聞く音と、聞きたくもないのに聞こえる
音で、比較なんかできないでしょ。だいたいね……」
私が反論を開始すると、
あーはいはい、
と言って、あいつはいつものように、けだるげにため息をついた。