強要
アニメ「ザトー」の主人公が言った。
「俺のモノになれよ、テツヤ。」
テツヤは首をフリフリしていたが、ザトーが近づいて耳元でもう一度、
「俺のモノになれよ、テ・ツ・ヤ……。」
と言ったら、テツヤはコテンと頭をザトーの肩に乗せ、力が完全に抜けている様子。ザトーはテツヤを抱きしめ、それから……。
「はっ!」
飛び起きた。まあ、アニメの主人公が動いている時点で夢なのは当然だ。だが、非常に気分が悪い。
「どうしたレイジ。うなされてたみたいだぞ。」
カズキ兄さんが言った。
「うん、ちょっと悪い夢見た。」
俺はそう言ってのっそりとベッドから立ち上がった。顔でも洗ってこよう。
日曜日の朝だ。最近はザトーの声が耳にこびりついて離れない。ザトーの声をやっていたヤナセの顔を知らないものだから、なんだかアニメと現実がごっちゃになった夢ばかり見る。
テツヤに会いに行きたいところだが、テツヤは今日、用事があるそうで会えない。お世話になった先輩のお祝いで、パーティーに参加するらしい。
一日ゴロゴロしていたら、夕方になってテツヤのインスタがアップされたという通知が来た。ショート動画があり、黒いスーツを着たテツヤが映っていた。なんか、坊主頭でムキムキになったはずなのに、年上で背の高い先輩たちに囲まれて、なんだかとても可愛らしい。しかも、先輩にハグされて、すごく照れた仕草をしている。可愛い。小動物のように可愛い。俺もハグしたい。抱きしめて、それから……したい。
もう我慢できない。いや、我慢するしかないのだが、なんだかイライラして、むしゃくしゃして、居ても立ってもいられなくなった。
「あのさ、カズキ兄さん。今夜ちょっと、部屋空けてくれない?」
ベッドでゴロゴロしていたカズキ兄さんにそう言うと、
「ああ、いいよ。どのくらい?」
カズキ兄さんは、理由を聞かずにOKしてくれた。
夜の9時。テツヤにビデオ通話で電話を掛けた。テツヤが出たので、
「今部屋?独り?」
と、唐突に聞いた。
「部屋だよ。上のベッドにはタケル兄さんがいるけど。」
と、テツヤが言った。テツヤの部屋はタケル兄さんと2人部屋で、2段ベッドである。タケル兄さんが上で、テツヤが下。ベッドにはカーテンが付いていて、カーテンを引けば中を見られる事はない。
「じゃあ、カーテンを閉めて。」
俺が言うと、テツヤは不思議そうな顔をした。だが、俺の言葉に従って、ベッドのカーテンを閉めてくれた。それを見届けた俺は、スマホをベッドサイドの高い所に置き、ベッドに座っている自分が映るように調節した。そして、Tシャツを脱ぎ捨てた。
「レイジ、どうした?暑いの?」
「テツヤも、脱いで。」
「え……。」
ポカンとした顔をしているテツヤ。
「脱げよ。」
少し強めに言うと、テツヤはビクッとして、着ていたパジャマに手を掛けた。夏なので、Tシャツ短パンな感じのパジャマを着ていたテツヤは、上のシャツを脱いだ。俺の喉がごくりと鳴る。
「下も。」
「え……。」
「早く。」
「う、うん。」
テツヤは短パンを脱いだようだが、画面には上半身しか映っていない。
「画面、調節して。」
俺が言うと、テツヤは下唇を噛み、一度置いたスマホを手に持った。そして、横だった画面を縦にした。
「なに、するの?」
テツヤが恐る恐るといった感じで聞く。
「もちろん、それも脱いで。」
俺はそう言うと、自分も下を脱いだ。もう、ギンギンに立ち上がっている。
「レ、レイジ……。」
また、テツヤが下唇を噛んだ。そして、うつむき加減でアンダーウエアを脱いだ。
「自分で、乳首触って。」
俺が言うと、テツヤはその言葉に従った。顔が歪む。その顔を見ているだけでイってしまいそうになるが、まだ我慢。俺も自分のモノを自分で掴み、ゆっくりと動かした。
「次、下も触って。」
俺が命令調子で言うと、テツヤは素直に従った。さっきまで乳首を触っていた手は、口元を覆っている。部屋にタケル兄さんがいるから、声を出せないのだ。俺は姿勢を保てなくなり、スマホを手に取ってベッドに横たわった。画面を見つめながら、自分のモノをしごく。
「後ろも、触って。ああ、よく見えるように、スマホを手に持って、映して。」
俺も少し息を乱しながら、指示を出す。テツヤはスマホを手に持つと、仰向けに横になり、下の方を映そうとするが、足が邪魔して良く見えない。
「やっぱ、顔映して。でも、ちゃんといじって。」
俺がそう言うと、テツヤは画面を見つめた。そのうるんだ瞳と目が合うと、テツヤは、
「あっ……」
と、声を漏らした。顔が歪んで、イキそうなのが分かる。その顔を見ているだけで、イキそうに……いや、イッてしまった。テツヤも果てたようだった。画面越しに、照れたように笑うテツヤ。切羽詰まっていたとはいえ、こんな事して怒らせたかも、とイッた瞬間ヒヤリとしたが、その笑顔を見たら安心した。
「もう、なんだよ急に。」
そう言いながらも、笑っているテツヤ。
「だって、我慢できなかったんだもん。でも、乗ってくれてありがと。」
俺がそう言うと、
「なんか、思ったより良かった。レイジがかっこい声で言うから、つい言う事聞いちゃって。」
顔を赤らめて言うテツヤ。ああ、早く会いたい。本当に抱きたい。でも、今けっこう幸せ。