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サッカー観戦

 「明日の夜、サッカー観に行くんだ~。」

と、テツヤが電話で話していた。そのサッカーの試合はテレビ中継されるというので、一緒に観ているつもりになって、テレビを観る事にした。

 夕飯を済ませ、部屋のテレビをつけて試合が始まるのを待ちながら、スマホを何となく見ていると、テレビの中でウォーとかキャーとか言う歓声が沸き起こった。何気なくテレビ画面に目をやると、何とびっくり、テツヤが大写しにされていた。

「あ、テツヤさんですね。テツヤさんが友人らと共に観戦にいらしています。」

実況のアナウンサーが言った。テツヤは、流石に他の観客とは別のルートで、恐らくはVIP席だと思われる席へと入って行くところだった。歓声を受け、テツヤは競技場全体を見渡して手を振り、お辞儀をしている。少し照れたような笑顔を見せ、被っていた帽子を取ってわざわざ坊主頭を見せ、また帽子を被って歩いて行く。坊主頭が画面に映ると、更に歓声が大きくなった。

「あ、テツヤさん、髪を短く切りましたね。」

などと、実況者と解説者も笑いながら話している。自分たちはサッカーの話をするはずなのに、なぜ芸能人の話をしているのだろうというニュアンスを感じる。

 テツヤは俺の知らない友人ら数人と一緒に、観戦席に並んで座った。さっき、知っているマネージャーさんが視界に入った。この時ばかりは事務所から呼ばれたのだろう。テツヤはまだ画面に映されていて、隣の友人と談笑している様子が見える。楽しそうで、少し赤らめた顔は、むしろスーパースターではない雰囲気を醸し出し、そこがまた好感を生む。こんなに大勢に見られ、テレビにも出てしまっているのに、そんな事は関係ないとばかりに、試合が始まるのをドキドキしながら待っている感じ。多くの人を惹きつける、その容貌。その仕草。やっぱりテツヤは根っからのアイドルだな。

 それから俺は、試合を見ていた。テツヤが応援する地元チームが点を入れると、テツヤが両手を上げて喜んでいる様子がまた、カメラに抜かれていた。両隣のやつら、無名の役者だか何だか知らないが、すっかりテツヤと仲良しになり、こんな風にテレビに映り、テツヤとハイタッチしたりして、まあ何と言うか……殴りたい。

 試合が終わると、またテツヤは画面に大写しにされつつ、マネージャーさんやガードマンと共にスタジアムを後にした。ちゃんとテツヤは歓声に応えて手を振り、スタジアムを出る時には深くお辞儀をしていった。こういう場面では、お友達はテレビに映らない。多分、テツヤよりも先に出てしまっていたのだろう。やれやれ。テツヤがいつ映るかと思って観ていたから、試合に集中できなかったよ。


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