ギャップ
「それで?夕べはテツヤとよろしくやったわけ?」
飛行機に乗っている時、カズキ兄さんに聞かれた。ニヤニヤしている。
「何言ってんの。」
取り合わず、窓の外に目をやった。夕べ、愛し合った事を思い浮かべる。そして、2人でベッドに寝そべりながら、話した事を思い出した。
「なんで、テツヤは俺の声がいいって言うわけ?テツヤの声の方がずっといい声だと思うんだけど。」
俺がテツヤの方に体を向けてそう言うと、テツヤもこちらを向いた。
「テツヤの声は低くて、ちょっとハスキーでさ、しびれる声してるよ。」
「そうか?」
テツヤが目を細める。まあ、声よりもその顔にインパクトがあり過ぎるわけだが。
「お前の歌声は天下一品じゃないか。いつ聴いてもしびれるよ。」
テツヤが言った。
「それはまあ、歌手だし。」
「うちのグループのメインボーカルだもんな。」
「でも、声がいいって言ってくれるのは、歌った時じゃないじゃん。」
俺が聞きたいのは、歌声の話ではないのだ。
「ああ、話し声の方か。お前はね、声がいいと言うよりも……ギャップだな。」
テツヤがちょっと考えて言った。
「ギャップ?何それ?」
「お前は顔が甘いだろ。甘いマスクってやつ?可愛い系って言うか。それなのに、思いのほか低い声を出すもんだから、ぐっと来るんだよ。ギャップ萌えだな。」
夕べのそんな会話を思い出した。ギャップ萌えか。ということは、声がいくら良くても、渋い声で渋い顔をしていたらその「萌え」はないわけだ。それなら、ヤナセは?ヤナセは声がカッコいいが、見た目はそうでもない。という事は、これもギャップでは?萌えるかどうかは分からないが。




