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7.推理の橋掛けホシを目指せ

これまでのあらすじ

・お助けアニマルゲットに森へ潜入

・喋るイタチことティロに助けを呼ばれハジカミ参戦、和平失敗でボコられる

・ティロの話を聞きハジカミ、こいつ手がかりじゃね?と考える


各キャラクタースキル

ハジカミ:【全裸】【回復(残り一回)】

森の中を二匹の黒いイタチが歩いている。

彼らの目つきは険しく殺気に満ち溢れており、手に持った木の棒をいらただしげに振り回しながら鼻をひくつかせ、追跡する対象の匂いを嗅ぎ回っている。

「こっちですの!」

突然明るく大きな声が周囲に響き渡り二匹の視線はそちらに向かう。逆光を背にして額に宝石を付けた白いイタチが腰に手を当てて仁王立ちしていた。

「のろまなお二人さんにはバイバイです! 悔しかったらここまでおいで~ですの! おならぶう~~!」

白いイタチは舌を出しておどけるようにように尻を向け尻尾を動かし、口をすぼめて屁をこくときのような音を出す。

二匹のイタチは怒りに急かされるままに白い影を追いかけるが距離を取りながら白いイタチは木々の木陰に潜り込んで走り去る。イタチの嗅覚は鋭い、白イタチの姿が見えなくなっても消えた先の匂いを嗅ぎ回り二匹はあとを追いかける。


やがて二匹は森の開けた空間に飛び出した。

地面の草は不自然に取り除かれ、中央にうず高く積まれており、その山からぬっと人間の手首が突き出ていた。

手首には銀色に輝く穴の空いた腕輪が嵌められており上空からの日差しで不気味な存在感を醸し出していたが白いイタチは一目散に駆けていく。その後を追いかけるように二匹のイタチも山を駆け上っていく。

「チェンジ!」

二匹が白イタチに手に持った武器を振りかざそうとした瞬間、白イタチは額についていた宝石を外し手首の腕輪にはめ込む

異変は突然に起きた。積み重なっていた草木が爆発するように吹き飛ぶ。木の葉と枝が舞い散る中飛び出してきたのは一人の人間、それも真っ白なウーパールーパーの顔面をした半裸の男である。

「チェスㇳーッ!!」

二匹の小さい脳が状況を理解する前に現れたウーパールーパー怪人が二匹の首根っこを掴んでお互いの額にぶつけ合う。

ガキンッ!と鈍い音を立てて石と石がぶつかり合う大きな音を上げ、二匹はそこで気絶した。



二匹の黒イタチががっくりとうなだれたのと同時に俺の前に二つのウィンドウが現れる。

『アイテム【お助けアニマル】を手に入れました』

『お助けアニマルは重複して持つことができません、重複したアニマルは消滅します』

ウィンドウがポップアップするともう片方の黒イタチが光の粒子になって消失する。アイテムインベントリを開いて中の説明を確認する。


【お助けアニマル】

消費アイテム。プレイヤー一人につき一体まで所持可能。

使用時プレイヤーは3つのスキルのうちいずれかを交換できる。

【攻撃力上昇(弱)】

【防御力上昇(弱)】

【回復】


プニのおっさんの説明と同じ内容をざっと確認し俺はウィンドウを閉じて周囲を跳ね回っているティロに話しかける。

「作戦は成功したみたいだな」

「あの二匹をこんなにあっさり倒しちゃうなんて……モンスター人間様流石ですの!」

「いや~それほどでも。あと俺モンスター人間じゃなくて普通の人間だから、名前ハジカミっていうから」

「ハジ様! 私今日のことは一生忘れません!!」

「おうおうそいつはいいねえ、だけどお前明日から一生どうやって過ごすの? お仲間二人いなくなったけど?」

「あ……」

言葉に詰まるティロと視線を合わせるようにかがみ込んで、俺はあえて超優しげな声で囁きかける。

「いや~、同族殺しの罪は重いぜ~? お前がぶっ殺したとわかったらあの黒イタチたち棒切れどころかナイフや拳銃持ってお前のこと血眼で探すだろうな~~~?」

「わ、私ったらなんてことを……!」

本当は時間が経てば戻って来る上に記憶はなくなるがそのことは黙っておく、ことの重大さが飲み込めたのかティロの顔面が真っ青になりパニクったのか自分の尻尾をぐるぐると追いかけている。ねずみ花火ならぬイタチ花火になったティロを掴み両手で持ち上げ、立ち上がって視線を合わせる。

「そ・こ・でだ。お前、俺と一緒にこないか? 俺もあいにく一人旅で連れが欲しくてさ~、まあ共犯ってことで仲良くしようや」

「一緒に旅……?」

「そ、世界の果てを目指す大冒険! 見たことない絶景にうまい食い物! モンスターとのスリルのあるバトルもちょっとはあるがこの俺がいりゃ楽勝よ!!」

「世界の果て……、ハジさま! 私もついていきます!! ついていかせてください!!」

そういうが早いかティロは短い手足全体を使って俺の手にしがみつき巻き付く。ふさふさの毛が肌を撫でる様子を見つつ、チョロいな、と俺は内心でそう呟いた。


今俺の手にじゃれついている白長毛玉ことティロについての俺なりの推測をまとめておこう。

こいつはざっくりというと『スキルスロットを一つ持った中立NPC』だ。

本人(本イタチ)によるとスキルが使えなくて仲間に追い出されたそうだが、額の半球状のカプセルにスキルを装着することができる。なので俺の【全裸】をティロに装着して俺の【全裸】を解除。服を着れる=草木によるカモフラージュ可能な状態にしてちぎった草に埋もれて隠れる。二匹が近づいたところで【全裸】を再装備、すると森に潜入する前と同じように身に着けていた木の葉が吹き飛んでさっきの状態になった、ということだ。

ついでに言うなら【全裸】を装備したティロに適当なツタをまとわせたら吹き飛んだのでスキルの効果も発動するらしい。ティロの発言を聞いた限りだとお助けアニマルは日頃自分のスキルを使っているようだから条件さえわかればスキルを使っての戦闘もできそうだ。

またアイテムとして捕まえたお助けアニマルは重複分は消滅する。俺が黒イタチを捕まえたときもう一方が消えたから確定済みの事実。しかしこいつはピンピンしている、つまりティロはアイテムとは別の存在、自立思考をもったNPCだ。


人の言葉を理解して使うなら人に近い思考形式をしているはず。というわけで俺はティロに一枚噛ませるかたちで黒イタチを倒し、口先三寸で言いくるめて旅のおともをゲットという作戦を実行した。

そこまでしてこいつを手に入れた価値はあるのかって? ある、めちゃくちゃある。

このゲームはお互いのスキルを読み合うクソデカじゃんけん大会だ。じゃんけんで全員グーとパーしか出せない状態でチョキ使えたらどうなる? そいつの無双して景品ごっそり持って帰って終わりになる。

バトル以外にも【全裸】や【下痢】など交換以外で解除できない変なスキル手に入ったときの押し付け先にもなるし、敗北時にレアスキルを隠す倉庫にもなれる。


そう、こいつはスキルの保管場所にもなれるのだ。

俺に変なスキル渡してきた黒ローブだがプニのおっさんはプレイヤーは一人二つのスキルしか持てないと言っていた。二つしか持てないはずなのに倍の数持てた謎がティロ同様スキルスロットを持ったNPCがいるとわかれば解決する。


俺にあったときの黒ローブは一人じゃなく複数人いた、つまり構成としてはこうなる。

黒ローブ:【爆破】【ワープ】

アニマル1:【下痢】

アニマル2:【全裸】


引っかかるのが【全裸】スキルを持ったイタチが黒ローブの下にいたなら服が吹き飛ぶはずがそうならなかったこと。

それについては俺が全裸ウーパールーパー怪人として現在君臨している事実をかんがみると、おそらくあの黒ローブは俺の仮面同様に破壊不可能の呪い装備なのだろう。もしかしたら仮面もおそろかもなハハハ。

黒ローブの下の全裸ウーパールーパー怪女を想像し変な笑いが浮かんできたが今はそんなことを考えている場合じゃない。


つまり黒ローブについてまとめるとこうだ

・黒ローブにはフリースロットのNPCが二体ついている。

・あの黒いローブは俺の仮面と同じく呪い装備で簡単には脱げない、ゆえに超目立つ。

・また探そう、と言っていたあたり黒ローブは呪いを解除する方法を探している?


あの黒いローブで店や宿に入れば推理漫画の犯人ぐらい店主の記憶に残るだろうしあちこちで聞き込みを続ければ足取りを探せるだろう、俺はそう結論付けティロに話しかける。

「んじゃこの森抜けていったんセントラルに戻るか、プニのおっさんにも聞きたいことが……」

「ちょっと待ったーっ!!」

背後から突然大きな声が聞こえ反射的に振り返る。


「その白い御方を、この私にお譲りいただきとうございますわ!!」

というのは筋骨隆々なモヒカンヘアーの汚物を消毒しそうな世紀末マッチョ。

「お嬢のいうとおりにしな! そのイタチ渡さんと痛い目あわしたるけえな!!」

というのは、金髪ツインテドリルロールの白ドレス着たロリ。


変なのが現れた。

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