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暗転世界


暗く落ちた世界。

周りは先ほどと違い誰もいない。

声もしない

光もない

だけど目の前の人物は知覚できる。


目の前にはアサガオさんがいた。


「かなり頑張っていたわね」

アサガオさんが褒めてくれる


「ありがとうございます。結構楽しい時間でしたよ」

俺は誇らしく胸を張って返す。


「これは笑うべきとこ、それとも悲しむとこかしら」


「笑えばいいとおもうよ」

ついつい調子にのって返す。


「クスクス。面白いわ。常に予想の外ね。」


「アサガオさんも楽しそうで良かった。アサガオさんも疲れませんか?」


「どうかしらね。安井はどうなの?」


「俺は疲れました。長期の有給休暇が欲しいです」

いままでブラックな環境でしか働いたことがないので有給をとったことがない。俺の夢の一つは有給休暇で彼女と旅行にいくことだ。予定はありがたいことに予約済み。

そう思うと早く帰りたいと気持ちになる。


「ならずっとバカンスの世界を素直に創造したらどうなの?」


「そんなのは正直めんどうです。良ければアサガオさんに譲ります」


「変わってるわね。元の世界にもどっても理想なんてないわよ」


「理想なんてものは実現すれば生活の一部で誰もありがたみなんて感じなくなります。そこから更に理想を追いかけるなんて俺には無理です。それならささやかな夢を叶えます」


「でも、いい夢を見てたじゃない」


「・・もしかして内容を知ってるんですか?」


「ええ、拝見してたわ」


「アサガオさんて何者?」


「ここではアサガオではないわ」


「ここでは違うとは?」


「アサガオ、日の世界での顔だから朝顔と適当に名乗っているの。今は暗闇。明けることのない夜は別の顔なの」


「え~つまり夜はヨルガオなんですか?」

言葉遊びなんだろうか、適当に答えた。

正直アサガオさんのことは、あまり知らないがこの世界に来てから少し様子が変だし。別人、とかアサガオさんをベースにした架空の人物なんだろうかと疑念がある。


「そんなものね。名前に意味なんてないわ。カオスなんだから」


「カオス、混沌ですか」

カオスといえば誰かに聞いたことあったような。なんか長話だったかな。いや、この場合カオス理論みたいな話だろうか、うむ。よく分からん。


「そう。混沌。今の状況と一緒、だれかが形をつくらないと終わらないわ」


「別に今のままでよくないですか?」


「それだと、あなたも、このままよ」


それは嫌だ。

なら考えよう。

落ち着いて話を整理しよう。

覚えてるかぎりでは

始まりはヘパイストスさんの神器、ベェーナスちゃんのお披露目

次にベェーナスちゃんの聞き取り

ゲーム大会?

願望の夢?

白い世界にて欠片集め

反転した世界で欠片になった人との対話

そして暗闇の世界にてアサガオさんと話している。


アサガオさん、本当に本人かは確認しようがないからここは仮としよう。

仮アサガオさんは、よく分からないが俺に世界を構築しろと言う。

おそらく欠片を集めてパズルのように一つの形にしろということだろう。

なぜ俺なのかは、ここは少し思いつくことがある。

ヒントはゲーム中に聞こえたヘルメスさんの声

「・・オレだけが覚えてる。そして繰り返される。終わらず続く」

‘繰り返す‘

あの時は意味が分からなかったが、きっと先に同じ目にあったんだ。

つまり、みんな経験している。そして、たまたま俺のターンになったということだ。

そして正解を引かないと終わらない。多分これは正解を見つけるゲームの続きなんだろう。

そう考えると少し見えてくる。

俺がここで世界を創っても、いつかは終わる。ゲームを管理しているベェーナスちゃんの納得する答えでなければ、


ーー違う人物の番になる。


そのあと俺が他の欠片になって恥ずかしい願いを言うんだ。

いや違う。言っていたんだろう。

だから司会進行役の仮アサガオさんが俺の夢を知っているとのことだろう。

そう考えると腑に落ちる。

では戻るのに最善の手は皆が納得する世界。

だがこれは無理だ。

少なくとも俺には答えがない。

それが俺の答えなら、その答えに納得してもらわないと

なら対話だ

誰と?

ゲームマスターといわれた人物、少なくともベェーナスちゃんではない。

残るは


「アサガオさん、いや、ここではカオスさんですかね。ーーカオスさん何を求めますか?」


「初めての経験だわ。人間に聞かれるの。結構いいものね。」


「では教えてもらいますか?」


「私の希望は、そうね、とりあえずベェーナスちゃんとやらの希望の実現された世界をみたいわ」


「それの答えの正解かは誰が判断するんですか?」


「  フフ。誰かしらね。」


「幸せはどう考えます?」

はぐらかされた。なら切口を変えよう。


「分からないわ」


「では言い方を変えます。一番幸せを感じてる人は誰だと思います?」


「クイズに興味がないわ」


「それは一番幸せだと今、思ってる人です。それが一つのパンを荒屋で食べていたとしても」


「それは哀れな人ね」


「一番不幸な人は不幸だと思ってる人です」


「詭弁ね。それは自分を欺いてる。もしくは知らないのね。他人の世界を。なら教えてあげればいいわ。もっと素晴らしいい世界をね。きっと、より幸せを追求するわ」


「そうかもしれません。ですが他人の幸せを知って、その人が幸せになるでしょうか?」


「選択肢がないなんて可哀そうよ。他を知らない無知も罪よ。教えてあげないのも同罪」


「無知は罪かもしれません。しかし最初のパン一つで幸せを感じた人が過去に色んな栄華、栄光、贅沢を知った後に、結果そう思ったらそれは無知でしょうか?」


「哀れな人ね。そんなパン一つに喜ぶしかない落ちぶれた人なんて」


「ええ、仮定の話ですが哀れかもしれません。ですが無知からくる幸せではないです。」


「そういうこともあるかも知れないわ。否定しない。私からしたら落ちぶれたりしない人生が幸せだと思うわよ。その人にとっても世間的にもね」


「俺もそう思います。ですが栄光も没落も平等に機会があるべきなのが公正です。」


「それで何が言いたいのかしら?」


「例え話ですが無地の完成したパズルがあり、それにワインをこぼして均等に全てのピースを染め上げることが出来たパズルが理想の世界だとします。ですが次にワインをこぼしたら溢れることが決まっているとしら、それはどう思いますか?」


「質問だらけね。私は綻びのない完璧な世界を見たいの」


「完璧な世界は出来ます。ですが、それは止まった世界です。最初のパン一つで幸せを感じれた人がたとえば人生最高の時にパン一つで幸せを感じたでしょうか?きっと感じないでしょう。逆に何一つ持たずに生きてきた人は全てを得た時に無常の幸せを感じるでしょう。幸せは環境の変化、本人の変化で変わります。たとえ、今他の人の願いを叶える世界を創生できても次は違うことを願うでしょう。」


「なら、その時叶えてあげたらいいじゃない。それができる力があるのよ」


「人の気持ち、いえ、生きとし生けるものは常に環境に合わせて願いがかわります。だから、その都度叶えるなんて、そんなことはしません」


「なら、あなたは何をするの?」


「対話です」


「誰とかしら?またみんなと話すの、飽きないわね」


「対話とは自分との対話です。自分と正直向き合うのは怖い。怖いから他の人に憧れる、恐れる、妬む。自分という世界に満足、ーーいや理解しようとしないなんて無理がある。そんな弱い人間が他の世界創生なんてダメですよ」


「じゃあ悪人が世界を創ってもいいの?その人以外は全部不幸になる。それを止められるのがあなたしかいなくても、それをしないのかしら。目の前に悪の行為が行われようとしていて自分は止める力があるのに振るわないのは同罪よ」


「ですから結論は世界を創生しない。いえ、元の世界が一番理想に近いから変えないです」


「滅茶苦茶、でたらめね。今の世界にみんな不満があるのに今が一番理想に近いなんて」


「理由がないわけじゃないです。皆の願い、声を聞きました。

”私をわかって欲しい”

”あなたを分かりたい”

みんなが望むのはそんな声が多いです。

皆が分かりあえばいい世界です。」


「なら、そうしたらいいじゃない」


「まだ早いと思ったんです。そこは自力でしないと今の世界にはそれができる可能性がある。

だから変えない。

世界構築を望まない。

人は成長する。

世界も成長する。

育つ過程、育った過程が大事。

未来を大切にしたい。

経過なく完成しているのは価値のない意味がない綻びのない完成したパズルでしかないんです」


「パズルが揃ってるから絵になるの経過なんてとどめることない過ぎた過去よ

何を言ってるのか理解できないわ。」


「完成した絵は別の変化はできない。未来がないんです。未来はイレギュラーを超えて決断をされた先にあるとおもうんです。それを内包してないなんて救いがない。色々言いましたが一つ言えるのは今いる世界は好きなんです。そこに助けを求める人も。困ってる人もいる。いまのところ救いきれない人がいる事実があるのも知ってるけど、悪いもんじゃないとおもう。」


「それが答え?」


ーー納得いかないわ


「欲望は果てしないです。

声を聞いても限りがないんです。だけど満ち足りることはできる。その最低限の満ち足りるをしるのは

自分をしる。

他人に知ってもらう世界。それにはプロセスがいります。だから不完全な世界ですが、これが正解の一つだと」



「面白くないわ。さっきから全部予想外

世界も作らない。未完だからいい。過去が大事。

変わらない。変えないなんてものは、ここにきて一番面白くないわ。私は貴方が望む変化は全て肯定するのよ。そして全て叶う。そして叶った先の心の嘆きからの試行錯誤が見たいの。そこにきっと私が待ち望む光があるから」


「カオスさんの望む光とは、もしかしら覚えてないだけでカオスさんが自身で潰したんじゃないんですか?」


「どおいうこと・・」


「完璧な世界はいつか必ず崩壊します。カオスさんは一度創生した。それを創生した後に失敗に途中で気付いて誰かにその答えを求める現在に至る可能性です。」


長い沈黙が流れる。

先程まで常に微笑を張り付けた仮面が無表情になる。

「ーーやはり、安井には世界を無理にでも創生してもらうわ。

過去にそこにヒントがあるのね。貴方が甘い夢に浸らない理由。それが分かればあなたは夢に夢中になる。

そして世界を求めるわよね。


さあ、過去を見せてもらえるかしら。

そして私に求める光の筋をみさせて!」



世界が変動しようとする。



『権限者の判断に不正に介入しようとしています。そこの介入は公正ではありません。正義を執行します。』


べェーナスちゃんの声が聞こえる。



世界にヒビが入る。





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