世界のピース
「お目覚めね。この場合、おはようかしら」
意識が戻ると先ほどの宇宙のような空間に戻っていた。
目の前には声の主。
全ての事情を知っているかのような澄ました態度で立っている。
その態度に少し苛立ちがたった。
「アサガオさん、なにがどうなっているんですか?分かりますか」
俺は夢見が悪くて少し頭痛がするが混乱する事態を把握しようと努める。
「いい夢をみれたかしら?」
アサガオさんは表情ひとつ変えず尋ねてくる・
「ええ、砂糖いっぱいで胸やけするぐらい、いい甘い夢をみましたよ」
少し腹立ちまぎれに皮肉で答える。いかん八つ当たりである。だが甘くていい夢をみたのは事実だ。ただ俺には自分の成長の無さを見せられてるようで嫌な気分を引きずっていた。
「甘い夢をたくさんみれたのね。良かったわ」
俺の質問に答えず微笑で話す。
「ここは、どこなんですか?」
質問を変えてみた。
「ここは何もないけど、すべてがある場所よ。」
「とんちですか?すいませんが俺はこおいうは疎くて、わかりやすく答えてもらいます」
苛立ちが増しているのが自分でも分かる。先ほどの夢の残滓のせいだ。ーーそういうことにしておこう。そうじゃないとアサガオさんに自分の無学で角が立つ。
「先ほど見た夢が現実になるとしたら、どうしたい?」
「・・どおもしないです。夢は夢ですから」
「
『お好きなピースを埋めなさい』
母親は誰がいい?
父親は?それともいないほうがいいかしら?
兄弟は欲しい?何人かしら?
姉は誰がいい?
兄は?
隣に綺麗なお姉さんはどう?
幼馴染はどんなのが希望?
いつの時代がいい?
ファンタジーな世界、神々が全盛期の時代、逆に未来のアンドロイドがいる時代でもいけるの?
好きなピースをはめて始めなさい。
あなたが人の希望を聞くの
誰かの願いを叶えるのも、踏みにじるのも自由
だって貴方が基準点
貴方がルール
貴方が決めたことが正義
そして絶対の存在が決めたことこそ世界には公正
生物の進化なんて待たなくていいの。
文化の発展もね
時代は現代、令和
そこからスタートなら
全ての始まりは令和から始まるの
過去は貴方が意識されたとき辻褄合わせがされる。
貴方が望んだ瞬間世界ができる。
つまり世界創世なのよ
この瞬間がね
「俺は世界創生になんて興味ないです」
「でもこれアナタ 10092回目よ」
?
え、一瞬耳を疑う。
「このやりとりもね」
!!!
俺は戦慄が走り。血液が止まるような錯覚を味わう。
「フフフ。嘘よ」
全てを見透かしたような瞳で笑う。
「だけど、意識しないと、そうなるわ。
これは私なりの好意からくる警告。
私は久しぶりに創生に立ち合ってるの
もう少し楽しませてね
悩みなさい
あなたの永遠に思える悩み、葛藤も一瞬なの
でも私は納得するわ
ここに創生の卵のオリジンの力と世界創生を補佐する神器がある。
伝えたいルールは一つ。
ーー貴方が世界の中心ーー
貴方が望んだ瞬間世界は生成される
貴方が生まれた国、星が始まり
外の国。外国を考えれば外国が作られて
宇宙を考えれば宇宙が生成される
そこで貴方が意識せず、つくられた法則は貴方にも適用される
そして貴方が亡くなるまで世界は続く
貴方が望めば世界は終わるし続きもする。
あなたは唯一神 」
意味が分からない。
なんでアサガオさんがこんなこと俺に言うのか
ここはどこなのか?
みんなどこに行ったのか?
この光の欠片がそうだというのか
だとしても理解が追い付かない
思い返せ
冷静になれ
始まりは・・確か、ヘパイストスさんの神器、そうベェーナスちゃんとやらのお披露目をしたんだ。
それから聞き取りをして・・なんか言ってたよな俺偉そうに
それでゲームをして、なんかここにいて
ほんと質の悪い夢を見ているようだ。
よく考えよう。これが夢なら問題あるが問題ない。なぜなら夢ならいつかは目を覚ましてくれるから、
しかし、これが夢ではない場合だ
どんな状況でこうなる。
さっきアサガオさんが神器と創生の卵といっていた。
つまり誰かがまたアレスさんのように持ってきていてベェーナスちゃんと混じって暴走的なことが起こってゲーム世界から俺だけ抜け出せないとか、そんな事態・・・ありえるかも。
だとしたら目の前のアサガオさんは何なんだ?
俺は落ち着いて光の欠片に再度触れてみる。
「お金持ちになりたい」
「自分の足で走れる人生がいい」
「子供が欲しい」
「自慢の親が欲しい」
「一生をかけれる趣味が欲しい」
「親友が欲しい」
「美しいと言われたい」
「愛する人生が欲しい」
様々な願いとともに望む刹那のドラマが俺を通り抜ける。
「人の望む願いのピースを当てはめて理想の世界を創ってみるのはどうかしら」
俺は無視する。
「気に入らないの。何もかも忘れて私と甘い夢でもどう?」
アサガオさんは蠱惑的な雰囲気を醸し出す。
間違ってる
間違ってる
いや
失敗した
失敗した
ベェーナスちゃんの考えに伝えた答えは間違いだった。
いや聞き取りを失敗した。
俺が知りたいのは望みじゃない
俺が聞きたいのは、そんな誰もが望む願い希望じゃない
なぜ、それを望んだのか、
望むしかなかったのか?
そおいう
根源の悩みと想いだ
それがわからないと
皆が望む
平等で公正
正義を執行などという絵空事から離れていく気がするんだ
「ベェーナスちゃん、これだけでは足りない!」
声を張り上げて叫ぶ。
「べェーナスちゃん皆の声を聞かせてくれ!」
俺は虚空を睨む
「それを望んだみんなの葛藤の元がしりたいんだ!」
再度お願いする。
「無駄ね。ここは世界構築に至る全てが入り混じるカオスな場よ。素直に欲望に従ってピースをあてはめたら」
「べェーナスちゃん君の求める気持ちはそんなもんじゃないだろう。俺と一緒に聞いていこう」
『分かりました。その思い理解します。皆への聞き取り受理します。』
「ベェーナスちゃん、ここはあなたの番じゃないの」
全てがひっくり返るように俺の体が回転する。
いや、俺だけじゃない、これは・・。
世界が反転する。
「?!私を置いて舞台が変わるなんて・・