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破片


暮れなずむ町の陽が沈んで街の灯がつこうとしてる時間帯


私は一年で一番好きな時期の好きな時間帯に心の中で口笛をふきながら土手沿いを仕事帰りにゆっくり確かめるような足取りで歩く。


「先生さようなら」


「先生また明日」


ゆっくりと歩く私を自転車の生徒が追い抜いて、声をかけてゆく。


私の好きな言葉、「また明日」

自然と笑みがこぼれる。

幸せだな。


なりたかった先生という仕事


生意気だけど慕ってくれる生徒達


下町情緒が残る街


詩を歌いたくなるなるような風景


夕日が最後の輝きのように輝き。離れた鉄橋に電車が走る

電車の駆け抜ける音が遠くから聞こえ、土手沿いの住宅から生活の音が聞こえる。

耳を傾ければ大好きな焼き芋を売る声が聞こえる。

食欲をそそられる。少し詩的じゃないけど、これも趣よ。

あとは子供たちが野球をしている声がきこえる。

つまり、あれよ。

そう、雰囲気、青春の匂いよ。


先生になって本当に良かった。


今の学校に勤続になってからの日々を思い返す。



◇◇◇◇◇◇



ガッシャーン!!


学校の窓ガラスが生徒によって割られる。


いかにも不良とおもわれる見た目の生徒が金属バットで割ったのだ。

理由は先生に煙草を注意されたことに始まる。


「先生よ。あんたが大人だからって偉そうに言ってんじゃねえぞ!」

生徒が凄む。

「おまえは何をしているのか、分かっているのか!大人とか関係ない!社会のルールを守れんならでていけ」

凄まれた先生は眼鏡を押し上げながら対抗するが、傍から見ても腰が引けていた。

「何って、窓ガラス割っただけだろ」

生徒はあくびれなく告げる。

「割っただけとはなんだ!貴様なんか、停学だ!親を呼び出してやるからな覚悟しろ」

その態度に注意した先生は激高して吠えた

「はん、勝手にしろ!」

そういうと不良生徒は大きなガリまたで歩いていく。

「社会は甘くないんだ。このままだと貴様なんか社会のゴミだ」

注意した先生は行き過ぎた言葉をいって去っていく。




私は学校にきて初日に、その様をみせられていた。


「  先生、恥ずかしいところをお見せしました。残念なことに、これが、この学校の姿です」

私の横に並び学校案内してくれてる先生が先程の場面に説明してくれる。


学級崩壊が騒がれる昨今、どこの学校も不良といわれる生徒達に対応が困っていた。

本来、私みたいな新米先生が配属されるべき学校ではなかった。けど私みずから、この学校を希望した。

理由は憧れの先生がいたからだ。

憧れの先生は今、なんと私の目の前にいて学校を案内してくれている。私は運がいい。しかも先生の担当するクラスの副担当である、本当についてるわ。


「いいえ、新八先生、恥ずかしくないです。校則を破る生徒に注意していた場面なのですから」

私は目の前の憧れの先生に答える。


「   先生は若いのに肝が据わってますね。あ、女性に肝が据わるなんて失礼ですね」


「いえ、私、ホントは驚いてたんです。普段大きな声や音なんてきかないですから」

私は怖がる素振りで答える。


「実は  先生、私も怖かったんです」

新八先生も怖がる素振りをしている


「新八先生も怖い事あるのですか?」

新八先生の意外な返答を聞いてみる。


「どうしても荒れた生徒達と接していきますからね。彼らは若い。自分らと違い、怖いもの知らずです。そんな彼らに接するのです。とても怖いですよ」

新八先生は遠い目をするように話す。そこに私は興味を惹かれる。


「怖い目に遭われたのですか?」


「ええ、何度も遭いました。私の身勝手な言動や上から押さえつけるような教育の教えで、道を踏み外した生徒達がいました。先生は生徒達にとって身近な人生の師でないといけないのです。教育の仕方一つ間違えると、下手したら、ささいな発言で人生がガラリと変わるんです。だから怖いんです。自分の言動一つが、・・・すいません初日に変なこといいました。ただ知っておいて欲しかったんです。先生になられた以上、生徒の未来にかかわるのだと。すいません言いすぎました。・・・さあ次を案内します。」

新八先生は話過ぎたとおもい先頭を足ばやく歩く。


uhohohohohoho!!

イエーーーー!!!

流石だわ。

これよ、

これこそ憧れの先生よ。

不良の暴力を目の前でみていて怖いのは自分の言動なんてセリフを新任の教師である私に伝えるなんて最高よ。最高。これこそ、この学校にきたかいがあるわ。

心の中は騒がしく鐘やサイレン、チャイム色んなものが音を立てている。

イケない、ここで変な子と思われてはいけない先生についていかないと。


「新八先生、あの先ほどの生徒、このままいけば停学ですが、いいんですか?」

足早に歩く先生に追いつき、先ほどの生徒について聞く。


「先ほどの生徒は二年A組の鈴木大地君、家庭環境は両親が離婚調停中で現在いろいろ揉めてるようだね。鈴木君も去年まで頑張っていた野球部を辞めて荒れているんだ。ほおっておけないかな」


「えっ、新八先生は担当B組ですよね。違う組の生徒の事情も知っておられるんですか?」

驚いて確認する。


「当然といいたいけど、うちの担当する生徒に野球部の子もいてね、その子から事情をきいたりしていてね。クラスが違うからあまり自分も口出し出来ることがなかったけど、停学は免れないだろうから、明日でもお家に伺うべきかなと思っている」


「先生、そのときは私もついていっていいでしょうか?」

違うクラスの子の心配を当然のようにして家まで伺うといっている先生。素晴らしいわ。是非一緒にいかないと。


「   先生。あなたは、、まだ副担当です。そこまでする必要はないです」


「新八先生がいかれるなら学びたいんです。是非教育を」

私は尊敬と使命感が混じった眼差しで逃さない。


「やれやれ、思われるようないいもんじゃないですよ」


それから私達は鈴木君の家を訪ねた。

語るのは

元祖青春学園物の定番が始まる。


両親の喧嘩で家にいるのが嫌になり煙草を覚え

煙草が見つかり野球部を退部、そのあとは自棄になり家庭内暴力を振るう鈴木君

それを見た新八先生が毎日学校帰りに指導で家に通う日々

鈴木君が煙草を止めれるように毎晩つきあっていた。

そんな行き過ぎに感じる行動に鈴木君のクラス担当は越権行為だと教頭に訴えた

話は学年の教師達を巻き込んでの話になったが新八先生は引かない


「生徒はね全部同じリンゴじゃないんです。ひとつ。ひとつが別々の種なんです。腐ったリンゴじゃないんです。ただ違う植物だから。同じやり方をせず別々の教育方針があってもいいじゃないですか!担当なんてもので目の前の生徒が困っているのを放置するんですか。教師を選んだときからみんな同じ志をもつ仲間じゃないですか」


憧れの先生の言葉は私の心を貫いた。

そうよ。

教育はこうあるべきだわ。


先生の熱意ある説得で、校長が越権は今後控えてください。やりすぎないようにと言われて会議がおわるが引き続き鈴木君の矯正を続けることができた。


そのあと煙草を止めた鈴木君が野球部顧問に頭を下げて部に復帰。

息子の荒れた様子をみていた両親は仲を取り戻すことになる。


赴任初日からそんなドラマをまじかに体験できたのだ。


それからも波乱、トラブル、揉め事はたくさん起こる。


だけど新八先生は、その都度、熱く語り、時には涙し、許せない不正行為には鉄拳をぶちかました。


そんな熱い時間、気がつくと、たくさんの事があったが二年経ち。

クラスの子は卒業。

私は卒業する生徒達を自分の事のように感動して涙した。


そして一番の別れ


憧れの新八先生が違う学校に移る時が来たの


「新八せんぜ~え!私、、もっと一緒に学びたいです」

私は流れる涙をふりまきながら先生に抱き着く


「なに言ってるんですか。先生はもう一人前です。もう私と同じ生徒の事を第一に考える同志です。」

抱き着く私の肩を優しく持ち、ゆっくり引き離し目をみて話される。


「そんな、私なんてまだまだです~」

そんな優しさがたまらなくいいが、まだ甘えたい


「私は先生にかなり助けられてます。きっと先生がいなければ解決しない問題がいくつもありましたよ。だから、まだまだなんて言わないでください」


「新八先生」


「   先生これからの上之手学校をよろしくおねがいしますよ」

右手を私の前に差し出す


はい!

私は力強く握手を交わす



学校帰りの土手沿い


そう私がこれから生徒たちと歩む

熱い青春、スポーツ根性物語が始まるのよ!!


見ていてください新八先生


私かならずやり遂げて見せます!!



新人教師の熱いドラマが始まる








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