最初の報酬
俺は妻ヘラさんを褒め称えるゼウスさんを羨ましく思いながら話しを聞いていた。
「ゼウスさんは良い妻を持ち幸せなんですね。奥さんに一途なんですね」
「んん・ああ思いは、いつまでも変わらずヘラ一途だぞい!だが男は常に色んな花を愛でる精神を忘れちゃいかんがのぅ」
少し答えに不穏な感じを感じた俺はこの件は追及するのはやめる事にした。
どうやら奥さんがらみも話がややこしくなりそうなので避けていた子供の話にする。
だが個別に聞いても仕方ないので大きく聞くことにしよう。
「では、話は変わりますが、ゼウスさんはお子さんたちに仕事を任せているとおっしゃってましたね?
その際、ゼウスさんはお子さん達の話に耳を傾け、理解する努力をして褒める事はちゃんとされていますか?」
俺は夢の中とはいえ体感長時間に感じてる為少し疲れを感じている。夢なのに疲れるらしい。
仕方ない、あまり良くないかもしれないが話しを俺なりに纏めに行くことにした。
「当然話しは毎回定期の集会の時聞いておる。だが奴らは言い訳ばかりで聞くに耐えん話しばかりじゃ」
「なるほど話は聞かれてるのですね。では話しは個別に理解されてるのですね」
「理解か当然じゃ儂は全知全能だからのぅ」
ゼウスさんは誇らしげにいう。
全知全能なら悩まないのでは、とおもうが口は挟まない。
もしかしたらジョークでツッコミ待ちかもしれないが肯定していこう。
サクサクいかねば
「勿論ゼウスさんは全知全能だと思います。ゼウスさんは子供達が上手く行かないことは理解されてますが、理解したうえで何故上手く行かないのかは聞かれましたか?」
「上手く行かないのは当然子供達が仕事を怠けてるからじゃ、でなければ傲慢なのか」
「なるほど怠けてるか傲慢かと考えられてるのですね。理由を教えてもらって良いですか?」
「傲慢と考える理由か、それは上手く世界が成長しないのは全て他の眷族や世界の人間のせいにして責任逃れしている。それを認めようとしない。更に眷属や世界の人間に任せきりにしてる事を怠慢と言うのは当然じゃ!」
ゼウスさんは少し言葉に熱が篭る
俺はこの件は難しく考えない事にしよう。
どうせ俺の夢である。難しいとこは考えてるようで細部の話になれば夢も決して考えれないだろう。俺は勉強を学んでいるが勉強途中で難しい話なんて対応できない。まだ具体的な話や技術はそこまで学んでいないのだから。
だが俺の夢である答えはあるだろう。
つまり今の俺に出来ることレベルに考えると、この件はゼウスさんの考え方に問題があるという結論である。
この考え方は暴論であるがゼウスさんの何か考え方や思いの一つを変えるアドバイスをするのが今回の正解と考えた。
その為に追求する事にした。
「なるほど、仕事を託された子供達は結果をうまいこといかないのは部下のせいにして話が進まないんですね。つまりゼウスさんの子供達への悩みは他者への傲慢と怠慢からきてるという考え分かりました」
そのまま言葉を続ける
「流石は全知全能のゼウスさんです。子供たちの仕事でのことを理解されてるんですね。ですが話し伺うかぎりでは子供達はゼウスさんの様に全てが見えるわけでもわかるわけでも、なさそうですね?」
「勿論儂は全知全能だからの全てわかる。だが子供達は違う皆強みはあるが全ては見えないし、分からない。だから悩むのじゃ、そして悩むべきべきじゃ」
「悩むべきですか、いい言葉ですね。話を聞くと、お子さん達はゼウスさんには及ばないですが、皆違う強み個性があるのですね。素晴らしいですね。うらやましい事です。それら強い個性を活かす様お話された事はありますか?」
「‥‥‥‥」
ゼウスさんは少し沈黙される
何か言おうとしてか少し過去を思い出している形だ。
本当なら相談者が沈黙された時は本人の思考が纏まるのを待ちアドバイスするべきだと、この前学んだが俺は夢の中で眠くなってきたので答えを待たずに話し続けた。
「ゼウスさんの考えは分かります。子供達の成長を促す為、本来は子供たちが自分達で試行錯誤すべきです。そのうえでゼウスさんに意見を求めるなどすべきでしょうし、一部はされてるかもしれませんが、ゼウスさんは満足してない。ですのでゼウスさんの方から道を示す時期かも知れませんよ」
ゼウスさんは思考顔からこちらを見つめる
「ゼウスさんは親父さんと何かあったみたいですが差し出がましい事を言いますが・・」
俺は少し言葉を溜める
次に発する言葉は相手を揺さぶる言葉をいうつもりだ、俺らしくない、普段の俺ならいわないが夢だからこそ相手が嫌がる言葉でも正面から行ってみよう。
覚悟を決める。
「ゼウスさんは思う所があると思われる親父さんと同じとこはないですか?」
その直後凄まじいエネルギーの奔流が俺の身体にぶち当たる。
身体が震えるゼウスさんの顔が見れない。
どうやら怒らせたらしい。アドバイザーとして足を踏み入れ過ぎてしまったみたいだ。
エネルギーの本流が人の形をしている自分の形が飛ばされてて少しずつ風に飛ばされる砂人形みたく崩れていく。
自分の存在が無くなりそうになる。
・
・
なんて夢だ!
人型が保てなくなく。
視野が保てなくなる。
だが発した自分の言葉に後悔はしない。
ここで何も出来ないが耐える。
確信があった。
「人間如きと神が思うのは傲慢ではなく当然の事」
圧が強くなる
更に俺の形は保てなくなる。
・
・
・
「だが、儂もまた傲慢で怠慢であった」
俺は自分の身体が崩されていき、ついには小さな球体になる。
とても強い圧だ
「そこに踏み込む事を本来ならどんな神でも許しはしない!いくつもの世界が滅びることを意味するからじゃ」
俺は今では圧縮されて人の形を保てず小さい球体になっている息苦しい。
自分の夢なのになんで苦しいんだ
「傲慢それはお主の事だ!神への冒涜!だが‥‥」
・
・
許そう!
ゼウスさんの発した言葉の後一気に世界は軽くなる
球体の俺も人型に戻る。
今気付いたのだが俺は服を着ているのか裸なのかどちらなんだろうか?
酷い目にあったのに違う事に思考が飛んでいた。
「人間よ礼は言わん、だが儂自身、自らを見直す事にしよう」
俺は圧が取れて息を整える。
よく見ると俺はいつものスーツ姿で椅子に座っている。
同じくゼウスさんも対面に座っている。
「礼は言わなくて当然です。本当に申し訳です。差し出がましい事を言いました。許してくれてありがとございます」
「今回はこれで終わりとしよう。儂に偉そうに言ってくれたからな。」
「分かりました。また次回あれば、お待ちしております」
どうやら終わりがそうだ。
俺は賭けに勝った様だ
賭けとは怒らせるかもしれないが内面に突っ込んで話した事だ。
一度俺は若い時に営業の仕事をしていたことがあった。その時取引先の会長の爺さんと話す機会があり若さ故に少し内面に突っ込みをしてしまい怒らせる事があった。だがその後許してくれて、その後色々と良くしてくれた件があった。
つまりこの夢はその経験をもとにしていると考えた。
しかしあんなに怒るとは‥‥怖かった。
ゼウスさんが消えていく。
夢が終わるのを感じる
夢の中なのに夢に落ちていく
不思議な感覚に囚われながら眠りに落ちた。
翌日
俺は良く寝たのに寝たりない感覚で目を覚ました。
う〜ん!
大きく伸びをする
「眠たい!」
長い夢を観たせいか眠った感じがしない
どんな夢だったかと思い返す
確か神様が出てきて
なんかアドバイスした様な
怒られたようなきがするが・・・
どんな神様に
どんな相談されて
どんな事を言っただろうかと
なんか初歩的失敗をした気がする
失敗しただろうし相手も満足させることができなかった。
課題だらけだ。
しかし
不思議と満足感があった
疲れたけだるさが体に残るが頑張った後の充足感が残っていた。
俺なりにだが上手いこといけた気がする。
少し薄くなってきている悩みの髪をかきあげながら
今日は何かツイテルそんな直感があった。
◇◇◇ ◇◇◇
その日仕事休みの俺は近くのスーパーに来ていた。
そして普段は購入しないスーパーの角にある。小さな宝くじ売り場でスクラッチ宝くじを購入した。
今日はついている気がしたからだ。
10枚購入する。
スクラッチを削り同じ図柄がそろうと大当たりである。
残念ながら俺は5等の千円以上あたったことはない。
一つ削る
はずれ
はずれ
はずれ
6等が当たる
200円である。
はずれ
・
・
最後の一枚
俺は気合をいれて、ゆっくり削る
最初は
1等の長い髭の爺さんのマークがでる。
次は
6等の宝箱のマーク
2等のお姫様のマーク
続けて
なんと1等の長い髭の爺さんのマークがでる
1等がリーチである。
俺は少し鼓動が早くなる
ゆっくり次を削る
なんと2等のお姫様のマーク
1.2等のダブルリーチである。
こんなのは俺の人生初めてである。
当たってないが写真を撮る。送る相手はいないが
そして、ゆっくり最後を削る。
・
・
スクラッチを削ると長い髭をした神様の顔が3つ揃った。
それは人生初の5等以上の当たりであった。
なんと一等である!
俺は久しくしてないガッツポーズを無言でする。
俺はキャリアコンサルタントG級資格の資金を少ない貯金から出していた為食事代など色んなとこを節制していた。
だがその日から食事は普段に戻す事ができた。
スクラッチは当たりは大きな額ではないが安井には十分な金額であった。
神様の顔が揃った時不思議と後ろから
ふん、サービスじゃ
と聞こえた気がしたのであった。
こんな俺にもこんな事があるんだと感謝を顔も思い出せない神様に伝えるのであった