無知のヴェール
『今から皆さんには個別ルームにて意見を聞きます。個別空間に移動を行います』
べェーナスちゃんの質問に個別に答えるために1人1人が別の空間に招かれる。
何もない空間に俺は立っている。
慣れたもので、いきなり移されるが動じることがなくなった。
べェーナスちゃんが質問する
『先程の質問の答えを知りたいです。人々を調停するにあたり基準となる。平等や正義、どおすれば納得する答えをしれるでしょうか?』
「難しい質問だね」
『なにか良い案がありませんか?』
俺は思案する。
平等とか正義なんて子供の頃は考えるが大人になると、そんな考えを持ち悩むことが子供だと思うようになり大人になるとは色んな差別や区別、色んな人の主義、主張を認めることが大人になることと思うようになっていた。
だけどべェーナスちゃんの仕事は神の代行者となる超越者の管理者補佐である。
基準を知りたいと言っていた。
最初の基準は親の信念を子が影響を受けるように大事なことだと思う。
迂闊な事は言えない。
しかし作成されて間もないはずなのに自分の役割を果たすために動いている。
勤勉である。
その勤勉さと真面目さ見習いたいものである。
もしかしたら親でおるヘパイストスさんに似て目的に没頭するタイプなのかもしれないが
俺は考える。
ここで俺は前に少し学んだ。っといっても齧った程度の知識で調子に乗って疑問に答えてしまう。
公正な正義とは
平等とは
そんな事を昔の賢い人は何人も考えながら政をしてきただろうし様々な時代の学者が考えてきただろう。
俺はそんな思考の歴史など知りもしないし真面目に考えたこともないのに少し齧って面白かった説をべェーナスちゃんに伝えた。
ロールズの正義論を少し齧った程度の知識を話した。
ロールズの正義論には二つの原理がある。
第一原理
公正な正義とは基本的自由の権利が社会のみんなに平等に分配される。
しかし、それだけでは当然、皆が納得する平等にはならない。権利は平等に分配されても社会的格差が生まれるからだ
第二原理
社会的、経済的格差、不平等は二つの条件を満たす必要とする。
1.貧しい人が最低限の生活ができるように、最低限の権利が守られるように手を差し伸べる事を条件に裕福な人は自分の利益を追求する
2.ある職業や地位につくために平等な機会が用意されている
つまり、貧しき家庭で生まれた。
性別、人種を理由として働けないなどの本人の力でどうにかできない問題、不平等があっても
社会的に恵まれた人がそんな人を救済するシステムがあれば平等とはいかないが近づける。
第一、第二原理が守られた社会であれば 公正な正義
と考えた
特に第二理論が優先とした。
ロールズの面白いところは
平等、正義というところで
自分がどこで生まれた。
社会的立場
財産の有無
を隠された状況で正義について皆んなで議論を説いた
自分の立場が分からなければ
貧しく生まれていれば必要な事はなにか?
差別される立場で生まれた求める事は何か?
などなどの議論の場を作ったのだが
これを
『無知のヴェール』
とした
勿論設定を、忘れて議論するなど
正直、設定であり
無理であるから、それの本当の目的である。
無知、無垢なる存在はあり得ない。
なら、そこから出される結論は
一定の信憑性はあるが
本当の意味の公平性はあるかは疑問にはある。
だが、
『無知のヴェール』
が本当に実現できるなら面白いと思っていた。
更に
俺はそれを
全ての状況を忘れさせてから
性別
年齢
種族
身体的特徴もわからない状況に立たしてから
質問したら、どうなるのだろうかとも
最初のゲームの自分のキャラクターを作成する画面の様なところから、それを質問して世界に放り込んだら面白いと考えていた。
そんな悪ふざけではあるが
神の力で人々に聞いたら面白いだろうと
後半は悪ふざけもあるが
それを
興味半分に伝えたのだ。
そう神器の力と
神々の了解を得た力と
世界創生の力がそこにあると知らないでいた。
『その意見、採用します』
『皆さんにご協力求めます』
世界は
反転
暗転
俺は無垢ではないが無知となる。