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日誌21


何をやっても憎まれない人というのがいる

憎まれながらも愛されるキャラクターというべきだろうか

例えるなら妖怪ものの主人公の少年について回る白いゴーストや違う作品のネズミー男。

水戸の黄門様のウッカリ役やスターウォーズのいつも間が悪い人型ロボットなどがいる。

人によっては許せないと思うキャラクターもいるだろう

だけど作品を盛り上げて彩りを豊かにするのには欠かせないキャラクターとなっている。

共通してるのはトラブルメーカーであり主人公や周りに迷惑をかけるが最終的には主人公に助けてもらいトラブルを脱して上手くいくために見るものに安心感があるから許せるなのだろう。

それが原因でバッドエンドなら誰も愛してくれないだろう。

そんなトラブルメーカーであり憎まれながらも皆から愛される神の一柱がいる。


今回の相談者ヘルメスである 



俺のいつもの会議室3の部屋にて羽がついた帽子と赤いスカーフをまいた神が登場する。

「君が安井かい。噂はよく耳にしてるよ。オレはヘルメスてっいうんだ。ヨロシク」

「本日はよろしくお願いします」


「オレは悩み相談の前に一つ聞いて欲しいんだがいいかい」

ヘルメスさんは椅子に斜めに座ると足を交差して赤いスカーフを右手でいじる。正直態度は横柄で胡散草さが最初にくる。神様に胡散くさいと思うのは失礼だが

「オレは他の兄弟と違い創生の仕事が任せられてないんだ。何故だと思う?」

聞いて欲しいと言っておいて逆に質問されることに答えを考えているとヘルメスさんは机に置いてあるボールペンを使って器用にペンまわしを左手で行いペンが綺麗に何回転かすると宙に浮かんでペンが突然消えていった。その動作に目を奪われる。

「ブーっぶっー!時間切れ。オレが創生の卵を盗んで売ると思われてんだぜ!酷いと思わないかい?」


「え、ええ、それは酷いですね。なにか理由があるのですか?」


「オレが昔よ。こーんな小さな時よ。あんときは天使のように可愛いんだってよオレ。今じゃ欠片もないけどフヒヒ飛。そんなよ小さいときのよ。可愛げある盗み、いや小さい頃する悪さ、つまりオイタっての

わかんでしょヤスイサン。そんな昔のオイタを持ってきてお前は信用できないなんていううんだぜ。ひどいだろ安井」


「はあ。小さいころオイタしたんですね。失礼ですがどんなオイタしたんですか?」


「兄さんからチョイと可哀そうな牛を閉じ込められてる牢から解放したのさ。優しいだろう」

ヘルメスさんは帽子のつばさきを親指で弾いてウィンクする。

「優しさから牛を盗んだんですか?」


「そうさオレは優しさの化身だからさ。だが親父が牛を返せというから仕方ないから食べた牛の腸で楽器をつくりだして兄さんに返してやったのさ。兄さんは楽器の出来に大喜び。自由を得た牛も大喜び、俺もいいことしてハッピーさ」


「牛を食べたのですか?」


「当然だろう。自由の代価さ。一時的であれ自由になれたんだ。どうせそのまま生きてても兄さんに自由の意味も教えてもらえず食べられていた。なら俺っちが食べてそのあと素晴らしい楽器に生まれ変わることが出来たんだ。感謝してるだろうよ。違うかい?」

横になっていた姿勢を改め俺に体を寄せるように近づき話かけるヘルメスさん

「楽器になるのはすごいですね。それでヘルメスさんは創生のお仕事したいのですか?」


「つれないな。安井。俺は神々の伝令をする仕事があるから無理だが。興味はあるさ」


「興味というのは?」


「よ~く考えてみようよ。世界創生だぜ。世界作る時に金を沢山できるんだぜ。なんで皆もってこないんだ?オレならさ、そこで取れた金でこちらで商売してよ自分の世界にその商品を代価に払って商売すんだけどな。真面目すぎるね兄弟はよ。だろ?」

ヘルメスさんとの短いやり取りでだいたい分かった。大雑把な神々ですらヘルメスさんに創生の仕事を任せない理由が、...危険すぎる。色んな意味で悪い神ではないのであろうが掴みどころない為。目を離すとゼウスさんやヘラさんでも制御できないのだろう。

俺も話していてヘルメスさんのペースから逃れられないような気がしてきた。

「真面目ですね。ヘルメスさんは真面目がお嫌いですか?」


「フヒヒ。真面目がお嫌いですかってか、嫌いだよというと思ったかい。残念真面目は大好きさ。俺っちてば商売の神様でもあるからね。商売は真面目が基本てね」

ヘルメスは内心舌を出していた。言葉に嘘はない。だが語らない部分も意図してある。ヘルメスは盗みの神でもあるし商売人は利益さえだせれば嘘をつくし騙された真面目な商人をあざ笑いすることすら推奨していた

「真面目が好きなんですね。良かったです。ところで先ほどのペンまわしにしようしたペンはどこにいったのですか?」

「あああれかい、ほらコレさ。帽子の中さ。別に盗ろうとしたわけじゃない。後で驚かそうとしただけさ。そらペン一つ盗み喜ぶケチな神はいないからな」


「そんな疑ってませんよ。ただそのペンは使い慣れたペンなので私がいまから使うのに必要でして」

俺はペンを受け取ると右手でペンまわしをする。三回ぐらいなら回せるのだがそれ以降は上手く回せない

「下手だね安井は手本を見してやるよ」

ヘルメスさんは俺からペンを奪うとまた先ほどのように綺麗に回転させて宙に浮かすと消えていった。

「かないませんね。ヘルメスさんには若いころからお上手なのですか?」 


「そんな話はいいや、それより今の人の世界は昔より可愛いこが多いね。可愛い子と知り合えるやり方ないの。それとも紹介してよ」


「すいません脱線してしまい。ですが女性の話で良いんですか?」


「いいの、いいの、むしろそっちが本命みたいな。安井の好みはどんな女性だい。背はどうだ高い方がいいかい?胸はどうだい大きい方が好きかい、俺はデカい胸が好きだな‥‥」

一方的に好みの女性の話しをされ流されてると分かりつつも話に付き合ってしまう。

「じゃあ、なんだい今の現代人は女性を口説く時に直接会わずに携帯を使って知り合うのかい?」

今の現代人はどうやって女性と知り合うのかと聞かれて出会い系アプリと答えてしまう

「はあ、流石現代のことは現代人の安井に聞くべきだね、いや、ここは安井先生というべきだな。ねえ先生」 

「先生はやめてください」


「そおかい、それは先生はやめとこうかい。でも安井、先生と言われた時は少し嬉しそうだったぜ。なあ先生」

良くみている。俺はお調子者だから、あからさまな褒めでも内心嬉しくなる面はある。ここは反省しよう。時間が経過したが本題に戻ることにしよう。

「ヘルメスさん相談はいいのですか?」


「安井先生気にせんといて、今から話しても中途半端やで長く話したら高い金かかるのは有名やからな。今日は先生の人柄だけ知りにきたんや。それにコチラの女性には興味深々でね。その出会い系アプリってのを詳しく教えてくださいよ先生」


「初日ですし私のことを知ることが目的であれば構いませんが本当に私は詳しくは知りませんよ」


「構わんよ。あとはコチラで調べるから。知ってることだけ話してーや」

こうしてアプリや女性の好みなどを聞かれたりすると

「今日はこれでいいわ。ではまた来ます。それまでにいい土産話期待しといて」

なんの土産話だよとツッコミを待たずに去っていかれた。



◇◇◇◇◇◇



ヘルメスは各地に注進する


ゼウスの宮殿に訪れるとゼウスに安井との模様を伝える。ついでに各地の噂の美人の話を置き土産に去る

その後ゼウスの宮殿から高価な壺が一つ失われる。


ヘラの寝室に現れヘラにゼウスの女性関係近況と安井の仕事状況を告げる。

ヘラの部屋から金の小さな小鳥の置物が失われる。


ヘルメスは冥界にも現れる。

ハーデスの嫁すら知らない趣味部屋に現れる。

ペルセポネの天界の暮らしを伝える。

ハーデスの部屋から英雄をかたどった人形が失われる。


ヘルメスは海の底にも現れる。

ポセイドンの宮殿に現れアテナの動向を伝える。

ポセイドンの宮殿から珊瑚の首飾りが失われる。


ヘルメスは人界の聖域にも現れる。

アテナに天界の流行りを伝える。

アテナの寝室から肌当てが一つ失われる。


ヘルメスが様々な神々へ出入りしているのは暗黙の了解のように見過ごされていた。

ただヘルメスが注進する神のなかには他の神々が知らない神が一柱いた。


始原の神カオスである。


ヘルメスは普段のふてぶてしく掴みどころがない態度を改め自らの部屋にて小さな祭壇を祭りその祭壇の前に恭しく頭を垂れ神の降臨を待つ。

やがてヘルメスは暗き世界に招かれる。

漆黒の空間。

そこに一対の瞳が現れる。

ハーデスの漆黒の部屋とは違い空間そのものが隔絶された光の存在すら許されない空間

普段恐れるものなどないと心の内に考え、憎まれっ子世に憚るを地にいくヘルメスですら心の奥底に理解できない恐怖心が芽生え逆らう事すらおこがましく感じる存在がいる。

親父と気やすく呼ぶ最高神ゼウスや力の化身のようなポセイドンを怒られビビッて逃げ回ることもあったヘルメスですら逃げることも出来ない存在には素直に頭を垂れた。


ヘルメスは今回安井と面談した内容を伝える。

瞳は何も語らない。

ヘルメスも意見など聞きはしない。

ヘルメスは詳細に伝えた後に安井の評を最後に付け加えた


「あれは異物だね。ーー言っておくが悪いものでもない。人としてなんの特色もない。全てが平均。上でも下でもなく得意も不得手も、悩みさえもね。面白味なんて一つもない。それが神々の中心にいる。だから異物だ。本来、人の大賢者が安井の位置にあれば誰も疑問も抱かない。あれは人の世界にいても出世することすら本来できない能力と運しかない。今はその特色の無さが神々にもてはやされてるがいずれは飽きられるものだ。脅威にはならねえとは思わないけどね。判断するのは旦那ですがね」


漆黒の空間に長い沈黙が訪れる

瞳が閉じられると同時にヘルメスは自らの部屋に戻る。


「ハン!暗い神だねぇ。何を言っても答えやしない。本当にあれが始原の神カオスかよ。空間に何もないから何も頂けないじゃないか。この俺様がタダ働きかよ。たまらねえな」

悪態をつくヘルメスであったが額からは冷や汗が流れ。無事自分の部屋に戻ったことに内心ホットしていた。その安心したと思う気持ちが腹が立つのである。

ヘルメスは産まれた時から他の神から盗み欺く、しかしそれだけでは世に通じないことが分かると交換するということを覚えた。

産まれてから人の欲しがるものに機を察知するのが鋭く誰よりも盗みをするため手先も足も早かった。

その為盗んでは許されないこともあることが理解すると今度は相手が欲しがるものを与えて交換することにした。最初の内は手先が器用なのを活かして物を作り貨幣にしたり交換もしたが、そのうちに足が速いことを見込まれると伝令を頼まれることが増えた。

大金を払い言付けを伝える。ここで情報が価値ある商品だと知ったのである。

それからヘルメスは神々の伝令役を率先して受けることにした。

何故なら伝えるだけで大金をもらえその伝える内容をまた欲しがるものに高く売れるからである。

情報をおおく持ちどの神にも属さないことでヘルメスは独自の立ち位置を得ることになり更にふてぶてしい態度をとるようになったが嫌われては悪い情報が今度は回るのを懸念してよりずる賢く立ち回ることを覚えた。

しかしその独自の便利ともいえる立ち位置を利用しようとする神が現れた。

始原の神カオスである。

カオスは突如ヘルメスの心の内に声が響くと漆黒の空間に引き込まれる。そして洗脳しようとした。

普通の神なら逆らうこともできずに知らないうちにカオスにいいように利用される手足となっていただろう。だがヘルメスには強い信念があった。

損をしたくない。得をしたい。等価交換。である。

このままでは損をする。何も得れない。俺はなにも代価をもらえてない!

強い抵抗にカオスは戸惑ったのだろう

暗い漆黒の空間に時間の概念があるかすらわからないがヘルメスが大きな気勢と奇声がこだまする。

ヘルメスが叫ぶ


「取引しよう!俺はあんたが望むことをしよう。俺はあんたに逆らわない。分かるだろう!あんたはすごい力を持ってるあがらえる訳ない。だがあんたは俺の能力が欲しくて呼んだんだろう。なら取引できるだろう!」


ヘルメスが必死に叫ぶと、やや間があってからヘルメスが苦しむ力の奔流が止まる。

そのあとヘルメスは元の場所に戻っていた。

だが頭に何かが埋められたような嫌な感触だけが残り大きな

それからたまに頼まれごとかのように指令が頭に飛んでくる。

指令自体は誰かに流す情報に少し嘘を混ぜるぐらいでありヘルメスにとっては大したことはなかった。

ただ、ただ働きは許せないでいた。

ヘルメスは周りから軽んじるられることはあるが、それなりに権威のある神である。その自分が全く歯が立たないというより次元が違う。まさに人と神ぐらい違う存在に辺りをつけると姿をくらませている、全ての始まりの神である。始原の神カオスしかいないと結論づけた。

始原の神カオスが何故自分を利用しようとするかは分からないがヘルメスは損しなければ構わない。

ヘルメスは考える。始祖カオスの実際の存在は他の神々は知らない。これは俺だけのアドバンテージだと俺ならもっとその情報を活かせる。

ヘルメスはタダでは転ばないと、いずれ始原の神カオスであろうと料金を取り立ててやると。

そんなヘルメスにも懸念は一つあった。

始原の神カオスにしては光がない。伝承では闇と光、男と女など対なるものを産んだ神なら、あんな漆黒しか存在しないものになるだろうかと


ヘルメスの読みは間違いなかった。

瞳の存在は始祖である始原の神カオスであった。唯、産み出された神々では分かりかねない存在である神がいた。混沌の神カオスである。始祖カオスすら混沌の神がうみだした存在であり始祖カオスは世界を生み出して役割を終え消滅していた。それ故混沌の神カオスが始祖カオスと同じと言えば同じであるともいえる存在であった。唯一つ違うのは始祖カオスは生み出して世界を愛していた。混沌の神であるカオスは世界は一つのステージ程度にしか考えてない事であろうか。

なにかの気まぐれなのかはわからないがカオスは動きヘルメスは策謀を巡らす。









補足 神ヘルメス

ゼウスとマイアから産まれた神。とても多能な神様。神々の伝令役として活躍している。商業、旅人、盗み、賭博、化学と色んな一面もつ神様。共通しているのは手先が器用で足が速く弁がたつことから商売人、医学者、音楽家など様々な分野から愛される。とても女好きな一面があるが容姿は普通の為、様々な手で女性を口説き落とす。この話ではゼウスとは親子であるが同じ女好き仲間しかし美人の情報で饒舌な話でゼウスを焚き付けつけといてゼウスがいざ動くとその情報はヘラに売られているとはゼウスは知らないでいた。

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