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日誌17


本日の相談者は二回目となるヘパイストスさんである。

ヘパイストスさんは槌と火を司り鍛冶の神様である。

前回相談に来ていただいた時はヘパイストスさんの相談内容は


"父ゼウスの求めているものが分からない"


正しくは求められてる変化が分からないという相談内容であった。

俺もゼウスさんから相談されたときに同じようなことを相談されたような記憶があるため恐らくヘパイストスさんに求めてる相談は求めている本人であるゼウスさんも分からないから困っているのではないかと思う。仕事を任していながら曖昧で抽象的な言葉の結果を求められるのは酷だと思うし求める方は無責任なことだとおもうがゼウスさん自身がもっと前の責任者から受け継いでいる業務のようなものなので責任の所在が難しいところである。

なんにしろ真面目なヘパイストスさんからすると父ゼウスさんに任されたからには仕事の結果を出したいと考えるだろう。

しかし今思うと創生の神々は真剣に取り組んでいるとはおもうが結果が曖昧で答えがない以上ヘパイストスさんほど思いすぎるのは可哀そうである。

そこで一旦ヘパイストスさんの相談内容は保留にしてヘパイストスさんの管理している世界のことと興味や好きなことを尋ねることにしたのだが...これが、いけなかった。

好きな事をヘパイストスさんは話し出すと文字通りの時間を忘れて話しだし止まらなかったのである。

言葉の濁流に飲まれた俺は気が付くと就業時間は軽く過ぎていた。

結局終了を告げると名残惜しい様で帰られることになったのだが疲れたがヘパイストスさんの世界のことは聞くことが出来たのは幸いであったかと日誌に記入した。


あれから色んな神様の相談を受けることになったがヘパイストスさんの相談内容に、なにか良いアドバイスや助言の参考になればと考えてはいた。しかし何人かの神様と話を聞いて共通に思っていたのが


『大雑把すぎないか』である。


神様からしたら歴史シュミレーターみたいなものだから時代ごとの国や人の歴史が凄い早い時間で流れていて国の文化や文明を事細かく注目していない、ましてや人の一個人なんて見ることは無理だし興味などないだろう。見てられないのは仕方ないとおもうが俺個人おなじ人の立場でいうなら、おざなりすぎないかとなる。

神様は得意分野や好きなこともあるし逆に不得意分野と嫌いなこともある。

創生のお仕事をするなら偏りがでるのは仕方ないし、得意がでる偏り、それは個性ともいえる。

それを活かしつつ言葉が悪いが大雑把な部分を改善していくことが出来れば管理している神様と、その世界の住民たちが幸せとはいわないが良い方向に向かうのではと考え実はその仕組みをヘパイストスさんに提案してみようかと考えていた。


何故ヘパイストスさんかというと、いくつか理由があるのだが、最初に話やすい性格の神様というのもある。ーーが、一番の理由は実はヘパイストスさんの世界にて生産というより鍛造かもしれないが、前の相談のとき話にでてきていた”モノ”に注目していた。


  ”神器”  という存在


ヘパイストスさんは神器は持つ者は位階をあげ時には神と同じ位階に上がることが出来ると言っていた。

話だけならとんでもない代物である。まさに人の時代をかえてしまいかねない器が神器というものであるのだが勿論所持すること自体が難しいという話であった。

なんでも神器は意思を持ち所有者を選ぶという。つまり所持者探しも難しい、いや下手したらその時代の人間には存在しないかもしれない。

ではその扱いの難しいモノにどおして注目しているかというと純粋に可能性である。

人ですら神と同じ位階に上がれる可能性のモノ、器。

俺は現物を見たことがないので勝手に聖杯や聖剣のような形を想像しているが話を聞く限りでは様々な形があるのだとおもう。ただ今回の話は今までヘパイストスさんやヘパイストスさんの弟子、もしくは世界の住民が生産や鍛造した神器に頼る話ではない。

それらの神器を生み出す可能性の世界とヘパイストスさんの自分が槌を打つことが好き。この二つの事柄が提案するもとになっている。



詳しく説明すると

一つ目の理由はヘパイストスさんの管理している世界は生産者を優先している世界で時に神器を生み出す程の可能性があるが偏りがある世界であること。

その偏りが強い個性を活かすことができないかと考える。

二つ目の理由は管理者たるヘパイストスさん自身は管理に興味がなく生産者の質を高めたいと想いがあるが好きな鍛冶に没頭したいという意思がある。

管理者たる創造神が時間を、できれば割きたくないと考えている。

この二つの理由となる。それが提案理由

そして

所持者を見つけることが困難であるが神器の神へ至る可能性すら秘めた器がモノ、であり物質で存在するつまり譲渡などが出来るが神器には意思があり簡単には譲渡も出来ないこと。

管理者たる神は管理をしようにも忙しく世界を事細かくみれないこと。

そして管理者たるものは神でしかできないこと

という三つの悩みに近い要素

その三つの要素を解決できないかというのが提案内容である。


今回ヘパイストスさんが引き続きの相談を申し込みされたことで提案内容は事前に纏めてある。が、これはヘパイストスさんがどう判断されるかは分からない。

ヘパイストスさんが余計なお世話だと思えば無理に提案はするつもりはない。その時はヘパイストスさんの悩みをもう一度じっくり聞いてお互いでじっくりと考えるつもりだが前にあって,お話をした感触であれば少なくとも提案は聞いてくれるだろうと思われる。


そろそろ時間かと時計の針を確認する。

車椅子の音が近づいてくるのが分かった。

俺は先に会議室3のドアをあけるのであった。



◇◇◇◇◇◇




「安井さん、ご無沙汰でございます。ヘパイストスです」

ヘパイストスさんは車椅子から頭を下げて挨拶をしてくれる。神様なのに偉そうにせず今日も腰が低い態度で俺に接してくれる。

「ヘパイストスさん今日は来てくれてありがとうございます。実は二回目の相談の神様はヘパイストスさんが初めてなんです」

俺がこの会社に勤めて二回目の相談利用者は田中君のように普通人間以外では初めてとなっているのである。前回時間延長分の支払いで多く仕事を勤務されていたと聞いているので続けての来訪になると少し嬉しい気持ちである。

それからお互い前回からの仕事模様などの進捗状況などを雑多に話していく。

話が世界の管理のやり方や方法に移っていきタイミングを見計らって俺は提案する。


「管理者を置きませんか?」


「僕の代わりに管理者を置くという意味かい?面白い提案だね。前に僕が相談したときに好きな事に没頭したいことを伝えていたから考えていてくれたのかな。安井さんの気持ちは嬉しいけど無理だよ。世界の管理は最初に神気を流した神しかできない」


「言葉を少し訂正します。正しくはヘパイストスさんの代理の管理者です」


「代わりでも一緒だよ。神にしかできない」


「ええ、神様しか出来ません」

俺の同意に困惑した顔で更にヘパイストスさんが聞いてくる


「知り合いの神などダメだよ。僕に向いてなくても任された仕事である限り譲ることは出来ない」

他の神に任すこことはできないと柔和な態度からも強い決意を言葉に感じるが俺は更に続ける。

「勿論他の神様に頼りません。ヘパイストスさんが任せられた世界ですからね。ですので人間に任せます」


「人間!?それこそ無理だよ。先程伝えたように神しか代行できないと理解してくれてたじゃないか」


「人であっても神の力をもつなら権利はあるのではないですか?」


「神の力を持つ・・人。・・・難しいというより役割によるかもしれない」

ヘパイストスさんがは悩んだ末、取りようによっては前向きな発言をする。


「現地の状況をタイムリーに管理してくれる人視点の神様を代行として置くことで世界の悩みや停滞の理由などが分かるようになるとおもいます。ヘパイストスさんは代行に業務の一部を任せることでスムーズに管理が出来る。それが可能ならどうしますか?」


「それなら一考の価値はあるかな」

俺の問いに興味がそそられてきたのか声に期待が乗ってきているのが分かる。俺は少しためてから答える


「その可能性が神器にあります!」


「うーん。言いたいことは、おおよそ分かったよ。つまり僕の世界の人間に神器を与えて一時的に神の代行者にしようと言うのだね。だけど今までそんな力を持った人は現れなかったし、神器がいう事を聞くかどうかすら怪しいな」

俺の答えに少し落胆の色を隠せないでいるが、可能性はあると考えてか会話に付き合ってくれる。神器の話をしたら落胆するのは予想はしていた。だが話の肝はこれからである。


「代行候補者である人が先程言ったように神の権利を持っていたら力ある人にはなると思います。どうでしょうか?」


「神の権利を持つ人?聞いたことない。だけど、もし、そんな人間なら神器も選びやすいだろうね」


「実は、そんな人間達がいます。」


「人達?複数もおるのかい?安井さんは僕を騙そうとしてないかい?」

ヘパイストスさんが訝しげに問いかける


「騙そうとはしてません。候補者が存在しているから聞いております。そこで次の提案はその神の代理人候補に代理遂行補佐となる神器を打ってみませんか?」


「そんなの前代未聞だ。聞いたことない!」

ヘパイストスさんが両手を左右に広げて驚きを表現する。


「できますか?それともそんな神器は打てませんか?」

少し挑発的な聞き方だが職人魂に聞いてみる


「・・・安井さんは意地悪だね。打てないとは言わないし、僕の世界に住まう人間にも今は無理でも、いつかは打てると信じてる。・・・そうだね。もし仮に僕の業務の一端でも本当にその候補者が受けてくれるなら、その話、興味は湧くかな」


「それでは詳しい話しを聞いてくれませんか?」


「いいよ。だけど話しを聞くだけだよ。まだ試しに打つとか分からないからね」


「ええ構いません」

よし、乗ってくれた。俺は考えているプランを話そうと資料を取り出すと、そこに・・


詳しい話は俺がしよう!


突然の来訪者。ドアが開いて巨漢の男性が入ってくる。


「ヘラクレスさん!」

「私もいるわよ!」


奥さんであるへーぺさんも一緒であった。


「どうしてここに?」


「ハハハハハ!水臭いじゃないか安井!一緒に考えた仲だろう。今回話しをすると思ってヘパイストスを見張っておいて準備しておいたのさ。こんな面白い話しは俺がしたいじゃないか」


「私もアオハル力を感じて付いてきちゃった」


変わらす笑顔が眩しい

「「サプライズ成功」」

旦那と奥さんがハイタッチする



それじゃあ聞いてくれ!


夫婦の勢いについていけず戸惑い、顔を見合わす俺とヘパイストスさん。

ヘラクレスさんに提案の話しを奪われるのであった。



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