日誌12
ドミナント。思い込み
静寂な夜の
無垢なる乙女
とはアルテミスさんがそうあるべきと又はそうあって欲しいという事柄である。
逆に言うと思い込みから外れた世界は
静寂な夜でもなく無垢なる乙女でもない世界である。
そこに理想の乙女の求める答えがあるかもしれない
「アルテミスさん本の乙女達は何を求めていると思いますか?」
「分からないわ」
「でわ、乙女に聞かれた事はありますか?」
「ないわ」
「質問を変えます聞かれる手段はありますか?」
「唄かしら」
感謝の唄だろうか?だが意味がわからないと先ほど言ってたような
「もし乙女達が唄に創造主たるアルテミスさんに願いが込められてたらどんな願いがあると思いますか」
「願い。そうねなにを願うのかしら。 理想とか 乙女のアルカディアなんてね」
「理想を求める願いですか。アルテミスさんはまだ理想の世界ではないと考えてますか?」
「そんな訳ではないわ。私にとって理想。でも乙女は違うかもしれないから願ってると思ってる」
「なるほど。アルテミスさんの理想の世界であり。理想を更に求める乙女ですか。乙女が理想と思ってないかもしれないと考えるのですね。理由を聞いても」
「生きるのをやめて精霊化したり森の獣と意思以上に疎通をまじわせる個体がいる。彼女らは満ち足りてないからそうなるかもしれないと考えるからよ」
「満ち足りてないですか。例えば昼とか男ですか」
「分からないわ」
「そんな満ち足りてないかもしれない彼女達を何かアルテミスさんの側で与えてみるとしたら何を与えますか?」
「分からない」
「今まで何かされた事はありますか?」
「精霊に意思を与えたことがあるわ。本来の精霊化と言うとは分かりやすくいえば魔力に近い存在。そこに力はあるけど意思はない。つまり空気のようなものね。その力の力場に意思を与えることで疑似的生物にしたことがあるけど不思議なもので力場を観察する知的生物がいないと自然消滅する。つまり精霊は先がないの」
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質問続きでアルテミスさんから苛立ちを少し感じる。
踏み込んだことを聞きすぎたのもあるうえで俺が質問してアルテミスさんが答える状況が続いてる。
このままではお互いの信頼関係構築が難しくなる。
ここはアルテミスさん自ら話してもらうのが適切であるのだが。
自ずと話してもらうとなるとアルテミスさんが興味もしくは好きなことになる。
この場合は乙女のことを話題にしていくべきだろうか。
「夜の世界の乙女たちは、普段どういう生活をしている女性なのでしょうか?」
「狩り。狩猟を生業にしてるわ」
「獣を狩られているのですか。少し以外でしたイメージでは森の獣と戯れて、果物でも食べた生活をしているものかと」
「そんな軟な女性達ではないわ。男が思う純潔と乙女というイメージで語らないで頂戴」
「これは失礼いたしました。でわ狩猟の弓の腕はいかほどなのでしょうか?」
「私は狩猟を司る神よ。その私の世界。乙女は優しくも強いわ。そうね軟弱なアポロンの世界の男性にも決して負けないわ」
軟弱な世界といわれて隣に座るアポロンさんの眉が一瞬吊り上がるのが見えた。
「狩猟いがいでも、どんな強さがあるのですか?」
俺はアポロンさんの反応を無視して話を進める。アルテミスさんが話に食いついてくれてみたいだし、もっと話してほしい。
「そうね弓以外にもナイフ捌きもうまいし、馬も乗らせたら人馬一体となる動きをするわ。…あと、そうね泳ぎも人魚のように水中を舞うように泳ぐわ。舞うと言えば踊りも幻想な舞をするわ。そうよ芸術もきっと男になんか負けないわ」
自分の世界の乙女たちのことを話すときは嬉しそうに話す。普段の少しけだるさを感じるような冷たさと違い熱が言葉にこもてっている。よほど乙女たちを気に掛けるてるのだろう。
「アルテミス。残念ながら僕の世界の大会は君が思うほど甘くないよ」
アポロンさんが自分の世界と比べられて対抗してきた。
「あら、私の乙女を知らない癖に反抗するのね」
「それは違う。事実を言ったまでだ。僕は強い女性も好ましく思っている。だから女性には今より強くなってほしいと考えてる。だけど女性が男性に勝てないのは仕方ないんだ。理不尽だけど男が子供を産めないように女性が力で男性に勝つことはできない」
「アポロンあなた弟の癖に生意気いうじゃない。最初に強い女性像をしりたいといったのは誰かしら」
「もちろん僕さ。僕は女性の権利を考えてる。だから女性は女性のみの大会を考えてる最中さ。その時アルテミス姉さんの意見を取り入れようと思って今回譲っているんだ。男の中に女性が混じって勝てる訳ないからね」
「へぇアポロンあなた普段から女性の権利といいながらナチュラルに女を蔑視してるのね。もしかして私も守るべき存在なんて勘違いしてたのかしらぁん?」
隣り合う双子。アルテミスさんが氷のような微笑でアポロンさんを見つめている。
「弟が姉を守るのは当然じゃないか」
胸を張って断言するアポロンさん。
怒っているアルテミスさんに気が付いてないのか平気で火に油を注ぐ言動を笑顔で吐く。
お互い笑顔なのに全く温度が違う。
参った。どうしよう乙女たちの話をしていくつもりが二人とも違う方向に向かつている。
どう決着つけるべきだろうか・・・決着?
そうか!
「なら、決着をつけたらどうですか?」
「分かったわ。決着つけましょう。生意気な弟の頭を射抜いて角を生やしてあげるわ」
「こちらこそ普段姉きどりの君に僕の力を見せつけてあげるわ」
にらみ合う双子。その割に座り方の姿勢は正しいままなのわ。やはり教育がいいのだろうかと関係ないことに気がいく。
「違います。二人とも大会で決着をつけるんです。自慢の男性と乙女でね」
「そんなことどうやって」
「何をいってるの」
◇◇◇◇◇◇
混乱する二人に俺は手短にヘラクレスさんの世界の事を伝える。
思いつきだが多分いけるのではないかという気がしていた。
「「 いける 」」
双子の声は同時であった。
「僕とアルテミスは知っての通り双子だ。神気も本来、神によって個性が出るのだけど調べたら二人は同じ波動をしている。だから当初は二人で同じ世界を管理する案があったぐらいだ。だけどアルテミスが急に私は別でやると言い出してさ。結果、別々でやることになってたんだ」
「嫌よ。男のいる世界なんて管理したくないもの」
「だからアルテミスがわがままをいうから・・」
「それでいけるということは、違う世界どおし行き来できるのですね」
俺はアポロンさん言葉を遮り話をする。
どうやら当初から二人はもめていたようだ。悪いが今は聞いていられない。
「ああ先ほど言ったように同じ神気で創生した世界だ親和性が高いから常にとはいかないが時期を決めて僕とアルテミスが協力すれば人の行き来はできる」
「アポロンの言う通りゲートをつなげることは出来る。むしろ波長が同じなのだから気を付けないと融合・・・いえ、流石にそこまでは、でも…」
少し言いよどむアルテミスさん
「なんだい大会が開催できるとなって現実を知るのが怖くなったのかいアルテミス」
「アポロン調子に乗らないで!姉に勝てる弟など存在しないのよ。あとで、お姉ちゃんゴメンなさい!という練習でもしときなさい」
「え~とりあえず行き来することは分かりました。あとは当事者の住民たちの意見を聞かないといけませんね」
「「そこは大丈夫」」
二人とも自信満々に即答する
「聞かなくて良いんですか?」
「創造神として天啓を与えるわ。不浄なる男という不潔な生物に力の差を見せつけて勝ちなさいと」
「天からの啓示だ。普段から鍛えてる力を見せつける時がきた。未熟な世界に見せつけろと」
ここらは俺からみると神の傲慢のようにみえるのだが・・・。
当事者の住民から見ると逆らえない決定であり神意に従って動ける喜びみたいなものがあるのかもしてない。知らんけど。
アレスさんの世界もアレスさんの滅茶苦茶な言い分にかんじるけども、だけどみんな神意に従って闘技場で戦っていたし。王をそれできめることを続けてる。神がこの場に決めたことは絶対なんだろう。
盛り上がる双子に任せて話を進めていくと二人で合わせてそれなりに話していたので終了を告げることにした。
「アルテミスさん相談者には書類があるので記入をお願いします
アポロンさんは先に退出しといてもらってよろしいでしょうか」
「分かった先にでてるよ」
アポロンさんは先に退出する。
初めてアルテミスさんと2人になる。
本来ならこれで終わる
だが釈然としない
「アルテミスさん嘘をつきましたね」
俺は意を決して話すことにした。
「嘘などついてないわ」
「乙女の唄。本当は唄の意味が分かってるのじゃないんですか?」
「何故そう考えたのかしら」
「最初は感謝の唄とおっしゃてましたが意味は分からないと、次に乙女の気持ちを聞くのに唄という手段があると話してましたね」
「そう言ったかもしれないけど、それがどうしたの」
「天啓を与えれるアルテミスさんと唄で返礼ができる乙女。本当に唄の意味が分からないことあるのでしょうか?」
「唄の意味が分からないことなんて沢山あると思うけど文字がない文化と接するのだから普通だわ。安井が何を言いたいのか分からないわ」
「実は恋の唄じゃないんですか?」
アルテミスさんは答えない
「アルテミスさん。人間の男が嫌いと言いながら恋をしていませんか?もしくはしていた。」
「あり得ないわ」
「理想の乙女の物語。それはあり得ない伴侶の恋を求めて叶わず果てる結末なのでしょうか?」
「子供を授かるのよ。伴侶はいるわ」
「三つの月が揃う時に接吻する事でお腹に授かるでしたっけ、さぞかし美しく幻想的なシーンでしょう。授かった子供は集落で共同で育てる訳ですね。
それは本当に伴侶なのでしょうか
獣と心を通わす乙女は何故でてくるでしょうか
乙女が終末にかかる病とは恋煩いではないのですか?」
「男はなんでそんなに乙女に恋を求めるのかしら。男の存在もないのに有り得ない」
「そう本来ならあり得ない。心の中にある理想の乙女達なら、なのにあり得ないことが何故か毎回起こるから理想から離れる」
「あなたの希望ね。乙女は男の幻想を見ると。付き合いきれないわ」
そう言ってアルテミスさんは書いてもらった書類を俺に手渡す。本来はいらないのだがアルテミスさんと2人で話したくて書いてもらった。
「ありがとうございます。申し訳ないです。変な事を言って」
「構わないわ。神のキャリアコンサルタントというぐらいなのだから想像力が豊かなのね。感心したわ」
「最後に一つ聞いて良いですか?」
「何かしら」
「物語の最後決まりましたか?」
「乙女の秘密は聞かないものよ」
アルテミスさんはそう言って部屋からでていった。
俺は藪蛇か蛇足だと思ったが話さずにはいられなかった。
あのまま行かせたら彼女は次の創生をやめる様に感じたからだ。
◇◇◇◇◇◇
就業時間終わりの時間に差し掛かってきた。
帰り支度してる途中に会議室3のドアをノックされる
どうぞ
「お邪魔するよ」
「アポロンさん。どおしたんですか?」
アポロンさんが金髪の癖毛を右手で掻きながら部屋に入ってくる。
昼の快活なイメージと違い、何か落ち着いた様な日が落ちた今の夕方に似た雰囲気を醸し出している。
「アルテミスの事でちょっとね」
「アルテミスさんがどおかしたんですか?」
俺は最後に余計な事を言ったことを思い出し。慌てて聞き直す。
「いや、何もない。ただ少し考え込んでるみたいだったから」
「そうですか良かったです。本日は少し会話にて踏み込んで話してしまったので心配してました」
俺は胸をなでおろし視線をアポロンさんから一瞬離した。
!!
気がつくととアポロンさんが俺の目の前に立ち、まさにお互いの鼻がつきそうなぐらい近づけてくる。
「なっ、!「安井僕は姉さんが大事だ」
俺は咄嗟で声が出ない。
アポロンさんから表情から感情が読めない。
昼の時の人懐っこいような明るさを持つ笑顔の持ち主と同人物と思えない。
「僕は純粋で純潔で高潔なアルテミス姉さんを世界で一番完璧な女性だと信じてる。完璧とは誰のものにもならないもの。完璧とは至高で孤高であるべきだからだ。だから姉さんは俺以外近づけないとね。だが・・考えもしなかったアルテミスが誰かのモノになるなんて、‥‥あの時まで」
太陽が落ち夜が近づく。アポロンさんも体から満ちていた明るい気がなくなり太陽が今にもおちるような悲壮感がある。
「あの時までとは 」
まじかにいるアポロンさんを見据えて俺は聞き返す
「弓の腕に自信がある姉さんは下界に降りて狩猟を楽しんでいる時同じく狩猟を生業としていた人の男に出会った。その男の弓の腕は姉にも引けを取らない腕で姉はいつしかその男に夢中になりかけてた。
そして僕に相談してきた。その男をどう思うかと」
無言で手を強く握りしめてるアポロンさんを無言で椅子に促すとアポロンさんは素直に椅子に座る
「僕は、「良いんじゃないかと姉さんにも男性に恋する感情があったんだね」と チャカしてその人間の男を認める風の言葉を言ってしまった」
アポロンさんは口を固く結んで必死にこらえている。・・が言葉は続ける
「僕は気に入らなかった。完璧な姉さんの心が揺らぐことに。誰かに心を奪われることに
・・だから
あの時!」
「あの時?」
「姉さんに初めてその人間の男を紹介されたとき僕は言葉で祝いはしたが、心のなかでは沢山の感情が渦巻いていた。祝福なんかできない。いろんな感情で一杯で、頭が黒い筆でかき回されてるかのように、その場で叫び声をおさえるのに必死だった。それからあの男と二人で鹿を狩りに行くのでついてこないかと誘われて気持ちの整理がつかないまま出かけたんだ。ーーそして、あの男と姉さんでどちらが先に鹿を狩れるかと勝負することになり僕は姉さんについていくことに・・あの時がきたんだ」
アポロンさんは、きつく拳を握りしめてさらに強く瞳を閉じて、押し黙る。
俺は迷う。ここから先は聞きたいという好奇心が出てくるよりも聞かないほうがいいという警戒心や恐怖心に近い気持ちの方が強い。
踏み込みすぎだ。
これ以上は領分を超える。
アポロンさんを止めよう
「アポロ・・
アポロンさんに右手で制止される。
「安井聞いてくれ。これは懺悔だ。姉さんに対する。本来こんな話すべきじゃないし、するつもりもなかった。懺悔など意味がないことぐらい分かっているからね。だけど帰りに勝負の打ち合わせで姉さんと話すときに顔をみてわかったよ。双子だからね。安井、君は僕が先に出たときに二人になったときに姉さんの心のうちにふれたね」
俺はどうこたえるべきだろうか
謝るべきか。それとも・・
「別に責めてるわけじゃない。むしろ感謝しているだけだ。僕も姉さんも前に進まないといけない。その時が来たんだと悟っただけだ。ちゃんと話すよ」
アポロンさんは先ほどの辛そうな顔と違い真っすぐ俺をみている。
「分かりました。聞かせてください」
これでは聞く以上ないようだ
「あの時、僕と姉さんが鹿を探しているとき先に僕の方が別の鹿を狙う、あの男を見つけた。あの男は茶色が混じった金髪をしていて遠目からみると鹿の毛と同じ色合いだった。姉さんの位置からは丁度男の髪の毛しか見えない位置だった。僕は今となっては軽い意地悪な気持ちか完璧な姉を奪われてからくる憎しみかは分からない。・・ただ、姉さんに鹿がいるよと言って男の頭を指さした。男は別の鹿を狙っているのか微動だにしなかった。結構距離は離れていたけど姉さんは狩猟の司る女神だ。綺麗な見とれるような弓の構えからーー放たれた矢は寸分たがわず離れた男の・・」
アポロンさんの端麗な顔が歪むのを我慢している。
・
・
・
「アルテミスさんはその後どうされたんですか」
「一言も発せずだ。一切僕を批難するような言葉も発しない。・・・ただあれから姉さんは男をさらによせつけなくなった。そして姉さんは理想の世界を創生するのに躍起になってる。まるで理想の自分。男を失った痛みすらない世界を自分に投影するかのように、見ていられないんだ・・・。」
まさか本当の理想の乙女に囚われてたのはアルテミスさんだけでなくなくアポロンさんもであったとのか
「安井。アルテミス姉さんを救ってくれないか」
俺は・・・
アポロンさんが部屋を出ていく。
俺は黙って出ていく背中をみつめていく
そうかわかった
何故アルテミスさんが次から来ない気がしたのか
それは
いつもみていたじゃないか
鏡で
昔の俺と同じ顔をしてたからだ
全てを手に入れるのを諦めた。
色がない風景に生きてる
諦めてる顔
クソ!
残業代もらうからな!
どおみても仕事外の範疇
当然断るところだ
だがほっとけない過去の自分の顔を
俺は電話をかける。
無理なのも無茶なのも
管轄外なのも分かっている。
俺は普通のおっさん。
雇われのサラリーマン。
仕事でただ神様と話す機会があるだけだ
それを理解したうえで、できる限りやってみよう。
新たな双子の神のオルタナティブストーリー
こちらで紡がせてもらおう。