日誌11
「乙女達の生き方、人生ってことかしら?・・それを本の題名にしたら、どおいう意味かしら」
いきなりの質問に戸惑うアルテミスさん
この質問には意味がある
相談者とカウセリングする手法に
ナラティブアプローチという話し方がある
相談者の身の上を聞いていき
相談者が思い込んでる自分の物語 誰しも ドミナントストーリー が存在する
あえて本のタイトルに仕上げることで誰でもわかるように問題の顕在化をするやり方である。
今回であればアルテミスさんの話を聞いたうえでドミナントストーリーを作成して題名をつけるなら
『何度試しても世界が終わるので困る女神』
センスがないが分かりやすく言えばこうなる。
相談者がこのようにタイトルとして挙げると問題点を双方に理解したことで分かりやすくなる。
そして質問をあげていくのである
この題名なら
何度も試したのか?
世界がなぜ終わるのか?
なぜ女神が困っているのか?
そうすることで問題を聞きやすくしてき内面にアプローチしやすくなる。
本来ならアルテミスさん本人にすべきだが先程述べた様に内面に直接話していくのは現状難しい。
ならすべき対処者は誰か
それは夜の世界に住む乙女達である
だが直接会うわけにはいかないし、あったとしても問題は分からないだろう
何故なら乙女達は困ってるとは思わないからだ
滅んで行く結末である。悲惨な末路であるが対象が個人であるかぎり当人たちが困っているとは思えない
困ってるのはアルテミスさんである
もしくは ”理想の乙女” という存在である
しかしそんな乙女はどこにも存在しない
しかし1人だけ架空の乙女達と会わずに話すことができる人物がいる
それは創造主アルテミスさんである
アルテミスさんは先程話していた
理想の乙女は中にいると
つまりアルテミスさんの心の中の乙女と擬似だが話すことでアルテミスさんと乙女にアプローチする
「知りたいのです。アルテミスさんが大事に想う乙女達のストーリーを。僕が思う以上に何度も難しい試練を超えてきたストーリーだと分かってます。
一言でいえる訳はないと想いますが何かヒントになればと思いまして」
アルテミスさんは何か言おうとしたがそのまま黙考される
「‥‥ 『静寂な夜と無垢なる乙女の唄』 かしら」
「ありがとうございます。静寂な夜と無垢なる乙女の唄 ですか」
「でわ、その本に結末を書くとしたらどう書きますか?」
「結末?分からないわ」
「今は思い浮かばないかもしれませんね。もし思いついたら教えてください」
「分かったわ」
静寂な夜
無垢なる乙女
唄
ここが大事かもしれないから質問していこう
「本の題名に聞きたいのですが静寂な夜は何処からきたのでしょうか?」
「私の話を聞いて安井が夜の世界と評したように、ただ月夜が続く静まりかえった世界なの」
「月夜が続く静まり返った世界。アルテミスさんの世界を表しているのでしょうか、一度いってみたいものです」
「あとは題名の最後にある唄とはどおいうものなんですか?」
「乙女達が子供を授かる時歌うのよ。たまに世界を覗く時、乙女達は歌う」
「どんな歌なのですか?」
「感謝の歌、・・おそらくね。実際は分からないわ」
「分からないのですか?」
「独自の旋律なの、ただ歌の意味は分からないけど心に響くの ・・・もういいでしょう」
「はい。ありがとうございます」
唄か子供を授かる時に歌うならとても意味がある唄なのだろう。神が心にうたれるぐらいなら聞いてみたいものであるがここは意味があるのだろうか
では次に無垢なる乙女とありますが何故無垢なる乙女なのですか?」
「その言葉どおり純粋で穢れをしらない乙女だからよ」
「純粋で穢れをしらない乙女ですか定義を教えてもらっていいですか?」
「安井あなたそんなこともしらないの。それとも私になにか言わせたいのかしら?」
アルテミスさんの表情が更に冷たく感じる
「言葉知らずで申し訳ないです。アルテミスさんのいう純粋と穢れの意味を教えてほしいです」
「不浄で汚らわしい。あなたと反対の意味。つまり男性に汚されてない乙女といえばわかるかしら」
さてアルテミスさんの少し棘のある返答で曖昧にされたが、これ以上の踏み込みは心象を悪くしてしまうかもしれないがどうすべきか
「私と反対ですか。では煩悩まみれの私と逆ということですね。ですが煩悩はたくさんあります。差し支えなければ他に・・そうですね私以外で参考になるような方お聞きしていいでしょうか?」
心象が悪くなるかもしれないが強引に聞いていこう。本当なら時間をかけたいところだが、何となくだがアルテミスさんは次はこない気がする。そうならない為にもやれるだけしてみよう
「・・・ぜ、・父 ゼウスよ」
アルテミスさんは言いよどんだ後ゼウスさんの名をあげた。
表情からは分からないが怒りや憎しみのようなものが沸き立っているのが感じる。
俺はアポロンさんに視線を移すとアポロンさんは、やれやれという表情をしている
「父ゼウスさんとなにかあったのですか?」
怒りのオーラを発して話づらい雰囲気のアルテミスさんに踏み込んでいく。
「何もないわ」
「何もないのに怒っていませんか?」
「ふふ。怒って見えるのかしら。間違ってないわ。何もないから、正しくは何もしなかったからかしら」
「何もなかったからゼウスさんに怒りをかんじるのですか?」
「そんなシンプルなことではないわ。ゼウスは母レトを捨てたのよ。女神ヘラより先に付き合っていたのに欲情に負けて母を捨てた。そのあと女神ヘラは私達双子を殺めようと何度も刺客を差し向けたのにゼウスは何もしなかった。だから何もしなかった。私達にね」
アルテミスさんは虚空を睨む。もしかしたら天にいる誰かを睨んでるのかもしれない。
「すまない安井。アルテミスが少し感情的になってしまったみたいだね」
アポロンさんが静まり返った場に話かけてくれた
「アポロンあなたは可愛い弟だけど同じ男だから父ゼウスの肩を持つのよ」
「違う。過去のことだ。怒っても仕方ないじゃないか。それから忌々しいかもしれないが両柱を呼ぶときはゼウス様、ヘラ様だろう姉さん」
「確かに過去のことだわ。だけど私が欲情に流された男も策謀で動く女も嫌いになるのは構わないでしょ」
アポロンさんは沈黙にて肯定する。
少し踏み込んでアルテミスさんを怒らせてしまったが結果的に男を排除した理由と無垢なる乙女に拘る理由が分かった。事実は俺には分からないがアルテミスさんとしては父の不貞と不貞相手の嫉妬により苦労した過去が原因なのかもしれない。
それがアポロンさんがいう ”歪” と言われた世界の始まりであろうか
歪に近い世界の理由は想定せず分かった。では最初の方向性の" 歪" を取り直していく方向性もやりようがあるかもしれないが目的はあくまで ”夜の世界に住まう乙女たち” である。
世界改変は乙女たちの世界を消してしまう可能性がある。
それに今回話すべき相手はアルテミスさんでも”夜の世界に住まう乙女たち”でもない
アルテミスさんのなかにいる ”理想の乙女” である
そうこの ”ナラティブ” 物語は最初からアルテミスさんの中にしか存在しない。
架空の相談者の物語を紡ぐのが目的なのだから
結果は書き手のアルテミスさんに決めてもらわなければいけない。
ドミナントストーリーはこれで分かった。
ではこれからは
アルテミスさんの思い込みのストーリーから離れた
ナラティブを考えていこう