日誌4
今日は社内がなんだか慌ただしく感じる
普段クールな女子社員達が動き回ってる。
その中心で指揮しているのは社員達のリーダー的存在
佐藤さんである。普段居られない事が多いヘラ社長に代わって会社を仕切られてる女性だ。いつも社内にて黒いスーツを隙なく着こなしテキパキ動いている。
カッコイイ女性であり数少ない男性社員からは憧れと畏怖で見られてる。田中君情報だが
佐藤さんは黒い眼鏡を光らせ他の女子社員に指示している。
そんな緊張感があるオフィスに入るのを戸惑っているところで俺は廊下でウロウロしている田中君を見かけて声をかける
「みんな慌ただしいしいね、どおしたんだい?」
「安井さん。社長が来るんですよ。平良社長が久しぶりにこちらにも顔出されるみたいで突然先程連絡があったみたいで他の女子社員達が今お迎えの準備で慌ただしいんです」
「田中君は手伝わなくて良いのかい?」
俺は右往左往している田中君に率直に聞く
「手伝える事なら手伝いますよ!安井さんも分かるでしょ今の雰囲気、殺伐してるというか、怖いんです、女子社員の目が僕を見て 邪魔! って訴えてます」
「ああ、うん、そうだなごめん。今の彼女達には触れない方がいいかな」
「安井さん、何でここの女子社員達はあんなに緊張されてるんですかね。ちょっと異常な気がします。なんか知ってますか」
田中君が怯えている。これはいかん彼に辞められては俺が困る。何とかフォローせねば
「田中君もこのオーナー社長の平良社長が他にも事業をされてるのは知ってるよね?」
「はい、いくつか会社を経営されてて世界中を飛び回っておられるカリスマ社長だと聞いてます」
「俺はここに雇われるにあたり平良社長が手掛ける民間資格の団体で資格を取得したんだ。その縁で雇われたから少し事情を知ってるんだけど、ここの女性社員達全員ってことはないと思うけど何人かは平良社長の他の会社からの出向で来てる人、平良社長のカリスマに憧れて入社した人が多いから他の会社と空気が特殊なんだと思うよ」
「はあ、そおなんですか確かにここに在籍してる派遣の人も特殊な才能の人が多くて取引先が指名を取るのを奪い合ってると聞いたことあります。
それも平良社長の人脈なんですね」
「そう、そうだから田中君も気にしないでいいと思うよ」
「でも僕、その平良社長ってお会いした事一度もないんですよね。こんな平凡な僕が働いても大丈夫なんでしょうかね」
自信なげに話す田中君。やはり女性社員の冷たい目線に弱ってるな。俺も逆の立場なら自信なくすよな。
「大丈夫、大丈夫。田中君みたいな普通の人がいるから会社は回るんだよ」
俺は無責任に田中君の肩を叩いて自分の巣である。会議室3の部屋に逃げることにしようと踵を回すと、姿を見られてたらしく声をかけられる
「安井さん、どうかされましたか?」
この声は女子社員達のリーダー的存在である佐藤女史の声である。できればバレずに逃げたかったが残念である
「いえ、特に用というほどでは先程田中君に前の相談者に頼まれていた車椅子の資料を探すのを手伝ってもらおうかなと、あと田中君の前回の続きの打ち合わせをしようかと」
田中君が一度相談で僕のもとを訪れたのは社員管理している佐藤さんも分かっている。相談内容は守秘義務の為つたえてない。
俺は田中君に視線を移し目で合図する
「は、はい、そうです、え、えっと資料集め安井さんに頼まれました。あと次回以降のスケジュール合わせをしようかと」
俺の急なフリにどもりながらも合わせてくれる田中君、グッドだと心の中で称賛する。田中君も手持ちぶたさなところだし、お互い呼吸があった。男の結束も悪くないもんだ
「田中君、安井さんに用があるのだけど先にお借りしても良いかしら?」
俺は慌てて田中君に視線を送る。ヘラ社長が来る時に秘書役の佐藤さんが俺に用なんてのは厄介ごとである。ヘラ社長には雇われの身挨拶しにいくのは必要だと思うが、とにかくここは他の仕事が忙しいと時間稼ぎせねば頼むぞ田中君
「僕の方は後でいいです。佐藤さんどうぞ」
そう言ってそそくさ逃げる田中君、どこにいくんだよいくとこも、する事もない癖に
あっさり売りやがった。男の結束はあまりにも脆かったが仕方ない役者が違いすぎる
「それで佐藤さん、何か用とはどうしたんですか?」
「本日おみえになられるヘラ様のことです」
佐藤さんの眼鏡が光る。事情を知っている俺との二人なのでヘラ様呼びである。
「ヘラ社長がどうかされたんですか?」
「安井さん。あなたは人間にしては落ち着きすぎてますね。普通神が来られるとなったら誰でも大騒ぎです。ましてやヘラ様はそこらの神ではないのですよ」
佐藤さんは俺を珍獣を見るような目で見ている。言われてみると確かにそうである神様に会うのが慣れてしまって感覚が麻痺しているかもしれない
「まったく、だからこそ安井さんが人で初めての神の相談者になったんですわね」
今度は諦められた気がする
「佐藤さんが思うほど大層な事はしてませんよ」
「当人だけが知らないのですね」
「なんのことですか?」
うん、俺の知らないとこで何かあるのか気になる
そおいや俺の事情を知るであろう女子社員達の目がたまに恐れの入り混じった複雑な感情の表情をする時がある。理由を知りたいが知ったら働き辛くなると怖い。俺がこの歳でヘスティアさんのアイドルファンだとバレてるとか考えると恥ずかしくて今後同じ職場にいれなくなる。この条件の仕事は助かっているのだ辞めるわけにはいかない。
「用件を話します安井、今日ヘラ様は安井さん、にお会いしたいとの事です。時間は大丈夫ですか」
「ヘラ社長がですか、分かりました。いつでも大丈夫です」
ヘラ社長との急な対談意識すると緊張する。正直対談を先延ばししたいところだが、いい仕事を斡旋してくれたお礼を言わねばならないと思っていたところだ。仕事も少し慣れて落ち着いたところだ、お礼を言うのにいいタイミングだろう
「では、またお呼びします。いつでも動けるようにしといてくださいね」
「分かりました」
俺はハッキリと答える
俺がしっかり仕事していることを社長に示さねば
◇◇◇◇
俺は会議室3の部屋にてこの前の相談者ヘパイストスさんの事を纏めていた
前回かなりの長話をされて時間が延長になったので次回の相談までかなり開くと思うが次回に活かす為この前の相談内容を振り返っていく。
ゼウスさんが満足されてないということであるが、どうしたら満足されるのかがヘパイストスさんも分からなければ俺も分からない。ゼウスさんに聞くのが一番だが最初にゼウスさんの愚痴を聞いた限りではゼウスさん自身分からない様だ。
何度も言うが俺はこの仕事は自分からは辞めたいとは考えてない。なら開き直るしかないのである。
今までも無理難題を言われて俺が解決したとは考えてない。
俺は話を聞いて一瞬に考えるのに徹すると神の時間で解決しないものが人間の時間で解決する訳がない。
だけど変化を促す事は出来ると考えてる。
俺はヘパイストスさんの件は違う強みのある神様との連携が手掛かりだと考えているが、それが無理なら得意で好きな分野を更に特化させることも大事かなと考えている。
その為この前ヘパイストスさんが津波の様に流された好きなことの話をメモっていたので纏める作業をしていた。
いずれ何かの役に立つかと考えての作業である。
トン、トン
ドアがノックされる佐藤さんのお呼びだろうか
「どうぞ」
「お邪魔するわね」
そこには飾りのついた斜めに傾いた帽子を被った平良社長と傍らに顔を伏せた佐藤さんが入ってきた
「社長!ヘラ社長何故ここに?」
俺は慌てて佐藤さんに視線を送るが顔を伏せたままで表情が分からない
「あら、お仕事中迷惑だったかしら」
「いえ、そうではなく、こちらから伺おうと考えてましたので」
「今日はあなたに用件があって来たから私が出向くのは当然だわ」
「私はヘラ社長に仕事を頂き感謝しております」
俺は深々とお礼をする。
「いいのよ。安井の仕事にこちらも満足してるわ。本当ならもっとしてあげたいぐらいなのよ」
「そおいってくださり、ありがとうございます。これからも仕事を頑張っていきます。ヘラ社長今日はどのような件でしょうか」
ヘラ社長はそばにいる佐藤さんに目配せをする
佐藤さんは音もなく退出していく。これが本当の目配せなんだなと感心する
「安井お茶を頂けないかしら」
「ペットボトルしかないのでオフィスに行って来ますね」
「ペットボトルでいいわ。オフィスだと皆んな私がいると畏まるでしょう。お互い息抜きしましょうよ」
俺は備え付けの冷蔵庫からペットボトルのお茶をコップに注ぎ込むとヘラ社長の机の席におく。するとヘラ社長はすぐに飲み干されたので、すぐ入れ直す。どおやら本当に喉が乾いてたようだ。
「それで安井、前に相談した件なのだけど、いい案あるかしら?」
「前に相談された件?」
俺は慌てて思い返す。ヘラ社長に相談されたことなど記憶にないのだが必死に振り返って考える
「忘れたのかしらベースボールに関わる仕事をしたいと相談したでしょう」
俺は思い返すベースボール、ヘラ社長?平良さん?
思い出した。あれは俺が資格取得のロープレの時に講師役として、その時初対面の平良さんとの対面の時の相談内容だ。えっ!今頃、ロープレの内容のことを、何故?しかもあの時は正体を隠していたはず。何かのテストなのか、いや、多分、そうだ記憶力か、応用力を見られてるんだな。
社長直々の急なテストを回っているのか
これで社内が緊張していたのが腑に落ちたぞ。ヘラ社長はこうやってたまにテストをして回っているんだな
いいとこ見せねば。
だが何を答えたら正解なんだ。
ベースボールに何故関わりたいんだ?
流石に覚えてないが、これがテストなら聞くのは減点なのだろうか
ベースボールといっても俺は興味がないから有名な大神ショウヘイしか知らない。黙り込むのもいかないし無難なとこから聞いてゆこう
「大神ショウヘイ凄いカッコイイ選手ですよね」
俺は何を聞いているんだ。普通の主婦の会話かよ。頭が回らず無難なことを話そうとして社長相手のテストに今日は天気が良いですね、のレベルで話しかけてしまった。
「そうよね!大神ショウヘイカッコイイわよね!」
ヘラ社長が興奮して顔を近づけてくる。ヨーロッパ貴族のつけてる帽子の先が俺の顔にあたる。
俺は意図せずど真ん中に投げ込んだようだ。
そこからヘラ社長の大神ショウヘイ談義が続いて会話に相槌をうちながら答えに気づくことになる。ヘラ社長は大神ショウヘイに会える仕事をしたいのだと。
観戦だけでは物足りないのだろうか、そこらの事情は夫のゼウスさんもおられるだろうし聞きずらいというか怖くて聞けない。
何で今頃言ってくるのかは謎だがヘラ社長はお金を持っているのであれば手はあるのではないかと
「ヘラ社長ではこのようなやり方はどうでしょうか?」
◇◇◇◇
後日
ヘラ社長は多数のベースボール球場の売店の権利を購入出店していた。
大神ショウヘイが出られる球場にて美人売り子が出没するとベースボールファンの一部にて噂になることになる。
ゼウスさんの浮気が出てくるとヘラさんは大神ショウヘイに会いたくなるようです。急に安井に相談したのは前に相談したという記憶違いです。ゼウスの浮気で頭に来て大神ショウヘイと出会える機会を探しての相談でした