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日誌3


田中君


俺は廊下を歩く男性に声をかける


田中 圭一31歳 男性

派遣会社神の右手 設立にあたり採用された普通の人である。事務職として採用された男性。 俺と同期にあたる貴重な男性枠である。ちなみに社員であるが神様が働いてる事は知らない。

あと社内キャリアコンサルタントととして初めて来てくれた相談者である。

その縁で社内で少し孤立しやすい俺と気安く接してくれる。最初に相談を受けて以降事務的な事を教えてくれるので非常に助かっている


「安井さん。おはよう御座います」


「この前は助かったよ。ありがとう」

この前とは前回の相談者アレスさんのことである。実はローマ時代の歴史研究してるか学者や研究家を調べてもらうのを手伝ってもらったのである。

あとはキャリアコンサルタントとして社内ネットワークと外部ネットワークを構築しているのを手伝ってもらっている


「いえ、構いませんよ。あっ、でも良かったら今度、僕にも彼女の友達紹介してください」


「彼女、独立して当面忙しいみたいで難しいかな」


「安井さん羨ましいな。美人で優秀な年下の彼女がいて。俺も欲しい!」


「いやあ、彼女が優秀だとついていくのも大変だぞ」


「そうですね。分かります。この会社きて僕も思いました、もし彼女が彼氏より優秀すぎると肩身が狭いんだろうと!安井さんも大変なんですね」


「俺は開き直ってるから今更肩身は小さく感じないけどな」

株式会社神の右手の社員比率は女性が多い。それもヘラ社長が連れてきた社員が多いせいか美人で優秀な人ばかり、皆慇懃で優しいのだが冷たく感じるというか女子社員一同独自のネットワークと結束力を感じるため疎外感を感じるとのこと。この会社の特殊性を理解している眷属の方々だろう。

そんな職場に普通の取り柄もない人間の男性が働いてるのである。傍から見たら美人に囲まれる天国にみえるのだが俺なら三日で胃に来る自信がある。

その職場環境で社内キャリアコンサルタントの存在を知れば

社内キャリアコンサルタントにいの一番に飛び込む気持ちもわかるものである。


「安井さんって、意外と器でかいんですね。そんなとこに彼女が惹かれたんでしょうね」


「諦めが肝心なだけさ。田中君も他の女子社員誘ったらどうなんだい」


「そちらも諦めが肝心ですよ。僕は諦めました」


お互い乾いた笑いが自然と出るのであった。


さて今日の相談者の時間である準備をしよう



 ◇◇◇◇



会議室3のドアが遠慮がちにノックされる。


「どうぞ、お入りください」

俺は自ら扉を開けて訪問者を受け入れる。

俺は扉を開けると訪問者は俺の想定の高さに頭がなかった

訪問者は車椅子での来客であった。


「驚かせてすまないね。事前に伝えておくべきだった。今回安井先生にご相談に参りました。ヘパイストスです。人からは火と鎚の神、鍛冶を司る神として扱われてるかな、そんな大層な事はできないけどね。車椅子からで申し訳ないですが。今日はよろしくおねがいします」


「いえ、こちらこそよろしくお願いします。あと先生なんて勘弁してください。安井でお願いします」

ヘパイストスさんは神様である。神様に先生呼びなんかされては恥ずかしいを超えて命の危機を感じる。ただでさえ他の神々が働く職場である。気分を良くして偉そうにすれば人の癖に傲慢だと思われては想像するだけで背筋が凍る


「では気兼ねなく安井さんと呼ばせてもらうね」


「はい、やっさんでもいいぐらいです」

つい先生と呼ばれた反動で調子に乗ってしまう


「安井さんは面白いね。先日は僕の兄アレスが迷惑かけたみたいで申し訳ない」

ヘパイストスさんが頭を下げる。


「ヘパイストスさん謝らないでください。ヘパイストスさんは関係ないですし。アレスさんも現在痛い目にあってますので」

ヘパイストスさんは神様なのに腰が低くなんて優しい神だ。今までの神とも勿論兄アレスさんの勝手さとは大違いだ。


俺は急いで会議室の椅子をのけてヘパイストスさんの車椅子の場所を開ける


「安井さん。ありがとう。私は生まれつき足が悪くてね。普段は鍛冶の神として鍛冶場に座りこんでいるから移動が大変でね。普段は弟子の手を煩わしいているが」

ヘパイストスさんは自分の乗る車椅子を愛おしさそうに触れる


「この車椅子というのは便利だね。こちらに来るときに教えてもらったのでが、うん。実にいい!自分の世界に戻ったら早速制作にかかろうと思うんだ。いいと思わないかい安井さん」


「そうですね。足が悪い方には人の手を借りずに移動できるので大変いい乗り物だと思います」


「そうだよね。安井さん今回の相談の中に車椅子制作に係る資料とかあれば頂いていいかな。勿論お金は別途払います」


「わかりました。調べておきます。あと、そちらは料金はいりません。その分車椅子の作成の助けにしてください。困っている方がそれで助かるなら私もうれしいです。それにアレスさんから、たっぷり残業代金いただいております」


「ではアレス兄さんのお陰だね。ご好意に甘えよう」

俺はヘパイストスさんに笑いかけるとヘパイストスさんも笑い返す。ほんと神様なのに良い人である。



  ◇◇◇◇◇◇



「それでヘパイストスさん本日はどんなご相談でしょうか?」


「僕は鎚を打つのが好き。鎚と火と僕が一つになる。鎚を打っていると、そんな時間が一瞬かもしれないけど永遠に感じる時間がある。そんな瞬間を求めて常に打っている。その時間こそが至高で好き」


「ヘパイストスさんは鎚を打つのが好きなんですね」


「そう鎚を打ってる時が好き。だから僕は鎚を打てる世界さえあればいい」


「鎚を打つ時間さえあれば良いのですね」


「そう、だけど、それだけじゃ父は満足しない」


「父ゼウスさんはヘパイストスさんが鎚を打つだけでは満足されないんですか」


「父は変化を求めてる。鎚を打てば技術もあがる。時に神の領域に至る武器や道具も出来る。それでは納得されない」


「神に至る武器や道具ですか素晴らしいですね。神の領域の道具とは、どんな物なんですか?」

純粋な興味で聞いてみる


「神に至るものは神器と言う。神器は意志を持ち魂が宿る。そして所有者を選ぶ。そして持つ者の位界を上がる。それは人さえも一時的に神の位界に立たせる力がある」


「人ですら神に近づくのですか!凄いですね。それは存在自体が世界を揺るがしてますし。大きな変化に感じるのですが」


「可能性を生み出すと僕も考えてる。だから僕の世界は物を打ち出す世界。でも足りない」


「足りないとは、何が足りないのでしょうか?」


「それが今回の相談、何が足りないか分からない。父が求める可能性を教えて欲しい」


「何かが足りないんですか?ヘパイストスさんは自分の世界に満足されてるんですか?」


「僕は鎚を打てればそれでいい。自分の世界にも鍛治を打つものが増えて神の領域に至る神器を打つ人も過去に出てきた。優秀な神器も世界に現れた、とても満足している。でも世界は変わらない」


「世界は変わらないか鎚を打つ人がいるなら先程のアレスさんとは相性が良さそうですが世界の協力ってできるんですか?」


「僕はアレス兄さんと色々あって嫌いなんだ、だから協力は出来ない。正直安井さんが兄さんに痛い目を見してくれて気持ちが晴れていたりするんだ。ごめんなさい」


「いえ、こちらこそ事情も知らず、思いつきで言って申し訳ないです。気にしないで下さい」


神器か凄い可能性だと思うけど、それだけではダメなのか

昔聞いた話だが世界の確信技術は常にマニア、オタクと言われる人が発明し後に陽キャと言われる層が広めて変わると聞いた事がある。うろ覚えだけど、発想として誰かと提携という考えじたいは悪くないと思うんだが、なら問題は相手と違う世界が提携できるかという根本的問題がある。提携するにしても同じ創生人物知をしらないからなぁ。

少し保留だな。アレスさんさんとヘパイストスさんのように兄弟でも難しい関係もあるみたいでし慎重にいきたいところだ。では着想を変えるしかないか


「ヘパイストスさん少しゼウスさんを満足したいという考えから離れて好きなことのお話を伺ってよろしいでしょうか?」

俺は理解していなかった好きなことに興じるオタク気質な人に好きなことを聞くということはどういうことを意味するのかを・・・

俺が解放された時には既に太陽は沈んでいた。


時間が来て少し不満そうなヘパイストスさんは、また来るよと一言いって去って行かれた。

話を聞いている時間俺が言葉を入れる間は一切なく。

残された課題に頭を痛めるのであった。








補足

鍛治の神ヘパイストス

親切な性格であるが両足が生まれ持って奇形であり醜い外見の神様

後に美の女神と結婚するが兄のアレスに寝取られる可哀想な神

その後罠にかけてアレスと嫁に復讐するエピソードもち

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