筋肉隆々爺さんの世界の始まり語り
俺は顔は良く見えないが筋肉隆々の爺さんに話しかける。何故爺さんかというと長い髭と声から爺さんだと判断した。
「話がはやいのう」
俺の態度の変化に戸惑いを見せる爺さん
夢ならば展開は早くていい
俺はわざとらしくコホンと畏まる
「安井といいます。本日はどんな相談で来られましたか?まだ勉強中で未熟でありますが力になれる手助けしたいと思います」
俺は勉強中であるが胸を張ることにした。
なぁに夢の中ぐらいカッコをつけてみたい。
「ほほお、勧められ頼りなさそうな人間だと思い不安に感じたが思いの外中々に芯がありそうじゃの、これは儂も真面目に取り込むかの」
夢だけあって自分が同じ勉強生の中で比べると経歴や年齢など引け目がある。
認めたくないが頼りない自分に自信がなくダメだと心の中で思っていたので、やはり頼りないと言われると夢だといえ少しショックであった。
気にせず進める事にした。
本当気にしてないよと自分を心の中で唱える。夢できにしていては前に進めない。
「とりあえずお座りください」
俺は促す。手を差し向けたところに何も無かった部屋に椅子と机が出てくる。
夢は便利だな
俺は調子に乗りお茶と茶菓子もイメージしたが出てこない。
イメージが足りないのだろうか、これからは相談の場にそんなイメージを持とう。宿題だな。
爺さんは促されるまま席に座ると少し考える。
展開の速さに戸惑いがあるかもしれない。俺も戸惑っている。
少し考えてから話しかけてくれた
「そうじゃのう、何から話していいのかまずは世界の始まりから話そうかの‥‥」
どうしよう話が終わらない。
自分の夢なのに、話を聞くのが辛い。内容ではなく長いのである。
爺さんの独白は止まらない。話は爺さんの生まれる話以前の話から始まり長くなるが遮れないまま話は続く。
俺はそこから始まる世界の始まり、混沌から始まる世界の話を聞く。
どうして爺さんが生まれる前の話を知っているかは謎だが夢なので気にしないでおこう。だが一向に本題が見えない。爺さんの醸しだつ雰囲気というかオーラみたいなものが口を入れることができない。
話は続く
やっと世界の始まりの話が終わり爺さんの話になった。
爺さんの父が秩序とルールを作り自分が一つの世界を創生したという長い話しを合槌を打ちながら我慢強く聞いた。
本当我慢強く聞いたと思う。
だって体感2時間以上はあったと思う映画対策一本以上の話しを聞いたね
しかも、ほとんどが知らない単語や地名と思わしきもの、名前である。理解できない話をきくのはお経ににているかもしれない。
俺は、なるほどこれが人の話しを聞くということかと考える。
人の話はとりとめないことが多い。そんなとりとめない話をきくのが仕事なんだと強引に納得する。
そうして今習ってる授業内容を思い出していた。
資格の練習だと思い聞き続けた。
だが、我慢して爺さんの長い話を聞いている中少し俺は思考が脱線する。
冷静に夢とはいえ自分がまさか、こんな世界の始まりの内容を長々と思いつくとは・・
思いの外すごい想像力があったんだと驚いた。
しかし恥ずかしい。
恥ずかしさで、むず痒い気持ちもあるが反面嬉しくもあった。年を取りあまり馬鹿げた行動、言動、思考をしなくなっていた。そんな昔の自分がみれば面白くない大人の一員となった自分が、こんな神話的夢をみる余裕があったことに。
だけど話の終わりが見えないので流石に疲れる
夢の中で疲れるんだな
とりあえず話す爺さんに決意して口を入れることにした。
「なるほど分かりました」
何がなるほどで何が分かったのか言った俺も分からないのだが爺さんの話を止める
爺さんも長話したことにきずいたのだろう。気まずそうにしている。
「‥‥でわと‥‥」
そのまま言葉を続けようとしてそこで気づく
俺は爺さんの名前を聞いて無かった。
なんてことだクライアントの名前も聞かず仕事を始めるとはプロ失格である。
勿論プロではないが夢の中ではプロでいたい。
体感だが2時間近く話しを聞いていながら・・・まったく今更であるが
恥ずかしいが、ちゃんと聞こう
しまらないな俺は
「すいません」
俺は申し訳なさそうに尋ねた。
カッコよく堂々きくつもりが卑屈ぽっい姿勢できいてしまう。
・・・情けない
「 ‥‥相談者の方は今更ですがお名前を教えてもらっていいでしょうか」
爺さんも自分が名乗らず話続けたことにきずいたようだ。
気まずそうに頭を少し掻いた。
その爺さんの深く刻まれた眉間の皺が見えた時
俺は相談者の顔を良く見ることができた。