ヘラの季節
フゥ
軽く溜息を吐いてからパソコンの回線を切る
私は軽く肩をならす。
どうもパソコンというのは好きになれない。
「お疲れ様でした。コーヒーをお持ちしました」
ミーティング室のドアが開き声をかけられる
「ありがとう」
私は感情の言葉をかけてコーヒーを一口飲む
あまり飲みなれてない飲み物だが仕事の後に飲むと格別に美味しく感じる
「平良様、講師役ご苦労様でした!」
「こちらこそ突然に無理を言ってごめんなさい」
「そんなオーナーが講師をしてくださり皆も勉強になると今日は張り切って頑張っていました。今後ともお忙しいと思いますがご指導いただけると助かります」
「あら、嘘でも嬉しいわ」
私はニッコリと微笑む。
安井が学んでいるキャリアコンサルタントG級の資格である民間資格を交付している団体がある。
その団体の代表理事兼安井の学んでいる資格講習の仕事をしている株式会社主婦の力のオーナーは臨時指導講師として今回参加したのが平良である。
だが平良は仮の姿であった。
平良は下界に降りた時の役割の一つの顔である
天界にいる時には女神ヘラと呼ばれていた。
ゼウスの元姉にして正妻であった。
私は今回の神相手のキャリアコンサルタントとなる一期生のメンバーの資料を見直す。
今回のメンバーは十六名日本から参加者十三名、アジア二名、アメリカ一名となっていて同時期にWEB講習にて初めていた。参加者は皆日本の民間資格であり神と絡んだ話になるとは考えてはいないが教育の修了課程の結果をみて満足をする。
予定より、いい生徒が揃っている。
一期生ということもあり、期待はそこまでしなかったが粒揃いね。
私は一人の書類に目を止める
本来なら下界にて自ら講師を演じることをする気はなかった。
あくまでオーナーなどの役割のみで直接絡む事はしたくなかったのだが‥‥
この男性、安井
最初は安易な気持ちで夫ゼウスに勧めた人間の男性
言葉は悪いけど、当て馬という言葉がある、その役割になってもらう予定のピエロ役の男。一番期待していなかった人物なのに
何故かしら、私は思考する。
夫を意図的に怒らせたと思われる胆力、
我が姉であるヘスティアまでもが足繁く通っている魅力
そんな能力があるとは到底今回の直接的接触では片鱗さえ感じなかった。
むしろ逆である
最初の感想と資料通りの人物から想定される人物像から脱する事はなかった。
今回私は思いつきのように会社の者に言って安井とのロールプレイを設定して貰った。
そこでは、頼らなく自信ない男性というのを更に強く思うだけであった。
話していて話は上手いとは思うし優しい人柄の様なものは感じる事はできる。
ただ資格の受講者の一員としてみたら好感が持てる人物である。最後に頼りないことを言っていたが、それも考え様によっては悩みを持つものに接する人物は今のうちに悩む事は前向きに考えてもいい。
それは普通の人の範囲でという縛りでと断る
つまり、人物像と実際にやってる事に大きな齟齬を認めると私は警鐘を頭に鳴らす。
本当に見た目だけの普通の人なのかと
それからは定期的に見張りをつけているが、今ある資料以上の事は出てこない。
私はコーヒーのお代わりを頼むと一息つく。
私の今回の募集のサイトには仕掛けがあり、神に縁をつけやすい人間。昔なら巫女や信託を受ける神職に適正のある人物が目に留まるのであるが安井と接する限り染まりやすい体質には感じるが、それ以上ではない。ということは特別な力は持ってないわね。
巻き込まれやすい体質ということかしら
なら私が巻き込んだということかしら
そう考えると納得できる節がある。
ゼウスの時は私のせいと言えるわね。
次は姉ヘスティアね
どういう意図であれゼウスを怒らせたせいで好奇心の塊のヘスティアに動きがバレてヘスティアと絡んだ事になったのは分かるわ。
その後のヘスティアがアイドル活動するのは理解できないけど
だけど、まだ納得できない不可思議な事がいくつかある。
その一つがハーデスの件
ハーデスと絡んだと思われる時間軸からの天界と冥府の絡んだ糸をほぐしたと思われる
あれは私も動いたけど天界での合議の沙汰待ちまで揉めた案件なのに、どうやって分からない。
そしてポセイドンの件
こちらもゼウスは気づいてないが私の情報網からみて安井とは接触している節がある。
安井と接触したと思われる後からポセイドンは身内の世界の引き締めを行っている。
一体どう話したら、あの暴れん坊が言うことを聞くのか教えてほしい。
最後はアテナの件
普段は聖域から出てくる事がないアテナが日本に、きて直接安井と接触した。男性に興味がないと思っていたアテナが、更にヘスティアと同じくアイドル活動を始めるなんて、これには同じ受講者の高嶺も関わっているみたいだけど、全員に言えるのは安井と接触したと思われる後の行動が読めない。
私はそれなりに天界、下界にも聡いつもりでいたつもりだったのに
思い起こすと元々は夫ゼウスの力になりたいと考えゼウスの影となりたいと色んな団体や組織を立ち上げたのだけど、実際はゼウスの浮気を見つける情報網に成り下がっていたのだけど
そんな情報網であるが能力は確かだわ
その結論が安井はシロ
つまり裏はない普通の人
その普通の人
特別な能力はなく、あるとすれば巻き込まれやすい体質ぐらいの人が天界にて有数の力ある神に短期的に会い神の世界を変えつつある。
しかも本人に自覚は無いと思われる。
訳がわからないわ。
お手上げね。
いいわ、いいように考えましょう。
私の当初の目的は大神ショウヘイに会う事
これはある意味安井のお陰で達成したわ。
世界創生の仕事に関わる悩み
子供達の相談室を作る計画も順調
それの試験テストを安井がしてくれてると考えると、これも順調
天界での懸念の一つであるポセイドンとアテナ
も今のところ解決
ハーデスの嫁との問題も双方の歩みよりにより解決に近いてる
つまり全ては私のお陰ね。
なら私にはご褒美が必要ね
若返りの泉
少し早いけど準備しましょう。
そう、そして私はそこで若返る
また、ゼウスを虜にしたあげるわ。
◇◇◇◇◇◇
天界
ヘラが戻ると
ゼウスが駆け寄る
「ヘラ勘違いじゃ別に儂は浮気などしとらん!」
ヘラの足下に縋り付く。
「その様なこと信じません。」
ヘラは縋り付くゼウスを押し除けて歩む
「何度目ですか?
何人子供を作るのですか! 」
「儂はいつだってヘラ一途じゃあ」
謝り続けるゼウス
それを無視して歩くヘラであったが歩みを止めた
「分かりました。あなたがそう言うなら条件があります。今度私のお願い事聞いてください。それで許してあげます」
「そうかヘラよ、勘違いではあるが、なんでも言ってくれるわしはするぞ儂はヘラの頼みを断らんぐらいゾッコンなのは知っておろう」
ヘラは内心どうだかと思う
ただヘラが若返りの泉にて身体を清めた後は、いつもゼウスは浮気を謝りヘラに逆らえないのは事実であった。
今回は一つのお願いじゃ許さないんだからヘラはゼウスの態度をみて心の中で舌をだしていた。
そうね先ずは‥‥
ヘラはベースボール観戦をゼウスと行くことにするわ
それから
それから
フフ何をしてもらおうかしら
ヘラの季節が来ていた