冥府の底に花は咲くのか
さて八方塞がりに近い状況に感じる
ハーデスさんに誰も味方がいないと思える状況だが話を進めよう
何を聞く
何を聞いても地雷しかなさそうだが‥‥
少し怖いが聞いていくことにした
嫁さん本人のことを聞こう
「奥さんのお名前はなんでいうのでしょうか?」
無難なとこから質問した
「妻はペルセポネという」
「ペルセポネさんとはどんな会話をされてるのですか?」
「会話にならん」
でしょうねと内心思うが質問を進める
「ではどんな性格の女性ですか?」
「気が強い」
攫われたところで強い意志を見せるのだから相当なんだろう
「気が強い意外にはどうですか」
「花を愛でるのが好きだな。優しい性格で、とても可憐で美しい」
なるほど話を聞く限りではとても可憐な乙女な方なのだろう
「花を愛でる性格と何故知ってるのですか?」
「花畑で花を摘んでるところを攫ったから」
俺は少し言葉に詰まる
「普段の行動を追っていたのですか?」
「常に見ていてからな」
今なら通報のストーカ行為だが攫ってる時点でどうしようもないので追求はしないが少しペルセポネさんの姿が見えてきた
「ペルセポネさんはお花が好きなんですね」
「花が似合う可憐な乙女だな」
ペルセポネさんは花が好きで気が強いと、この場合は不正を許さない生真面目な性格の方と見るべきか、そんな女性の本心、心を開くにはどうしたらいいのだろうか女性の声として高嶺さんの意見でも聞きたいところだが
「プレゼント、贈り物とかは渡されてますか?」
恋愛経験が少ないので、とりあえず誠意を伝えるのに贈り物という女性が聞けば怒るかもしれないが安直な質問をしてみる
「当然だ、男が嫁をもらうときはどれだけの甲斐性があるかを見せるかが大事だからな」
神の世界も男はせちがないようだ。ただ、その考え今回は裏目に感じるが
「贈り物をされてるんですね、どんなものを贈られてるんですか?」
「先ずは宮殿、それに財宝だ!」
「財力を見せつけたんですね。ペルセポネさんはどんな反応を、されましたか?」
要りません
冷たくあしらわれたとの事
当然そんな事で振り向いてくれる女性もいるだろうがペルセポネさんは聞く限りそおいうタイプには思えない
「それで諦められたんですか」
「我は諦めん、振り向いてもらう為冥界のあらゆる貴重な宝を集め、力を見せつけることにした。
時には暗黒竜を倒し牙とツノを送り
時には冥界の海の底に潜む巨大貝が持つ巨大なブラックパールを送った。
様々な財宝を送るも一顧だにされん
食事には冥界中から集めたご馳走と珍味でもてなした。
しかし一口も口にしてはくれん」
どうやらハーデスさんなりに色々振り向かせる為努力したみたいだ
最初は童帝ルルーシュみたいだと思ったが
実際は昔流行った漫画の世紀末武闘伝説にて出てくる主人公のヒロインを奪い。振り向いてもらう為、各地を力と暴力で征服し富と権力をプレゼントする事で必死にアピールする最初のライバル、強敵と書いて友と呼ぶジンににている。しかし漫画と同じ結末になってもらいたくないものだ
とりあえず努力の方向は間違っているのは分かった。
これで一歩すすんだかな
俺はハーデスさんの顔を見る
黒い仮面で顔を隠していて素顔が分からない
女性にも好みの男性の顔があるはずペルセポネさんのタイプはどうなんだろうか
「ハーデスさんはペルセポネさんと会う時マスクはされているんですか?」
「我の仮面は力の封印のため普段つけている」
「外せないんですか?」
「外せはする、だが先ずは振り向いてからだ」
「では素顔は見せてないんですか?」
「男は力を見せつけるべきだ」
「ハーデスさん、いきなり自分を攫った男性が素顔も見せずに求愛してきて女性は喜ぶでしょうか?」
「我は王だ甲斐性を見せればふり向こう」
「上手くいってませんよね」
沈黙するハーデスさん
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俺は今回は向こうが話すまで待つことにした。
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「‥‥
恥ずかしいのだ」
ハーデスさんにしては小さな声を発する
「ハーデスさんは素顔を晒すのが恥ずかしいのですね。どうしてですか?顔に大きな傷などがあり見せたくないんですか?」
「仮面がないと威厳が保てず人と話せない」
この前ヘスティアさんが心の仮面を被ると言ったが物理的に仮面を被っているのか
「ペルセポネさんを愛されてるんですね?」
「全部を愛してる」
「愛する人には誠実でいたいですか?」
この質問は意地悪だと思うが少し誘導していくとこにした。
「あるべきだ」
ハーデスさんは悩ます答える
ハーデスさんは思った通り根は素直の様だ
「自分の素顔を晒さないのはどう思われます?」
ハーデスさんも質問の意味は分かったのだろう沈黙される。多分葛藤してるのだろう
.
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ハーデスさんはマスクに手を掛け
素顔を晒す
俺の前には実直で素朴そうな青年がいた。
「安井よ誠実とはどうしたら良いか?」
仮面を取ると話し方まで至って普通の青年のようになる
「ハーデスさんの、素顔で本心を語ることだと思います」
「本心とは?」
「愛されてると、おっしゃりましたね、その気持ち伝えましたか?」
「どんなに愛してるかは伝えている」
「大袈裟に強調して愛をうたってはいませんか?」
「そうでなくては伝わらないだろ」
やはり大袈裟にどう愛してるかをペルセポネさんに伝えてたみたいだ、この場合相手からしたら聞く耳を持たないだろう
「素顔で真っ直ぐ、ありのままの気持ちを伝えるのが誠実だと考えます」
俺の意見を言うのはよろしくないと思うが俺なりの誠実の提示の解釈を伝える事にした
。
「分かった安井の言をきこう。だが、それだけで振り向いてくれるだろうか」
「そうですねペルセポネさんを傷つけた分時間はかかるでしょう。その痛みの時間を付き合う必要があります」
多分それだけでは無理だろう。何が足りないかと考える
「ハーデスさん冥府に花はあるんですか?」
「咲いておる、そうか花のプレゼントだな!どんな花が良いとおもう?」
「それは私にはわかりません。誠実にいくならそれに合う花でどうでしょうか」
正直俺には花は分からないしペルセポネさんの好みも分からないと難しいが、しかし素直な今のハーデスさんなら花選びは間違わない様な気がした。
「考えておく」
目の前の青年からは先程と違い落ち着いた雰囲気を感じる。どんな結果になるか分からないが、きっと後悔の残ることにならない様になってほしい。勿論やってることは許せないけど
さて、あまり気は進まないが他に確認すべき事があるだろうと考える
他に奥さんの性格や良さを細かく確認していく。
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「安井よ今回の相談はこれで良い。」
良かったハーデスさんは納得してくれた様だ
「私との相談で何か変われることになれば幸いです」
「我は死を司る冥府の王。死を司るが確定した死を変えることは出来ない。死は人にも神にも絶対だ。だが今の人の世は少しの波のさざなみで死の流れから逃れることができる」
どういう意味だろうかハーデスさんでも死んだ人は生き返らせることはできないけど運命が変わる?医療が進んでるから、なかなか死なないということだろうか
「安井よ、我には出来ないが人は親孝行するものだ、親に会ったら健康を気遣うようにするがいい。これが私なりの報酬だ」
親孝行しろという忠告だろうか、相談を受けて、逆に諭されたが痛いところを疲れた。
「では地上に戻そう、我はこれから頑張ってペルセポネと向き合ってゆく、感謝すら」
ハーデスさんは素顔で優しく微笑んだ。
それは一輪の素朴な花の様な笑顔だった。
◇◇◇◇◇◇
気がつくと俺は地下鉄にいた。
思い出した。
今日は久しぶり実家に顔を出すため地下鉄に乗っていたのだ。
冥府の入り口は地下への入り口?
どうやら地下鉄に乗るのは冥府へ通じてるという意味だろうか
なんにしても親に会うタイミングで親の健康を気をつけろという忠告という意味ではないか、死の神の言葉である意味がないとは思えない。あまりにも出来すぎてる。
まるで最初から狙っていたかの様に
悩みの一つである親孝行は全然できてない。
ならば親孝行できる日まで親には健康で長生きしてもらわねば
後日多少嫌がる親を病院に連れて行くと健康診断でくまなく調べてもらう。
なんと父親から脾臓癌が見つかる。フェーズ2になっており自覚症状がでてきていたら手遅れになっていたらしい。もし見つかってなければ半年程で亡くなっていたと医師に伝えられたときは顔が青くなった。
父親はその後手術で腫瘍を摂取すると手術は問題なく終わり一週間ほどで退院した。
今は前より元気になっていた。
この結果になる事を最初から知っていたのだろうか
何にしても神のみぞ知るである
あとは
ハーデスさんも上手くいくことを祈るばかりである。
ハーデスの普段つけてる仮面にはなんの力もありません、ただ目が赤く光ります