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深夜の月
深夜の窓辺から
海の音が聴こえる
静かな夜の部屋は
電化製品が動いている
レースカーテンの隙間から
光が差して、影は呼ぶ
窓を開ける
すると、世界から
潮風が吹いて
静かな夜の海の水平線から
月が目覚めていく
淡い金色の道、波間に揺れて
消えて、また元通り
月は満ちて、欠けて
また満ちては欠けて
潮を呼びながら
変わらない営みを繰り返し
繰り返す、波音
そうしているうちに
わたしたちは海と同化する
波のゆりかごに揺られて
海にいた記憶を思い出す
奥に眠っていた小鳥が一羽
月に向かって飛んでいく
飛べないわたしに代わって
羽ばたいて