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木漏れ日の影
木漏れ日の影が
葉の形をして
地面に揺れている
小鳥のさえずる木があり
聴こえてくるかすかな気配
初夏の草の上を
蟻が行く
午後の日差しの強さが肌を射る
陽炎の道はアスファルトが輝いて
見あげた先には夏の入道雲
街を歩いていると
花壇には遅咲きの薔薇が薫り
紫陽花は石段の横に
静かに微睡んでいる
遠くで鐘が鳴る
響きは空に消えていく
振り返ると光の輪郭が
誰かの形で笑いかける
言葉を交わさないでも
温かい感情が流れて
手と手をつないで
緑の木々のように
過ぎていく時間がある