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白い塔に西日がさして
白い塔に西日がさして
萩の花には風吹いて
小鳥が一羽、空を見る
遠くの雲は果てしない
セピア色した窓辺の花に
秋雨前線、通過中
風が吹いて、秋が続く日
雨の降らない午後の夢
雨後の夕方、雲の海
曇り空の下には街
渡り鳥の影がゆく
灰色の空を前へ
影絵の世界は動いていく
開いた明日の頁は何色
茜色さす秋草の
名前を知らない花の色
夕から夜に、星ひとつ
小さく輝く導きの星
宵空の道、街明かり
灯ってゆく時間の中
雨あがりの匂いと風に
灯りの家の暮らしを思う
秋の長雨、雨樋の
ひとの気配に声が聞こえて




