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夏風に
夏の湿気を帯びた風が
アスファルトの道を通り過ぎたら
白い大きな雲に向かって
駆けていきたい気分
夏の青い草の匂い
遠くまで続く穂のような
永遠に似た時間に立ち止まると
街に、里山に
幸せの輪郭たちが笑い合って
夏の光に輝いている
自転車に乗って
土手道を歩いて
街の中にも
自宅の隣室にも
ふとした瞬間に温かい気配がして
真夏の光に照らされていれば
声をかけてみる
夏だね、と
振り返るといつもの部屋で
やりかけの夏休みの宿題のように
飲み残しのアイスティーの氷が
カラリと鳴って
開けた窓からは
夕暮れの空が呼んでいたから
ちょっと散歩
涼しくなった




