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新緑から夏に向かう前のこと
晴れた日の午後の、陽射し
街路樹が青く輝く
輪郭は光の世界に溶けて
黄緑が透けて、風景となる
伸ばした手のひらには
透ける血管と何万もの細胞
影は落ちて、葉と重なって
そうなったら、わたしか葉かは
区別がつかない
視覚のフィルターを通して
世界と関わっていくとき
目はわたし自身でありながら
自由にならない何かであり
それは感情も同じこと
陽だまりの噴水を見る
きらめく水の放物線の軌跡は
初夏を呼んでいる声
遠くから聞こえてくる
駆けてくる光の姿
誰かが通り過ぎて
記憶となり、影となる
どこかに残るものがあるとしたら
ただ幸せを願ったということ
道を行く
未知を行く
黄昏時の金色の光が
街並みを照らしていく
昼が長くなったことに気づいたら
夏至まで、あとひと月と少し