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琥珀の向こうに
古い木箱を開けると
小さな琥珀がひとつ
ころんと大切にしまわれて
持ち主さんの想いが
伝わるようでした
そっと、手に取ってみました
透明な琥珀を透かして
見た景色は
林があり、草は広がり
風さえ吹いていく
古い、古い時代の道でした
遠くには街でもあったのでしょうか
目を閉じて、耳を澄ませば
さらさら鳴る青葉の
その向こうにある
広い都のある山野さえ
見えてくる気がして
目を開けば
手のなかに琥珀がひとつ
ころんとありました
箱に入れて
そっとしまって
外に出るために
扉を開けると
夕暮れが待っていて
遠くの空を渡っていく
ところでした




